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高校生の学びを支えるWindows PC、工学院大学附属中学校・高等学校の事例から

 工学院大学附属中学校・高等学校の先生方を講師に招き、同高校におけるWindows PCの活用の取組みを紹介した。同セミナーおよび、セミナー終了後に実施した個別インタビューから、先進高校によるWindows PCの活用事例とその成果についてみる。

事例 活用例
高校生の学びを支えるWindows PC、工学院大学附属中学校・高等学校の事例から
  • 高校生の学びを支えるWindows PC、工学院大学附属中学校・高等学校の事例から
  • 数学の朝テストにFormsを活用
  • 国語ではOneNoteでデータを一元管理
  • 英語4技能にICTをフル活用
 GIGAスクール構想により、全国の小・中学校では1人1台学習者用端末および校内通信ネットワーク環境がおおむね整備され、今年度から本格的なICT教育活動が一斉にスタートする。

 これに比べて遅れをとっている高等学校だが、文部科学省は令和2年度第3次補正予算で「GIGAスクール構想の拡充」を進め、高校のPC端末整備支援を推進。同省は3月に全国の教育委員会などに高校のICT環境整備促進の通知を出し、高校においてもICT環境整備が急務であり、1人1台端末環境の実現を一層推進するよう促した。さらに高校では2022年度から「情報I」が必修化され、高校におけるGIGAスクール構想の取組みはこれから一層活発化すると予想されている。

 そうした流れと需要をふまえ、日本マイクロソフトは2021年4月24日、「Japan EduDay:高校でのパソコンの利活用事例を一挙公開~ここまで使えるWindows PC~」と題したオンラインセミナーを行った。工学院大学附属中学校・高等学校の先生方を講師に招き、同高校におけるWindows PCの活用の取組みを紹介した。同セミナーおよび、セミナー終了後に実施した個別インタビューから、先進高校によるWindows PCの活用事例とその成果についてみる。

Surface Goで広がった活動の幅



 工学院大学附属中学校・高等学校は、東京都八王子市にある私立共学校。「挑戦・創造・貢献」を校訓に掲げており、中学生300人、高校生700人の合計1,000人が同校で学んでいる。同校では7年前から1人1台端末の活用を進めており、現在、生徒にはBYOD(※)端末としてマイクロソフト製2 in 1 ノートPCのSurface Goを推奨し、先生方はSurface Proを全員が活用。皆で同じ端末・同じOSを活用することで、教員・生徒間で端末の操作やアプリの使い方などの教え合い、学び合いが生まれているという。

 同校は元々、中学校段階ではiPadを活用していたのだが、高校では生徒のICT活用の幅が広がり、タブレットでは物足りなくなってしまったことを受けて、パソコンに切り替え、Surface Goを採用した。Windows PCの採用の理由としては、Office 365 Educationには、WordやExcel、PowerPointをはじめ、アンケートを実施できるForms、デジタルノートアプリのOneNoteなど充実したアプリが揃い、生徒のさまざまな「やりたい」という意欲を後押しし、形にできるのが良かったという。PCのカメラで写真や動画を撮影したり、部活動の書類を生徒が自ら作成してクラウドストレージのOneDriveで共有したりするなど、Windows PC導入により、生徒の活動はよりいきいきと、自由になり幅が広がった。そうした目覚ましい効果を受けて、同校は今年度から中学校でもSurface Go/Surface Go 2をBYODで推奨している。
※ BYODとは、Bring Your Own Deviceの略で、個人所有デバイスを学校等で活用すること。

高校生活におけるWindows PC活用



 Japan EduDayセミナーでは、同校の数学科の矢野佳名子先生、国語科の後藤隆宏先生、英語科の中川千穂先生が登壇し、高校生活におけるWindows活用事例として、各教科での授業や総合、進路指導などの取組みを紹介した。

SharePointでの情報共有やFormsでの健康管理、小テスト



 矢野先生はICTを活用したホームルームと小テストの取組みを説明。今年度から予定確認について紙をやめて、マイクロソフトのファイル共有・情報共有サービスであるSharePointを導入した。これにより、全校ポータルで学校の年間予定や、委員会など本日の連絡事項を教員・生徒間で共有でき、変更もすぐ反映され伝え漏れがなくなった。紙での管理で発生していたプリントを印刷する手間や、紛失してしまうリスクが省けたほか、バス時刻表など必要なサイトをリンク集に置くことで生徒がすぐアクセスできるようになった。

 また、生徒の体調管理も紙ベースから、アンケート作成ツールFormsに移行。毎朝の検温を生徒がFormsで入力するようになり、その結果は自動的にExcelでダウンロードされる。37.5度以上の体温が入力された場合はTeamsに自動でメッセージが投稿されるよう、RPAツール(※)のPower Automateでシステムを組んだ。これにより、検温チェックが一目でわかり、健康観察用紙の回収・配布・押印・管理の手間が省けたという。さらに、数学の朝テストもFormsで実施。採点もコンピュータが行い、クラス別の平均点など生徒の学習習熟度を数値化できるほか、どこを間違えたかなどの結果をすぐに生徒にフィードバックできて便利だと語った。
※ RPAツールとは、端末上の手作業を自動化するシステムを組むソフト。

数学の朝テストにFormsを活用
数学の朝テストにFormsを活用

OneNoteでの一元管理やFormsでの相互評価



 一方、後藤先生はOneNoteを活用した国語の授業の取組みを紹介。授業で用いるノートやプリント、資料集をすべて1つのOneNoteにClass Notebookとしてまとめているという。このOneNoteは教材を作る・配る・書き込むことや、課題の提出、生徒同士の協働作業などがオンラインででき、文字や写真、動画をすべて共有し、いつでもどこでもチェックできるのがメリットだと語る。

 「各クラス(授業)のノートを1冊だけみんなで管理する感覚でできる」といい、たとえば古文ではOneNote上に課題を出し、用語の活用や意味調べ、現代語訳を個人またはグループで取り組んでいるほか、休校中にオンラインで行った手紙作成の授業では、動画で作り方を説明したうえで、Wordファイルのサンプルを配布し、生徒が提出した下書きを添削するといった作業をすべてOneNote上で行った。討論の授業では、テーマに沿ってネットで調べて、原稿を作成し、二手に分かれて発表し合った。その発表について、生徒同士がFormsで相互評価を行ったという。

国語ではOneNoteでデータを一元管理
国語ではOneNoteでデータを一元管理

英語4技能にICTをフル活用、Formsでの進路希望調査も



 中川先生は高3進路指導や英語授業、海外交流でのWindows活用について紹介。高校3年生の進路指導では、従来行っていた学年集会がコロナ禍で開催できず、ビデオサービスアプリのStreamで動画を一斉配信。これにより各クラスが都合の良い時間に見ることができ、欠席者や他学年の先生が見るのにも役立った。さらに生徒個別の進路希望調査はFormsで行い、個人ごとの模試や検定結果などの記録は、Class Notebookの個人機能を活用した。

 また、英語の授業では、読む・聞く・話す・書くの4技能すべてでFormsやClass Notebook、PowerPoint、Wordなどを活用。特に話す技能の学習では、シンプルに非同期で音声のやり取りができるFlipgridを活用している。英語のプレゼンテーションの練習では、PowerPointでプレゼン資料をまとめ、同アプリについている「Rehearse with Coach」機能を活用して、AIにより修正すべき点の指摘を行い、自習でも改善していけるよう促していると語った。海外交流も、従来のカードのやり取りからオンラインに移っていき、Flipgridにてインドやオーストラリアなど遠い国とも時差を気にせず、音声で交流。海外交流の報告書は生徒がOneNoteにまとめて、共有しているという。

英語4技能にICTをフル活用
英語4技能にICTをフル活用

 他方、放課後の活動紹介として、ICT支援員の柳川和歌子氏によるMinecraftを用いた課外活動も紹介された。

長文作成など高度な勉強を助けるICT



 セミナー終了後の個別インタビューでは、高校ならではのICT活用の良さについて先生方に話を聞いた。中川先生は「英語の教科は中学生では鉛筆で紙に書くことが必要になるが、高校生はより長い文を組み立てて書くことが求められる。その点、Wordで書くと文章の組換えや修正も容易で、文法チェック機能もあるのでミスもすぐわかる。また、高校英語は教材の量も多く、オンラインで共有できるのが助かる。洋書をオンラインで読むのも便利」と指摘した。後藤先生は、「さまざまな連絡が非常に便利。高校生は大人と同じようにコミュニケーションが取れるので、たとえば部活動で書類が必要であることを伝えると、生徒自らすぐに作成・共有してくれるのは高校生ならでは」という。

 また、校務の効率化については「会議の数が減った」「データの共有が楽になった」ことがあげられた。会議については、Teamsによるオンライン会議やチャット会議、文書共有のやり取りなどでオンラインコミュニケーションが活発化し、同じ時間に同じ場所に集まる必要性が減ったという。データについては、これまで紙ベースで管理していた個人情報を紛失するリスクがなくなり、厳重にロックをかけて教員同士でオンライン共有でき、データの共有が楽になったとした。

データから自己変容を行い問題解決へ



 最後に、端末導入による生徒の成長面については、「自己管理能力が高まった」ことがあげられた。自分のパソコンの管理を自分の責任でやるようになり、そこから派生して、自己管理の力が身に付いてきたという。

 さらに、文章や動画、成績などをデータに残していつでも見られるようになったことにより、生徒たちは「自分を見える化」し、「自己を振り返り、省察し、自己変容できるようになった」と中川先生は語る。「たとえば英文をWordで書けば、コンピュータにミスがないかチェックさせて、改善できます。数値や言葉として自分のミスを指摘されることにより、データから自分を変えていく力が高まったように思います。客観的に自分を見つめられるようになり、自分でどうすればよいかと考える。また、パソコンの使い方についてもこんな便利なやり方があるよと、教員に提案をしてきて、じゃあそれを使おうかと改善される。もっと便利にしようとか、もっとこんなやり方があるのではないかといった提案が生徒から出るようになったのは大きい。生徒の発想力や創造性、問題解決能力が養われているように感じます」と述べた。

生徒がICTを用いて主体的に学び、表現する



 今回のセミナーでは工学院大学附属高等学校の取組みが報告され、Windows PCをさまざまな場面で日常使いして、生徒が主体的にいきいきと学び、表現を行っているようすがうかがえた。小・中学校に比べてより高度な学習を行う高校では、生徒自らが考えをまとめ、発信し、表現する機会が多く、そうした生徒の表現を形にするツールとしてパソコンが効果的に用いられている。また、生徒個人が自らのデータに基づいて省察を行い、自己改善につなげることもできる。同校では先生と生徒がICTを軸に助け合い、双方向で学び合うことで、より良い学校生活や授業に向けて協働を行っている。Windows PCは今後さらに、そうした高校の新しい学びを実現するために役立つツールとなっていくだろう。

 セミナーの模様は、下記のボタンから、簡単な登録(日本語可)を行うことで視聴できる。

セミナーを視聴(アーカイブ)
Empowered JAPAN Edu Day2021
《羽田美里》

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