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【こんなときどうしてる?】通知表所見のコツ「課題が多い子」(小学校編)

 学級運営や行事準備、知っているとためになるプチアイデアやコツを紹介する本企画。今回は「通知表所見の書き方」をピックアップ。文例を交えながら、「課題が多い子」の所見を書く際のコツを紹介する。

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【こんなときどうしてる?】通知表所見のコツ「課題が多い子」(小学校編)
  • 【こんなときどうしてる?】通知表所見のコツ「課題が多い子」(小学校編)
 学級運営や行事準備、知っているとためになるプチアイデアやコツを紹介する本企画。今回は「通知表所見の書き方」をピックアップ。文例を交えながら、「課題が多い子」の所見を書く際のコツを紹介する。

通知表所見のコツ



 学期末が近付いてくると、「そろそろやらなきゃ」と感じるのが通知表です。特に年度末は、他の事務作業も多く、じっくりと所見に取り組む時間がなかなか取れないという方も多いかもしれません。また、1人の児童に対して何度も所見を書くことになり、いつも似たような所見になってしまうということもあるでしょう。

 そこで、所見を書くにあたって、先生方が悩みやすいと思われるタイプの児童を取り上げます。今回は、「課題が多い子」の所見についてご紹介します。

「課題が多い子」とは?



「課題が多い子」とは、
・基礎的な学習内容がなかなか身に付かない
・学習に向かうこと自体が難しい
・決まりを守ることが難しい(持ち物の準備、時間等)
・言動が粗暴で友達とうまくコミュニケーションをとれていない
というような児童です。

 同じことを何回指導しても身に付かない、話した内容を聞き取れているかわからない、友達とのトラブルを起こしてばかりいる等、課題の多い児童はどうしても先生の目に留まることでしょう。中には、ちょっとした隙に教室からいなくなってしまう、イライラしていると物を投げてしまって危ない等、目を離せない児童もいます。

読み手の気持ちを考えながら記述しよう



 「課題が多い子」について思いつくことと言えば、うまくいかないこと・できないこと等、ネガティブなことが多いかもしれません。しかし、それをそのまま記述した所見を保護者が読んだら、どう感じるでしょうか。

 「うちの子ってこんなにできないのか…」
 「悪いことばかり書かれていて、親はどうしたら良いのだろう」
 「先生はうちの子の良いところには気付てくれていないのかな」

 課題が多い児童には手がかかります。そんな中で見つけた良さや成長、心の動きをとらえて、所見に記述していきましょう。

「課題が多い子」所見のポイント



成長を細やかに記述する



 学校では、生まれ年で学年が区切られていますが、児童の成長は一律ではありません。習得が難しいと感じられる児童は「できない子」ではなく、「まだできるタイミングが来ていない子」ととらえましょう。他の児童と学ぶペースが違っても構いません。その子の成長に目を向けましょう。

<例>

「ひらがなブロックを使って、文字に見慣れるようにしました。当初はイラストをヒントにしてブロックを組み合わせていましたが、自分の名前の文字はイラストなしでも『ぼくの“た”だ!』とわかるようになってきました。」

「グループやペアでの活動を通して友達との関わりに慣れてきて、心を許せる子の前では声を発することができてきました。想像力・表現力共に豊かな〇〇さん。発表以外にも表現の場を作っていきます。」


どんな手立てが有効だったか記述する



 「課題が多い子」には、保護者も困っていることが多いです。どんな手立てが有効だったかを伝えることで、ご家庭での関わりのヒントになります。

<例>

「今学期は、朝の会で1日の予定を確認し、予定を把握できたかチェックするクイズを継続してきました。予定がわかることで、安心して1日を過ごすことができています。また、正しく聞き取る力もついてきました。」

「文字を読むよりも耳で聞いた方が理解しやすい〇〇さん。国語以外の時間でも、文章を音声化するアプリを使うようにしたら、『みんなが話していることがすごくわかるようになった!』と話していました。」


うまくいかなかったことも記述する



 所見は、良い点や成長した点を中心に伝えるのがセオリーですが、うまくいかなかったことも正直に伝えて構いません。課題点やうまくいかなかったことを記述するときには、出来事だけでなく、そこから何を学んだか、今後はどう指導するか等も加えて記述しましょう。

<例>

「休み時間のドッヂボールで、相手ボールを取ってしまって、相手チームの子とけんかになったことがありました。勝ちたい、投げたいという気持ちからの行動でしたが、『自分がやられたらどう?』と聞くと、『それはいやだ。悪いことした』と自分の行動を振り返ることができました。」


今後の指導の方針を記述する



 児童の課題について、まだ明確な成果が出てきていない、指導の途中である場合もあります。そんなときは現状を伝えたうえで、先生はどうとらえているか、今後どのような指導をしていくかを示しましょう。

<例>

「チャイムが鳴っても遊ぼうとしている、教室移動に遅れる等、学校の生活時間についてはまだ意識が弱いところがあります。まずは、チャイム等の音にどんな意味があるかを再度指導し、授業の最初に〇〇くんが楽しめる活動を取り入れ、『間に合って良かった』と思えるような工夫をしていきます。」


 今回は「課題が多い子」の所見についてご紹介しました。このような児童の保護者とは、普段から良い関係を作っておくことが大切です。新たなことができるようになったとき、トラブルやうまくいかないことがあったとき等はこまめに報告し、情報を共有しておきましょう。「お友達に物を投げてけがをさせたなんて、通知表をもらうまで知らなかった!」というようなことがあると、信頼関係が崩れてしまいます。次回は、「登校日数が少ない子」の所見についてご紹介します。

幸島 由起子


塾講師として3年間勤めたのち、東京都公立小学校にて15年間勤務。1,500人以上のお子さん・保護者の方と関わり、成長を見守ってきた。担当した学年のお子さんに合わせてカリキュラムマネジメントをするのが好き。担当していた校務分掌は、学年主任・特別活動主任・学校図書館・特別支援コーディネーター等。現在は、教員採用試験の論作文の指導や添削、子供への指導法に関する研修講師をしながら、今後に向けて心理学や子育て支援について学びを深めている。自身も小学生と保育園児の子育て中。
《幸島 由起子》

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