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生成AIは2.5割、FAXは9.5割が使用…いまだ道半ばの校務DX

 全国の公立小中学校において、生成AIを校務で活用している割合は約2.5割であるのに対し、FAXを使用している割合は9.5割以上にのぼることが、文部科学省が2023年12月27日に公表した調査結果から明らかになった。学校と保護者間や教職員間での紙ベースでのやりとりも9割近く残っており、業務負担軽減に向けた校務DX化が進んでない現状がうかがえる。

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 全国の公立小中学校において、生成AIを校務で活用している割合は約2.5割であるのに対し、FAXを使用している割合は9.5割以上にのぼることが、文部科学省が2023年12月27日に公表した調査結果から明らかになった。学校と保護者間や教職員間での紙ベースでのやりとりも9割近く残っており、業務負担軽減に向けた校務DX化が進んでない現状がうかがえる。

 文部科学省は、次世代の校務支援システム整備とGIGAスクール環境の積極的な活用により、業務負担軽減・コミュニケーションの迅速・活性化が可能になるとした提言を2023年3月に取りまとめた。これを受け「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」を作成。全国の公立小中学校と設置者を対象に、チェックリストに基づく自己点検を実施し、結果と学校向けヒアリングの結果を取りまとめ、速報として今回公表した。自己点検は9月~11月にかけて実施。公立小中学校2万6,364校(回答率90.9%)と設置者1,690団体(回答率93.3%)から回答を得た。

 学校におけるデジタル化について、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」に基づき生成AIを校務で活用しているかとの問いには、76.8%が「まったく活用していない」と回答。ほぼ全教職員が活用しているのはわずか0.3%、一部の教職員(半分以上)が活用しているのは0.9%、一部の教職員(半分未満)が活用しているのは22.0%と、教育現場における生成AIの使用率の低さが明らかとなった。

 一方、業務にFAXを利用している割合は95.9%にのぼり、いまだほとんどの学校で紙ベースでのやりとりが行われている実態がある。FAXや押印などの慣行はクラウド環境を活用した校務DXを大きく阻害する原因の1つとも捉えられており、今後FAXの使用を減らしていくためにはクラウドツールが十全に活用できる環境の整備と、教職員ひとりひとりへのメールアドレスの付与が最低限必要としている。今回の自己点検では78.1%の学校、66.7%の教育委員会が教職員に個人メールアドレスを付与していると回答しているが、実際に使える設定になっていない学校も相当数あるとの指摘もあり、早急な見直しを呼びかけている。

 学校が教職員に紙で提出を求めている書類があるとした学校は95.5%。保護者から学校への提出書類をクラウドサービスで受け付けている割合は、一部(半分以上)受け付けているが8.4%にとどまり、55.4%はまったく受け付けていない、35.7%は一部(半分未満)受け付けているとなり、9割近くの学校で提出物のデジタル化が整備されていなかった。

 クラウドサービスを活用し、小テストにCBTを取り入れているのは34.3%、定期テストにCBTを取り入れているのは8.6%。デジタル化が比較的進んでいるカテゴリでも、学校徴収金の完全デジタル化は36.5%、児童生徒の欠席・遅刻・早退連絡の完全デジタル化は30.8%だった。

 文部科学省では、今回の自己点検結果の報告をもとに教育委員会などに対して通知を発出。3年程度を集中取組期間と位置付け、手軽な改善方法を具体的に示した資料の提供や、オンライン・オンデマンドでの学習機会の提供、全額国費によるアドバイザー派遣などを行い、学校現場に徹底的に寄り添った支援を一層拡充し、それらを活用したGIGA環境・汎用クラウドツールの一層の活用を求めた。

 また、教育委員会から学校への文書送付のデジタル化の徹底や、FAX・押印等の制度・慣行の見直しを要請。特に名簿情報については2024年4月の入学事務手続に向けて、手入力による学校の負担をできる限り軽減するよう求めるともに、FAX・押印の見直しについては相手があることから、2025年度末までの原則廃止に向けて、文部科学省からも関連団体・事業者などに対し慣行の見直しを丁寧に働きかけて行くとしている。

《畑山望》

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