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【NEE2023】学校と教育委員会が連携して先進的な端末活用を実現…北海道のICT教育の現在地

 New Education Expo 2023(NEE2023)サテライト会場の1つである札幌会場で2023年6月2日、北海道オリジナルセミナー「GIGAスクール構想による学びの充実に向けて~道内における1人1台端末の活用状況と今後の取組~」が行われた。

事例 活用例
セミナーに登壇した北海道教育庁 長尾祐輔氏(左)と山寺潤氏(右)
  • セミナーに登壇した北海道教育庁 長尾祐輔氏(左)と山寺潤氏(右)
  • ICT教育推進課のあゆみ
  • 2022年度の全国学力・学習状況調査の質問紙調査結果
  • 参加者によるグループディスカッションのようす
  • 札幌会場のようす

 New Education Expo 2023(NEE2023)サテライト会場の1つである札幌会場で2023年6月2日、北海道オリジナルセミナー「GIGAスクール構想による学びの充実に向けて~道内における1人1台端末の活用状況と今後の取組~」が行われた。

 東京ファッションタウンビルで2023年6月1日から6月3日に行われた教育関係者向けセミナー&展示会「NEW EDUCATION EXPO 2023」は、一部のセミナーが札幌、旭川、仙台、名古屋、金沢、広島、福岡の全国7か所のサテライト会場へ中継された。

 札幌サテライト会場では、北海道オリジナルセミナーを開催。札幌会場のセミナーの模様を旭川会場で映すリアルタイム配信が行われた。セミナーには、札幌と旭川の2会場で合わせて62名が参加。なお、札幌会場には、3日間で延べ360名が来場した。

 北海道オリジナルセミナー「GIGAスクール構想による学びの充実に向けて」では、北海道教育庁 ICT教育推進局 ICT教育推進課 ICT教育指導係係長の長尾祐輔氏と主査の山寺潤氏が登壇し、道内における1人1台端末の活用状況と今後の取組みについて説明した。

セミナーに登壇した北海道教育庁 長尾祐輔氏(左)と山寺潤氏(右)

ICT教育推進課を2020年に設置

山寺氏:2020年4月のICT教育推進課が設置された前後、学校では新型コロナウイルス感染症に伴う臨時休業が行われていたことから、課が設置されてすぐに「リモート学習応急対応マニュアル」を作成しました。その後、8月にはICTを活用した授業の目指す姿と、その実現に向けた具体的方策をまとめた「ICT活用授業指針」を策定するとともに、学校のICT活用に関する情報を発信する「ICT活用ポータルサイト」を開設しました。

 翌年2021年4月には、ICT活用に関する学校等からの相談に対応する「ICT活用サポートデスク」を立ち上げるとともに、オンライン研修プログラムを作成・公開。5月には、学校と連携してICT活用を推進する「ICTを活用した学びのDX事業」を開始しました。また、7月には道内の指導主事や教育委員会担当者、教員等とオンラインで情報交換を行う「ICT情報交換会」の取組みも始めました。さらに全道各地においてICT活用を推進する指導者を育成する「ICT活用指導者養成研修」も開催しました。これらの取組みは現在も続いています。

 さらに、2022年4月にはクラウド上に情報交換グループを立ち上げ学校間の情報共有を図るとともに、2023年度からは国のリーディングDXスクール事業の取組みも進めています。

 こうした取組みの中で当課の職員が心がけてきたことは、学校の取組みに伴走しながら相談対応や情報発信を行うこと学校や教員、教育委員会によるネットワークづくりに努めること、そして校種横断的な取組みを大切にすることです。

ICT教育推進課のあゆみ

ICT活用授業の目指す姿

山寺氏:2020年8月に策定した「ICT活用授業指針」では、ICT活用授業の目指す姿として次の6点を示しています。

1.適切な情報活用能力の育成
2.身近な道具の一つとしてのICT機器
3.学びの質を高めるためのICT活用
4.個別最適化された教育の実践
5.子どもの障がいの状況や特性に応じたICT活用
6.教員の業務負担軽減と子どもに向き合う時間の確保

 これらの目指す姿の実現に向けた、道内の学校における取組みについて紹介します。「情報活用能力の育成に向けた取組み」として、別海町立中春別小学校では、学校全体でタイピングの練習に取り組んでおり、1分間で何文字入力できるかを検定し、評価することで、児童が意欲的にタイピングの練習に取り組めるよう工夫しています。

 また、「教員の業務負担軽減」の取組みとしては、北海道枝幸高等学校では、これまで紙のプリントなどを配布して伝えていたことをクラウドサービスを活用して伝えることで、業務の削減と効率化を図っています。

小学校のICT活用「ほぼ毎日」7割

長尾氏:北海道内のICT活用状況について、2022年度の全国学力・学習状況調査の質問紙調査の結果を見ると、授業で1人1台端末を「ほぼ毎日」活用している学校の割合は、小学校が全国58.2%・北海道69.9%、中学校が全国55.5%・北海道63.7%といずれも全国平均より高くなっています。

 また、Webブラウザによるインターネット検索など、児童生徒が自分で調べる場面でICT機器を「ほぼ毎日」活用している学校の割合は、小学校が全国21.2%・北海道30.8%、中学校が全国22.6%・北海道29.6%。全国と比べて小学校で9.6ポイント、中学校で7.0ポイント上回っています。さらに、児童生徒が自分の考えをまとめて発表・表現する場面や、児童生徒同士がやり取りする場面でのICT機器活用が「ほぼ毎日」と回答した学校の割合も全国と比べて高い傾向にありますが、今後は、協働的な学びにおける一層のICT活用が期待されます。

2022年度の全国学力・学習状況調査の質問紙調査結果

 次に、端末の持ち帰りの状況について、非常時に端末の持ち帰りを準備している小学校の割合は98.4%で、全国平均の95.5%と比べて高くなっています。一方、平常時に「ほぼ毎日」持ち帰りを実施している小学校の割合は16.7%で、全国平均の26.1%と比べて低く、今後の取組みの充実が期待されます。

道立学校の1人1台端末の活用状況

長尾氏:すべての道立学校において、2022年度の入学生から1人1台端末の活用が始まりました。授業ではおもに「インターネットを活用した調べ学習」「課題の配布や提出」「動画の視聴」「スクリーンなどへの拡大提示」「プレゼンテーションによる発表資料の作成」などに活用されています。最近では特に、協働的な学びの場面でクラウドを活用する学校が増えてきています。

北海道における特色あるICT活用の取組み

山寺氏:北海道は大変広域であり、小規模校も多いという特色があることから、遠隔教育の充実が求められています。佐呂間町立佐呂間小学校では、宮崎県の小学校とオンラインでつながり、それぞれの町のよさや修学旅行の思い出など伝え合いました。このように遠隔教育は、距離を超えてさまざまな人々とのつながりを実現し、学習の幅を広げることにつながります。

 また、北海道立教育研究所が行った実践開発事業では、小学校の社会科の学習の一環として、道内の学校がオンラインでつながり、水害への対策や雪害への対策など、各地の自然環境に応じた防災の取組みについて学びあいました。

学校全体の組織的な取組みが重要

長尾氏:「ICTを活用した学びのDX事業」では、学校からの要望に応じて研修支援や情報交換を行うほか、好事例や資料の提供などを行っています。事業の推進に当たり、さまざまな学校を視察する中で、学校全体の組織的な取組みを推進することが重要だと感じています。

 たとえば、「各学級でICTを活用している場面を写真や映像で記録し、教職員間で共有する」「教職員のICT活用について、成功事例だけでなく失敗事例も共有する」「校務でも積極的にICTを活用することで、学校全体のICT活用につながる」といった、学校全体での取組みが効果を上げていると感じます。

参加者によるグループディスカッションのようす

 セミナーの合間には、参加者同士が情報共有できるよう、3~4名でグループディスカッションする時間を設け、「ICTを活用してどのような学びを実現したいと思うか?」「具体的なICT活用の取組事例」「今後、実践してみたいICT活用の取組み」について、活発な意見が交わされた。ICT教育の推進には、それぞれの学校における知見の共有が必要であり、教員同士が学び合うことが重要になるだろう。

《工藤めぐみ》

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