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【明日使える指導術】指導を仕組みに変える、教師がいなくても育つ学級づくり

 「明日使える指導術」は、小学校・中学校で約10年の教員経験をもつ現役中学校教諭 阪野一輝氏による寄稿。今回のテーマは、「指導を仕組みに変える、教師がいなくても育つ学級づくり」。

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 教育に関わるすべての人の視点や問いを広く取りあげ、これからの学びをともに考えていく。リシードでは、寄稿連載を通じて、教育実践や研究に根ざした知見を紹介する。

 「明日使える指導術」は、小学校・中学校で約10年の教員経験をもつ現役中学校教諭 阪野一輝氏にによる寄稿。教室で子供たちと向きあう中で試行錯誤を重ねてきた「褒める」「叱る」といった日々の関わりに焦点を当て、その実践知をもとに、子供たちが自ら考え動き出すためのヒントを提示する。

 今回のテーマは、「指導を仕組みに変える、教師がいなくても育つ学級づくり」。


「先生がいないと静かにできない」
「先生が言わないと宿題を出さない」
「先生が見ていないと掃除をしない」

 教師がいなければ動けない。学級経営をしていると、そうした課題に直面することがあります。

 これまでの連載では、「褒める技術」と「叱る技術」についてお伝えしてきました。褒めることも、叱ることも、子供の成長を支えるために欠かせない技術です。

 しかし、教師が毎日褒めたり叱ったりすることも大切ですが、それだけに依存する教室が私たちの目指す姿でしょうか。目指したいのは、教師が指示を出し続ける教室ではありません。子供たちが自ら考え、互いに声を掛けあい、より良い行動を選び続けられる教室です。

 そのために必要なのが、「指導」を「仕組み」に変えるという発想です。今回は、私が学級づくりで大切にしてきた「仕組みづくり」の実践をご紹介します。

「目指すゴール」を子供と共有する

 まず大切なのは、目指すべき「良いイメージ(ゴール)」を共有することです。あらかじめ具体的なイメージをもつことで、子供たちの行動は大きく変わっていきます。

 たとえば、始業式や運動会の前。活動に入る直前に、問いかけてみてください。

「今日の始業式、どんな姿で参加できたらいいと思う?」
「運動会で目標を達成するために、みんなでどんなことを頑張ろうか?」

 すると子供たちは、自らの言葉で目指す姿を語り始めます。

「静かに話を聞く」
「友達を全力で応援する」
「時間を守って行動する」

 こうした子供たちの言葉を紡いで目標を設定し、活動に臨む。これだけで、主体性がまったく違ってきます。

 この「良いイメージの共有」は、日常の生活でも活用できます。学級目標に近づくための「行動目標」や、日直・リーダーが決める「今日のミッション」。そうした仕組みに落とし込むことで、日々の実践へとつなげていきます。

子供が動ける「仕組み」を作る

 目指すゴールが決まったら、日直が黒板に書いたり、全員で声に出したりして、目標に触れる機会を増やしていきます。

 ただし、抽象的な目標を掲げるだけでは、子供たちは具体的にどう動けば良いのかわかりません。目標を日々の行動に落とし込み、教師が指示をしなくても子供たちが自走し始める「仕組み化」のポイントは、「細分化」「役割分担」「声の掛けあい」の3つです。

やるべき行動を「細分化」する

 子供が動けないのは、やる気がないからではなく「具体的に何から始めれば良いかわからない」からです。たとえば「皆で協力して掃除をがんばる」という目標があっても、ただ「掃除しなさい」と指示するだけでは動けません。だからこそ、

・ 机をうしろに下げる
・ ほうきをかける
・ 床のゴミを拾う

のように行動を細かく細分化します。やるべきことが具体的になれば、子供は迷わず動き出すことができます。

「役割分担」で当事者意識をもたせる

 細分化したタスクには、小さな役割を割り当てます。「みんなでやろう」は、結果的に「誰かがやるだろう」になりがちだからです。

 たとえば、「挨拶ができる学級」を目指すなら、子供たち主導で「挨拶週間」を企画し、「挨拶大使」や「挨拶レンジャー」といった役割をつくります。役割と出番をもった子供は、教師が言い続けなくても主体的に行動する姿が見られるようになり、その姿が周囲へ広がっていくこともあります。

子供同士の「声の掛けあい」を生む

 そして、「声の掛けあい」の仕組み化です。ここでは、教師が注意するのではなく、子供にやってほしい行動を司会進行やシステムの中に組み込み、子供自身の言葉で発信させます。

 たとえば、朝の会や授業の前後に、日直が全体に問いかける仕組みを作っておくのです。

「朝の会を始めます。机の上はキレイになっていますか?」
「起立。机を整えてください。休め、気をつけ。これで〇時間目の……」

 これを毎日のルーティンにしておけば、教師が「片付けなさい!」と声をかける必要はなくなっていきます。

 さらに効果を高めるのが「バディシステム」です。全体への呼びかけに加えて、「隣のバディとチェックしあおう」と1対1の確認を挟みます。「〇〇ちゃん、教科書しまった?」「筆箱出てないよ」と子供同士で自然と声を掛けあうことで、確認漏れを減らし、クラス全体で動きやすくなります。

「振り返り」まで含めて仕組みにする

 目標を立てて行動するだけでも効果はありますが、成長をさらに加速させるのが「振り返り」です。

 お笑いに「フリ」と「オチ」があるように、学級づくりもセットで考える必要があります。目標という「フリ」を立てたら、必ず振り返りという「オチ」を用意する。ここまでセットにして、初めて「仕組み」として完結するのです。

 子供たちが立てた目標を達成できたか。特に誰が頑張っていたか。「みんなで頑張ろう」と決めたことを実践している子を、丁寧に取りあげていきます。すると、「この学級は、自分の頑張りをちゃんと見てくれている」という安心感が生まれ、「もっと頑張りたい」というモチベーションにつながります。

 そして、この振り返りも少しずつ子供たちに委ねていきます。教師が評価する学級から、子供同士で認めあう学級へ。これこそが、「指導」が「仕組み」に昇華した瞬間です。

良い行動を「価値あるもの」として可視化する

 頑張りを評価する仕組みができると、教師も子供も「どんな行動が素敵なのか」という視点をもって、日常を見るようになります。意識する視点が変わると、これまで当たり前のこととして通り過ぎていた行動にも目が向き、小さな頑張りや友達を思いやる姿に気付きやすくなります。「良い行動を見つけよう」という視点が、仕組みとして教師や子供たちの中に根付いていくことで、これまで見えていなかった子供たちの素敵な姿が、少しずつ見えるようになっていくのです。

・ 困っている友達にそっと声を掛けていた
・ こぼれた給食をさっと拭いていた
・ つまずいている友達に勉強を教えていた

 こうした何気ない行動こそが、学級の宝物です。見つけたらその場で全体に共有します。

「〇〇さんの行動すごく素敵だったんだけど、何かわかる?」
「友達が困っているのに気付いて、すぐに助けに行っていたんだよね」

 こうして行動に「価値付け」をする文化を作っていきます。さらに、言葉だけで終わらせず、写真やカードにして教室に掲示するのも効果的です。まるで専属のカメラマンのように、子供たちの輝く瞬間をパシャリと切り取って教室に残していくイメージです。

 「価値ある行動」が目に見える形で残ることで、「このクラスでは、こういう行動が素敵なんだ」という共通認識が深まります。教師が価値を示し、子供たちがそれを受け継ぐ。そうして、よい行動は学級の「文化」へと育っていきます。

《阪野一輝》

阪野一輝

 現役の中学校教諭。小・中学校での約10年の教員生活の中で、学級経営や子供たちの学びを深める指導法を研究・実践。これまでの経験をもとに、日々「明日から使える教育技術や考え方」を発信している。子どもたちが自ら考え動き、将来先生がいなくても自分の未来に向かって学びを調整していける「主体性」を育むこと、そして教育に携わる人々が幸せに働いていける社会を目指す。

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