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【相談対応Q&A】壊れたGIGA端末を直してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第148回のテーマは「壊れたGIGA端末を直してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第148回のテーマは「壊れたGIGA端末を直してほしい」。

GIGA端末の破損発生率が高い

 新型コロナウイルスの流行をきっかけとして、一気に1人1台端末(GIGA端末)が実現しました。GIGAスクール構想は新型コロナウイルスの流行以前から取り組まれていた政策でしたが、コロナによる休校により、一気にGIGA端末の配置が進みました。

 そういった中で大きな問題となっているのが「GIGA端末の破損」です。通常、業務用PCの場合、破損の発生率は1%以下だとされています。それが学校のGIGA端末の場合、10台に1台(約10%)ほどの割合で破損が発生している学校もあるような状況だそうです。多くの場合、机などからの落下により、基板や液晶パネルが破損してしまっています。学校の机は、PCの作業を行うことを想定した作りではありません。そういったことも影響を与えています。GIGA端末の破損に関しては、機器の不良などの問題ではなく、子供の扱い方に起因するものが多いのが現状です。

修理費はどこが負担?

 実際に破損した場合は、修理をすることとなります。その際、「保険なし」「保険あり」で対応が違ってきます。「保険なし」の場合、壊れたら実費を払い修理をすることとなります。タブレット/PCの修理の場合、簡単な修理であっても数千円では済まないことも多いです。これまでも十分な予算が確保されてきていない学校では、GIGA端末の修理費用を確保することは難しいことです。そういったこともあり、多くの場合、地方自治体(学校予算ではない自治体の予算)が修理費用を負担することとなっています。各自治体も予算に余裕がある所ばかりではなく、厳しい状況になっている所もあります。

 修理に関しては、使用前の説明の際、破損の状況によっては、修理費用を家庭負担とするということを伝えている学校や自治体もあります。ただ、修理費用を家庭で負担してもらうことはいくつかの難しさがあります。子供が故意に壊した訳ではないケースが多いこと、家庭の負担額が大きくなることなどです。数万円などの修理費用の負担を求めることは学校と保護者の関係を難しくしてしまう可能性もあるのですが、子供に明らかな問題がある場合は保護者に支払いを求めることをしていく必要があるのではないかと私は思います。

 「保険あり」の場合は、少し状況が違ってきます。破損の状態にもよりますが、保険によって修理費用がカバーされることとなります。ただ保険があるからすべてが安心という訳ではありません。GIGA端末の保険は自動車保険などの他の保険と同じような仕組みです。保険適用の数が多いと次回以降の保険料が値上がりするか、保証内容が制限されます。調べた所、現在は1台あたり6,000円程度の保険料となっています。現在のような状況では、次回以降保険料を倍額にしていかなければ、保険として成り立たなくなってしまうそうです。

学校によって破損の状況が異なる

 破損に関する調査によると、学校によって破損の状況が違っていたそうです。扱い方などの指導に丁寧に取り組んだ学校では、破損が少ないです。GIGA端末は定規などと同じような文具のようなものだと考えることができます。しかし、その扱いに関しては、定規やコンパスとは明らかに違います。一定の扱い方のルールのようなものがあります。そういったことにきちんと取り組んでいくことは、これからの学校においては必須のことなのだと思います。

 最近、私が学校に関することにおいてとても気になっていることが「持続可能性」です。教員の働き方などは持続可能な状況ではないと感じています。今回のテーマであるGIGA端末の破損(および修理)についてもきちんと持続可能な形にしていかなければならないと思います。立場によって取り組むことに違いがありますが、学校現場においてすぐにでもでき、効果の高いこととしては、扱い方をしっかりと学ぶということでしょう。GIGA端末を用いた学びは、今後も続いていきます。こういった学びの仕組みが持続可能な形となるようにそれぞれの立場で取り組むことができればと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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