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教師がハイスペックChromebookを使う意味とは? 教材づくりにもオンライン授業にも

 教師が学校現場でハイスペックPCを活用すると、授業や校務の内容はどう変わり、どんな学びが実現するのだろうか。ASUSのハイスペックChromebookをフル活用して理科の授業を実践している岩田智文先生に、その取組みと成果、生徒の成長などについて聞いた。

教材・サービス 授業
岩田智文先生、理科室にて
  • 岩田智文先生、理科室にて
  • ハイスペックなChromebookであれば複数の画面を投影しても快適に
  • オンラインでインタビューに答える岩田智文先生
  • C436FAを片手に持って、授業中にUSIペンも活用
  • 教材作りの際にはおもに液晶サイズの大きいCX5500を使用
  • 授業中の巡回もC436の軽量化された質量であれば負担がない
 GIGAスクール構想が本格スタートして半年が経ち、文部科学省の発表によると2021年7月末現在、端末の利活用を開始した全国の公立小・中学校は9割以上となった。学校現場でいよいよICTが活用され、試行錯誤が行われている。導入されている端末も自治体によってさまざまだが、教師と生徒が同じ端末を活用しているケースも多いようだ。しかし、授業を進める教師と生徒では端末の用途が異なるため、ICTを十分に生かした授業を展開するには教師にハイスペックPCが必要という声も出てきている。特にコロナ禍によるオンライン授業の必要性が増している昨今は、その需要が高まっている。

 教師が学校現場でハイスペックPCを活用すると、授業や校務の内容はどう変わり、どんな学びが実現するのだろうか。愛知県江南市立西部中学校でASUSのハイスペックChromebook、第10世代インテルCore i7プロセッサー搭載の「ASUS Chromebook Flip C436」(以下、C436)、第11世代インテルCore i5プロセッサー搭載の「ASUS Chromebook Flip CX5(CX5500)」(以下、CX5500)をフル活用して理科の授業を実践している岩田智文先生に、その取組みと成果、生徒の成長などについて聞いた。

岩田智文先生
 愛知県江南市立西部中学校 理科主任・情報主任。Microsoft Innovative Educator Fellow(MIE フェロー;2020年9月現在日本で6人のみ)、Google認定教育者レベル 2を取得。ICTを活用した授業を積極的に実践。講演やメディア出演なども多く、ICT教育の普及に努めている。

14インチの液晶が360度回転可能なハイスペックChromebook
「ASUS Chromebook Flip C436」


 第10世代インテルCore i7プロセッサー、メモリ16Gバイト搭載のコンパクト2in1。14インチ画面、重量1.1kg、薄さ13.7mmと超軽量・スタイリッシュ。
ASUS Chromebook Flip C436

15.6インチの大画面が360度回転可能なハイスペックChromebook
「ASUS Chromebook Flip CX5(CX5500)」


 第11世代インテルCore i5プロセッサー、メモリ8Gバイト、インテルIris Xeグラフィックス(CPU内蔵)などを搭載しパワフルなパフォーマンス。15.6インチ画面。Type-A、Type-C、HDMIポートなどインターフェースが充実。
ASUS Chromebook Flip CX5(CX5500)

Chromebookをフル活用する授業を展開



--ICT環境について教えてください。

 わが校では、この4~5月にGIGAスクールの整備が一気に進みました。生徒には4月にCeleron搭載のChromebook端末とGoogleアカウントが配られて、4月からGW前まで集中してPCの使い方を指導しました。理科の授業の最初15分をPC操作の時間にあてることで、自分が受けもつ学年すべてでPCスキルを底上げできたので、他の教科にも生きていると思います。あとは朝学習の時間、プリント学習が早く終わった生徒向けに、「スライドマスターへの道」「スプレッドシートマスターへの道」といった生徒が自分で進んで行える自作教材を整備しました。生徒たちは初めて与えられたマシンの使い方を、モチベーション高く学んでいきました。

 理科の授業については、ICTを使いやすいように理科室の通信環境を整え、実験や観察だけでなく座学もすべて理科室で行っています。前面のスクリーンにメインのプロジェクターの画面を投影させています。これは板書の代わりです。加えてもう1台プロジェクターで、教科書など資料提示を行っています。さらに実物投影機のようにカメラを使い、黒板サイドのスクリーンに画像を映すこともあり、常時2画面、必要に応じて背面スクリーンも活用して3画面という活用の仕方をしています。

 私のChromebookから、1つ目の画面にはタブをキャスト(表示)して、2つ目の画面にはデスクトップをキャストしています。そして、最近は生徒も端末を使い慣れてきたので、課題もスライド(※)で提出してもらったり、授業中にJamboard(※)に意見を書いてもらったり、「実験結果のスプレッドーシート(※)や結果から何がわかるかをGoogle Classroom(※)で提出して」といった授業をしています。
※ スライド、スプレッドシート、Jamboard、Classroom:Googleが提供するChromeブラウザ上で動く無料ソフトで、編集内容がGoogle Drive上に自動保存される。スライドはプレゼンテーション、スプレッドシートは表計算、Jamboardはデジタルホワイドボード、Classroomは管理プラットフォームの機能をもつ。

ハイスペックなChromebookであれば複数の画面を投影しても快適に
 現在(9月中旬)こうしたやり方で、基本的に対面授業を行っていますが、コロナ感染拡大により濃厚接触者など学校に来たくても来られない生徒に学習保障をするため、Chromebookの画面録画を活用して、授業の記録をしています。そうすると、授業中の私の音声も、Chromebookで表示しているものも全部記録されるので、それをGoogle Driveで生徒と共有します。黒板とノートを撮影してオンラインで共有し、補助プリントをポストインするという方法もありますが、それでは100%の学習保障はできないと考えました。最近はPCのカメラアプリで、黒板と私自身の動画も撮影するようにしています。こういった処理はハイスペックPCだからこそできることですね。

オンラインでインタビューに答える岩田智文先生
--ハイスペックPCの良さを感じるのはどういうときですか。

 4月に生徒に端末が配られて、教師もいよいよ使っていく環境になったところで、小型軽量のASUS Chromebook Detachable CM3(CM3000DVA)を自身で購入して使っていました。日常使いであれば問題なく快適に使え、タブレット単体としても使える最高の機種なのですが、実際の授業の際には教師はブラウザでタブを大量に開くことが多いため、そうしたときにどうしてもスペックパワーの観点で動作がもたついてしまうんです。教師は授業準備のために資料を準備して、仮想デスクトップでクラスごとの授業を分けているので、タブがたくさんできてしまいます。

 提出された課題を比べながら評価する際にも生徒の数だけタブを開くのですが、40人分のタブを開くと動作が遅くなってくる。特に動作が遅いのを感じたのがスプレッドシートの処理ですね。生徒と1つのファイルを共有し、実験データを書き込ませて、教師が代表で処理をする場合にもっさりするのを感じました。2スクリーンにキャストしながらなので、負荷がかかるんです。

 その点、今回使用したASUSハイスペックChromebookのC436もCX5500も2画面キャスト・画面録画・カメラ録画を並行しても遅くなることはなかったです。無線でやり取りするダブルキャスト(2画面表示)処理が圧倒的に早い。マシンが重くなってくると、Jamboardの書き味が落ちるんですよ。自分が書いた文字が数秒遅れで出るので、授業のテンポ感が悪くなるのが嫌だと思っていましたが、2製品ともそれはないですね。

大画面表示用と持ち歩いて授業用に2サイズを使い分ける



--2台のPCをどう使い分けていますか。

 15.6インチの大画面を搭載しているCX5500は筐体サイズが大きいのでベースとして教卓に置き、Jamboardを画面に映しつつ、同期した14インチのC436を手に持って、同じJamboardに書き込むやり方をしています。生徒のようすを見ながら机をまわり、撮影したり共有したりする。これには、軽くてコンパクトな14インチのC436のほうが適しています。

C436FAを片手に持って、授業中にUSIペンも活用
 両機でいちばん大きく異なるのは、CX5500にHDMIポートがあること。インターフェースが充実しているのが良いですね。職員室では、教材作りを中心として活用しています。授業では、スライドや動画再生、録画など重たい作業を中心に、据え置いてできる作業はすべてこれで行います。Type-A端子があるのも学校設備に対応するので助かっています。

 教材づくりでもCX5500をフル活用しています。教材づくりは2つのタブを半分ずつ表示したり、あっちこっち行って画像を貼ったりするなど画面の移動が多い。そういう作業は15.6インチと画面が大きいCX5500のほうが適している。画面が広ければ広いほど教材が作りやすいですね。加えてCX5500はテンキーがあるのも便利です。成績処理もそうですが、理科は数字を入力することが意外と多いので、あると便利なんです。

教材作りの際にはおもに液晶サイズの大きいCX5500を使用
 対して、コンパクトなC436は持ち歩いて書く専用機にしています。USIペン(※)にも対応していて書き味がとても良いです。教師の仕事は書くことが欠かせないんです。理科の授業では回路図や天気図、化学反応式などはキータイピングで入力するのは難しいですし、生徒の反応やその場の質疑応答などその場で記録したいことも多いので、手書きも大切にしていきたいと思っています。さらにC436の良さとして、指紋認証があるのが良いですね。指紋でさっと開くのは、セキュリティ面でも良いし、ちょっと使いたいときのクイックさが便利です。
※USIペン:USI(Universal Stylus Initiative)規格に対応したアクティブタッチペン。4,096段階の筆圧感知に対応。充電や機器本体とのペアリングなどの設定が不要。

--オンライン授業を実施したことはありますか。

 オンライン授業の練習として、クラスで夏休みにプレという形でWeb会議アプリ「Google Meet」を使ったオンライン学活を行いました。「みんなおはよう、夏休み何しる?」にひとりずつ回答してもらい、「手をあげる」機能の練習をしました。

 そして、その前の週に教員向けの研修を数回しました。教員にはWindows機が配布されているのですが、まずChromeブラウザを立ち上げてGoogle Meetの練習。職員室の情報が出るのは避けたいので、Google Meet専用の部屋を3部屋作り、ドッキングステーションを整備しました。担任はそこに自分の端末を差し込めばすぐにGoogle Meetができる環境を用意して、オンライン会議やGoogle Meet内のJamboardを起こす練習をしました。Jamboardで授業ができる教師ばかりではないので、黒板で授業をしながら配信できるように黒板すべてを映せる広角カメラや、パソコンの手元を移せるカメラを用意するなど、拡張機器もドッキングステーションに用意しました。先生方は「手をあげる」や「チャット」機能など知らない方も多く、こんなことができるんだ、と感心してくれましたね。

--オンライン授業において、ハイスペックPCの良さはどういったところでしょうか。

 グラフィックの処理が圧倒的に速いです。カクつかない。CX5500はグラフィック処理が非常に優秀です。生徒との実験で、教室で対面しながら40人をGoogle Meetでつないだことがあるのですが、対面で会話するのと遜色がない。でも、バーチャル背景をやってみると生徒用端末は負担がかかり、画質がかなり粗くなっていました。いちばんスペックの違いを感じたのは、生徒用端末ではJamboardがカクついて書きづらいという子が出たことですね。

ハイスペックPCを使う教師を見て生徒が表現を学ぶ



--先生がハイスペックPCを活用することにより、生徒さんたちに変化はありましたか。

 授業の本質はそんなに変わりません。理科で身に付けさせたいことは同じなのですが、私がPCをサクサク使いこなしている姿を常に見せていることによって、子供たちもこうやって使えば良いんだ、とPCの可能性を感じて挑戦してみようとしているのは感じますね。先日の授業では、「理科の実験をまとめてオンラインで提出してください」とだけ言ったところ、それまではノートに実験の記録を書いて、それを撮影して送ってくるのが普通でしたが、スプレッドシートで実験結果のグラフを一から作って送ってきた生徒がいました。それには感動しました。教師がPCを使いこなせる姿を見せるというのは大事なんだなと思いました。

 「スプレッドシートを使って提出しなさい」ではなく、あえて何も指定せずに「提出しなさい」とだけ伝えたときに、生徒たちが作業や表現のやり方を選択できるようになるのがベストだと思うんです。ここはやはり紙で書くほうが早いとか、これはデジタルで処理して共有したほうが良いとか、そういう選択を生徒自身が主体的にできるようになると嬉しいですね。

--GIGAスクール前はおもにWindowsを活用していたとのことですが、Chromebookになってからどのような変化がありましたか。

 授業に関係するものはすべてChromebookで、校務に関連するものはWindowsで、と使い分けるようになりました。今はもはやOSにこだわる必要はないと考えていますが、アプリによってはインストール版のほうがじっくり使えるものもあるので、使い分けることを意識するようになりました。

 教材づくりは圧倒的にChromebookのほうが早い。そのまま生徒に配ることもできるし、連携がやりやすくなりました。すべてGoogle Drive上でやり取りできるので、USBメモリでデータ移動をしなくなったのもメリットです。家に端末を持ち帰らなくなったという変化もあります。ハイスペックなChromebookは使い始めると、もう低スペック機には戻れなくなってしまいます。今はC436とCX5500にそれぞれの使い道があって、どちらも手放せません。

授業中の巡回もC436の軽量化された質量であれば負担がない

良いChromebookなら良い仕事ができる



--ハイスペックPCを使うようになったことによる、他の先生への影響はありましたか。

 実はほかの教員もハイスペックのChromebookを買うようになりました。生徒と同じ端末で良いという教員は、まだハイスペックPCを使ったことのない教員たちではないかと個人的には思っています。

 実は私自身もC436を使うまではChromebookにインテルCore iプロセッサーシリーズを積むという発想がありませんでした。ブラウジングだけならハイスペックはいらないだろうと思っていましたが、体験するとまったく違うんです。職人だった父が、子どものころの私にいつも「良い仕事をしたかったら良い道具を使いなさい」と言っていたんですが、これは本当にそのとおりで、“良いChromebookなら良い仕事ができる”感覚がある。教員の商売道具にもなるし、武器にもなるから、お金をかけても損はしないよと常々周りに伝えています。

やりたい授業がハイスペックChromebookで広がる



 初任時からICT端末を授業で活用していたという岩田先生。当時は初代iPadが発売(2010年)されたころで、「『世界で一番美しい元素図鑑』のデジタル版がiPadで出たことに衝撃を受けた。これを生徒に見せたら授業が変わると思って、すぐに購入した」という。「ICT授業で生徒が楽しんでくれて、理科を好きになってくれれば教師冥利に尽きる」と語る岩田先生は、ICTを使った授業の広がりを模索し続け、生徒たちに楽しい理科の授業を提供している。そして、その取組みを支えているのがハイスペックなChromebookである。C436やCX5500は今後も岩田先生の授業の相棒として、校内で活躍し続けていくだろう。
《羽田美里》

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