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英語の語彙を多く習得する学習とは…CLIL授業の効果

 ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(IBS)は、CLIL(内容言語統合型学習)授業に参加した子どもは、従来のEFL(外国語としての英語)授業に参加した子どもより、第二言語(英語)の理解語彙数が多いとする研究に関する記事をWebサイトに公開した。

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 ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(IBS)は、CLIL(内容言語統合型学習)授業に参加した子どもは、従来のEFL(外国語としての英語)授業に参加した子どもより、第二言語(英語)の理解語彙数が多いとする研究に関する記事をWebサイトに公開した。子どもたちがより多くの語彙を習得する学習の条件などをまとめている。

 日本では多くの学校で、すべての教科を日本語で学び、英語の授業のときだけ英語を学ぶ、EFL(English as a Foreign Language/外国語としての英語)を採用。コミュニケーション能力を身に付けることを目標とし、日常的な英語表現を学ぶことに重点が置かれている。

 一方、最近注目されているのが、一部の授業を社会の多数派言語(例:日本における日本語)で行い、ほかの授業を外国語(例:日本における英語)で行うCLIL(Content and Language Integrated Learning/内容言語統合型学習)。CLIL授業では、学習指導要領に基づき、さまざまな教科を第二言語(L2)で指導するため、EFL授業のみで英語を学ぶ子どもたちよりも、L2のインプット量が多くなる。また、EFL授業よりも、触れる言語の性質がよりアカデミックなものになり、言語使用に関与する認知能力のレベルが比較的高くなる。言語の学習がおもな目的ではないため、生徒は暗示的な言語処理を行う場合があり、自然な言語習得のプロセスにより近くなるという。

 今回の研究では、スペインのエストレマドゥーラ州にある学校で中等教育を受ける14~15歳の生徒138人を対象に語彙力テストを実施した。CLILプログラムに在籍している生徒は82人、EFLプログラムに在籍している生徒は56人。CLILプログラムに在籍している生徒は、小学1年生からCLIL授業で学習し始め、英語への接触時間が計3,000時間の「早期CLIL学習者」23人、小学4年生~6年生でCLIL授業の学習を始め、英語への接触時間が計2,400時間の「標準的CLIL学習者」25人、中学生になってからCLIL授業で学習し始め、英語への接触時間が計2,000時間の「後期CLIL学習者」34人にグループ分けした。

 その結果、「早期CLIL学習者」がもっとも理解語彙が多く、非アカデミック語彙が約1,490語(全2,000語のうち74.5%)、アカデミック語彙が401語(全570語のうち70.4%)であった。また、すべてのCLILグループは、EFLグループよりも高いスコアを出した

 考察によると、CLIL授業の生徒の語彙力が高いことを説明するためには、言語への接触量、学習が行われる文脈が重要な要素となる。より多くの語彙を習得することができる学習の条件は、「インプットの種類が豊富であり、かつインプット量が多い」「生徒同士のやりとりを特に重要視する」「言語の形式に注目するだけではなく、教科学習という文脈の中で第二言語を学ぶことに重点を置く」の3点となる。

 生徒たちは、外国語を使ってさまざまな教科の授業を受けることによって、教科に関連する多種多様なインプットに接触することになり、より意味のある練習ができるようになる。教科の種類が多様なだけでなく、生徒同士がやりとりをするよう教師が働きかけることで、生徒たちに豊富なインプットを与え、語彙学習を後押しする可能性があるという。

 ただし、この研究ではCLILの生徒はEFLの生徒よりも高い語彙力を示したが、EFLのプログラムが効果的でないということを意味するものではない。EFL授業では、研究に基づいたアプローチが数多く実践されており、それらが言語学習を促進できることがわかっている。

 今回、IBSが取り上げた論文は「The development of receptive vocabulary in CLIL vs EFL: Is the learning context the main variable? (2020)(CLIL授業とEFL授業で比較する理解語彙の発達~学習状況はおもな影響要因か?~)」。詳しい内容は、IBSのWebサイトで紹介している。
《奥山直美》

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