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GIGAスクール先進自治体 鴻巣市のICT教育環境刷新と良質なデジタル教材の必要性

 リシードは、ブリタニカ・ジャパン協賛のもと、2022年11月16日に東京学芸大学教育学部 教授の高橋純氏、前・鴻巣市教育委員会 教育総務課 主任の新井亮裕氏を招き、ウェビナーを開催した。同ウェビナーから、おもに鴻巣市の取組みを中心に概要をみる。

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GIGAスクール先進自治体 鴻巣市のICT教育環境刷新と良質なデジタル教材の必要性
  • GIGAスクール先進自治体 鴻巣市のICT教育環境刷新と良質なデジタル教材の必要性

 リシードは、オンライン百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」を提供するブリタニカ・ジャパン協賛のもと、2022年11月16日に東京学芸大学教育学部 教授の高橋純氏、前・鴻巣市教育委員会 教育総務課 主任の新井亮裕氏を招き、「情報活用能力を育むICT活用と、鴻巣市の教育ICT環境の刷新」と題したウェビナーを開催した。同ウェビナーでは、今なぜ情報活用能力の育成が必要なのか、そして情報活用能力を育てるためのICT活用等についてあらためて論じ、先進事例として鴻巣市の取組みが共有された。また、情報活用能力を育むのに有効なコンテンツであるオンライン百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」が紹介された。同ウェビナーから、おもに鴻巣市の取組みを中心に概要をみる。

情報活用能力が質の高い学習を支える土台に

 高橋氏は「1人1台端末環境における学びを支える情報活用能力」と題して講演を行った。先が見通せず、答えのない時代となった今、教師が生徒に指示して一斉に授業を行い、一斉に端末を活用し、一斉に協働する従来の単線型授業からの脱却を図るべきと指摘。これからの授業として、子供ひとりひとりが自ら学習を進め、他者を参照しつつ自己決定して、選択的に協働して課題を行う、個別的かつ協働的な複線型授業への移行が必要とした。そして、そうした質の高い学習過程を支える土台となるのが情報活用能力であると論じた。情報モラルや基本的な操作をはじめ、課題の設定から情報収集・分析、まとめ、発表までの問題解決の基礎となる情報活用能力を育むことにより、各教科の授業が複線化する足がかりとなり、子供ひとりひとりの問題発見・解決能力や自ら学ぶ力が養われていくと語った。

新時代で必要な力を育むために、鴻巣市がICT環境刷新

 新井氏は、「鴻巣市が実現した教育ICT環境の刷新」と題して、デジタル教材等のICT利活用の先進自治体である埼玉県鴻巣市における、ICT教育環境整備の取組みを紹介した。新井氏はまず社会的背景として、「子供たちが出ていく世界は、将来を見通すことが困難で大人も答えを知らない世界(VUCA World)であり、ICTの技術革新により社会構造や職業が大きく変化する可能性もある。変動する環境に適応できる力を教育によって育むため、教育の在り方を変化させていくことが求められている」と説明。そのためのツールとして有効なのが「教育におけるICT活用である」と述べた。一方で、日本の教育情報化は世界最低レベルであったことから、国はこのような状況に危機感をもち、学校教育の情報化を推進し、GIGAスクール構想により1人1台端末の整備を進めた。

 そうした流れを踏まえ、鴻巣市では子供たちの未来について、新しい時代で活躍するために必要な資質・能力を育成することが必要であり、情報社会を生き抜くためにはICTを身近なツールとして使えることが必要スキルになることから、「ICT機器を文房具のように使える姿」を目指してICT環境を整備。鴻巣市の全小・中学校のICT基盤を刷新し、2021年度(令和3年度)から本格稼働した。

 以前はオンプレミス(自社運用。閉鎖式サーバー構築)、ネットワークの3層分離(校務系・校務外部系・学習系)で非効率的だったシステムを、「先生も子供もPCを文房具のようにいつでもどこでも使用できる」ことを目指して一新。フルクラウド化により3層分離を撤廃し、先生が1台3役の高性能PCをどこからでも使える環境、強固なセキュリティの構築、校務支援システムの刷新等、ICT環境を整えた。

 さらに子供たちの学びの充実のための環境も整備。GIGAスクール構想の標準仕様書スペックを上回る端末に加え、タッチペンや持ち帰り用ケース等の周辺機器を整備し、活用にストレスのないようにICT端末を整備。また、快適なネットワークや電子黒板、ソフトウェア・デジタル教材等を充実させた。ソフトウェアはMicrosoft 365標準ソフトを導入し、汎用性のあるソフトを発達に応じて使いこなせるように準備した。デジタル教材としては、デジタル百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」等を用意した。

先生も子供もICTを文具のように使いこなす

 こうしたICT環境の刷新により、現場の先生からは「1台のPCで校務と教務をできるようになって効率的に業務ができるようになった」「学校内でPCを持ち運ぶ先生が増えた」「どこでもアクセスできてワークライフバランスが向上した」等、好評を得た。授業や校務の質が向上した、子供と向きあう時間が増えた、ICT機器を文房具のように日常のツールとして使用するようになった―といった効果もみられたという。

 また、校務の情報化にも効果がみられ、横のつながりが強化されて簡単に他校との情報交換が可能になった他、Microsoft Teamsで情報共有して会議の時間短縮や質の向上につながった、多くの業務がデジタル化されて負担が軽減した―等の成果が得られた。新井氏は「ICT導入による教育環境の変化を経験し、教職員のマインドも『挑戦的な取組みも失敗を恐れずにやって良い』という考え方に変化しつつある」と語った。

 働き方改革の効果もみられ、勤務時間を除く在校時間を月平均8時間削減できた他、システム刷新についても現場は非常に満足しており、「文書共有の質やスピードが高まり、無駄がなくなった」という。

 さらに、ICT環境の整備は授業や子供たちの学びにも変化をもたらした。授業では先生も子供もパソコンを普段使いできる環境になり、子供の可能性や表現の幅が拡大。膨大な情報を効率的に扱えるようになり、ある小学校ではブリタニカ・スクールエディションをベースに植物図鑑を作ったりする等、授業の幅が広がった。「デジタルとアナログは対立するものではなく、場面によって使い分けや融合が必要」と新井氏は指摘する。

探求的・総合的な学びへ導くデジタル教材

 新井氏は「デジタル教材を導入した効果も著しい」と語る。まず「デジタル化すること自体がメリット」であるとし、たとえばブリタニカ・スクールエディションの画像や解説を画面撮影して、協働作成するスライドや個人のデジタルノートに貼る等、デジタル化によってシームレスに協働的な学びが実現できることに価値があるという。さらに、1人1つの教材使用が可能になり、子供が個々の手元で自分のペースで教材を見られるようになったことや、単位時間あたりで扱える情報量が増えたこと、学習に使える情報や物品の量・鮮度の課題が解決したこと等を効果として示した。

 「情報量の増加により、1時数の中でインプットからアウトプットまで行えるようになり、成果物作成の効率化や情報取得の高速化につながった。また、これまでは先生が多種多様な情報を苦労して集めて提供していたのが、子供の判断でWeb等から取得可能になった。各種記事や統計情報といった膨大な最新情報にアクセスでき、これまで以上に探求的な見方・考え方を働かせて横断的・総合的な学習が可能になった」と新井氏は語る。ただ、一方で子供にどこまでゆだねるのか、ファクトチェックの視点も必要になった、とも述べた。

主体的な学びを支える「ブリタニカ・スクールエディション」

 鴻巣市のICT環境整備の一環として取り入れられ、個別最適かつ協働的な学びに大きな力を発揮しているオンライン百科事典「ブリタニカ・スクールエディション」とは、一体どういうものなのか。

 ブリタニカ・スクールエディションは、百科事典の会社として250年以上の歴史をもつブリタニカが、これまで蓄積した知を活かして小中学生向けに展開しているデジタル百科事典。通常の百科事典の内容に加え、写真・動画・イラスト・サウンド、比較表示できる歴史年表、昆虫・植物等の図鑑、地域ごとのデータ等、膨大かつ豊富なデータ・資料が網羅され、これまで全国7,500校以上の導入実績をもつ。

 同教材のメリットとしては、1.「信頼性の高い安全で確かな情報の拠り所」、2.「著作権の心配なく簡単に資料収集、手間や負担を軽減」、3.「協働学習コンテンツで明日の授業から対話的で深い学びを」、4.「『知りたい』気持ちに寄り添い、知的好奇心を高める」、5.「安価に1人1台の端末に」の5点があげられる。さらに、専用ソフトのインストールの必要がなく、オンライン(ブラウザ)上で閲覧できることや、PCだけでなくタブレット端末でも利用可能で、活用しやすいこと等が示され、「子供が主体的に学びを選択して自立的な学習者になっていく、そんな新しい学びにブリタニカ・スクールエディションが役に立つ」と紹介された。

教職員も意識改革、子供たちのためにチャレンジを

 新井氏は講演のまとめとして、「子供たちの未来のために教育の情報化が必須であることから、鴻巣市は2019年9月に鴻巣市教育情報化推進計画を策定し着手してきた。従来の考えのままのICT環境整備では学校のICT環境のあるべき姿を実現できないことから、児童生徒と教職員の利用のしやすさを考えたICT環境を整備し、環境刷新により学校現場の姿が変わってきた」と取組みを総括。ICT環境刷新の成果として、「学校現場の姿だけでなく、『教職員の意識』も確実に変化してきている」と強調した。整備されたICTを活用して、各教員が失敗を恐れず、新しいことにチャレンジし続ける各校の取組みの背景には「『先生方の前向きさ』と『子供たちのために』という想いがある」という。鴻巣市の今後の展望として、「今後もICT活用を推進し、『新しい時代で活躍するために必要な資質・能力を育成』を目指す」と力強く語り、講演を締めくくった。

 また、講演後の質疑応答では、新井氏は「教育現場には絶対失敗してはいけないというマインドがあるのではないか。今回のコロナ禍では各校が新しいチャレンジを行ったが、管理職が『失敗しても良い』とチャレンジを後押しした学校はうまくいった」「ツールはいったん提供された後、ユーザーが使い方を作っていくもの。新しいものにアレルギーをもたずに、まず1度使ってみてほしい」と語り、学校現場のICT活用についてエールを送った。

新しい学びに飛び込む自立した学習者を育成

 鴻巣市による、徹底した現場主義といえるICT環境整備。現場で使う子供・先生が本当に使いやすい環境を実現したことにより、学校の体制や授業の改善のみならず、教職員の意識にも波及し、新しいことを恐れないマインドを作り出した。先生も子供も好きなことや新しいことに意欲的にチャレンジできる環境こそ、学びがどんどん広がっていき、主体的かつ探求的に学ぶ自立した学習者を育成していくことだろう。そして、その学びの質を支えているのが「ブリタニカ・スクールエディション」のような良質なデジタル教材であることは間違いないといえよう。

情報活用能力を育むICT活用と、鴻巣市の教育ICT環境の刷新(アーカイブ)

登壇者

東京学芸大学教育学部 教授
 高橋純氏
前・鴻巣市教育委員会 教育総務課主任
 新井亮裕氏

ブリタニカ・スクールエディション

 ブリタニカ・ジャパンでは「ブリタニカ・スクールエディション」無料トライアルを実施中。実際のデータベースにアクセスできるトライアルアカウントを提供している。

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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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