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教員免許更新制「不満」6割「廃止すべき」も多数…現職教師調査

 教員免許更新制について「廃止すべき、意義を感じない」と感じる現職教師が過半数を超えることが2021年7月5日、文部科学省の調査結果から明らかになった。免許状更新講習の総合的な満足度は、「不満」「やや不満」が6割近くにのぼった。

教育行政 文部科学省
受講する講習を選ぶにあたって重視する点
  • 受講する講習を選ぶにあたって重視する点
  • 希望する受講方法
  • 受講した講習内容の満足度(受講直後の感想)
  • 受講した講習は、最新の知識・技能を修得できる内容であったか
  • 受講した講習が現在の教育現場で役に立っているか
  • 受講にあたっての観点別の負担感
  • 55歳時における免許状更新講習の受講負担
  • 免許状更新講習の総合的な満足度
 教員免許更新制について「廃止すべき、意義を感じない」と感じる現職教師が多数いることが2021年7月5日、文部科学省の調査結果から明らかになった。免許状更新講習の総合的な満足度は、「不満」「やや不満」が6割近くにのぼった。時間的な負担感等が満足度低下の一因として分析されている。

 調査結果は、7月5日開催の中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会教員免許更新制小委員会で公表された。

 調査は、2021年度「免許更新制高度化のための調査研究事業」の一環として、現職教師の教員免許更新講習や現職研修に関する認識等を把握するため、文部科学省がみずほリサーチ&テクノロジーズに委託して実施したもの。4月28日~5月11日、全国の現職教師を対象にインターネットによる抽出調査で実施し、2,108人の回答を得た。回答者の勤務先学校種は、幼稚園3.9%、小学校29.2%、中学校23.6%、高校36.2%、特別支援学校7.1%。学校設置区分は、公立82.3%、国立1.1%、私立16.6%。

 教員免許状更新講習を受講するにあたって重視する点は、「受講会場」「受講時期」「受講内容」の順に高かった。講習を選ぶにあたっては、講義内容よりも、受講しやすい場所で開催されているものを優先的に選択し、続いて都合にあう時期に開催されているかを重視する傾向にあることがうかがえる結果となった。

 希望する受講方法は、「対面とオンライン(オンデマンドを含む)の併用」34.1%がもっとも多く、「すべて対面」33.8%、「すべてオンライン(オンデマンドを含む)」29.7%と続いた。属性別では、「50歳以上55歳未満」を除き、年齢が高い回答者ほど「すべて対面」を希望する傾向にあった。

 受講した講義内容の満足度(受講直後の感想)は、「満足」と「やや満足」の合計が57.9%と過半数を占め、「不満」は8.0%、「やや不満」は8.1%と低かった。「最新の知識・技能を習得できる内容であったか」については52.6%が「そう思う」「ややそう思う」、44.8%が「思わない」「あまりそう思わない」と回答。受講内容が現在の教育現場で「役立っている」「やや役立っている」との回答は33.4%にとどまった。教育現場で役立っていないと感じる理由は、「現実との乖離があり、実践的な内容でないため」が52.3%ともっとも多かった。

 受講にあたっての負担感について、「講習時間」「移動、宿泊等にかかる時間」「受講費用」「業務との兼ね合い」「職場の教員への配慮」「受講予約」の6つの観点で度合いを尋ねた結果では、「講習時間」と「講習費用」の負担感が特に大きかった。「かなり負担に感じた」「やや負担に感じた」と回答した割合は、「講習費用」87.0%、「講習時間」84.7%にのぼった。

 55歳時における免許状更新講習の受講負担が、早期退職のきっかけになるかどうかを尋ねた結果では、「はい(早期退職のきっかけになると思う)」36.8%、「いいえ(早期退職のきっかけとは関係ない)」39.7%と、回答が二分した。

 免許状更新講習の総合的な満足度は、「不満」が39.0%ともっとも高く、「やや不満」19.5%を含めると58.5%と6割近くにのぼった。「満足」「やや満足」の合計は19.1%にとどまった。総合的な満足度と他の設問の相関分析では、「講習そのものの時間数(30時間)の負担感と総合満足度の低さがもっとも相関しており、満足度低下の一因となっている可能性が高い」と指摘。「受講費用に対する負担感」「業務との兼ね合い」についても総合的な満足度で相関が高かった。

 教員免許更新制全般に対する自由意見では、「制度自体を廃止すべき・免許更新制度に意義を感じない」と853人が回答。無回答や「なし」「特になし」等の回答を除いた回答者1,693人の50.4%を占めた。自由意見にはこの他、「受講料の支出(交通費含む)が負担・受講料が高い」19.8%、「多忙の要因・負担増の要因(現場での負担増も含む)」8.3%等があげられた。
《奥山直美》

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