School Voice Projectは2025年12月19日、教員の学ぶ機会と生活保障に関するアンケート調査結果を公表した。全国の教職員51人を対象とした調査で、利用した制度によって経済的サポートに大きな格差があることが明らかになった。
同調査は「教員の学ぶ機会と生活保障を求めるアクション」が実施主体となり、School Voice Projectが協力して実施。2025年9月12日から30日にかけて、全国の小学校から高等学校に勤務する教職員を対象にインターネット調査を行った。
利用した制度については「大学院修学休業制度」がもっとも多く、各種派遣制度(現職教員派遣、教職大学院派遣など)、「自己啓発等休業制度」が続いた。また、「そのほか」として長期研修制度などを利用したとの回答もあった。校種による違いはほぼ見られなかった。
学んだ場所については、校種による違いが鮮明になった。小学校では教職大学院で学んだ人が過半数だったのに対し、中学校・高等学校では他の国内大学院で学んだ人が最多となった。そのほかとして、フォルケフォイスコーレや国外の語学学校で学んだ人、「Fulbright program (FLTA)を利用してアメリカの大学で日本語教師をした」という人もいた。
経済的支援については、利用した制度によって金銭面でのサポートの有無や充実度合いに大きな差が見られた。全体的な傾向として金銭的なサポートは、各種派遣制度・そのほか(長期研修制度など)、大学院修学休業制度、自己啓発等休業制度の順に充実していた。
同じ「大学院での修学」という状況であっても、利用した制度が「派遣・研修」か「休業」かによって金銭面での負担が大きく異なる実情がうかがえた。「派遣・研修」型の制度では給与や保険料、家賃手当などの支給が比較的手厚いのに対し、「休業」型ではサポートが少ないという実態も明らかになった。
所属校に復帰した後の昇給については、「なし」と答えた人が45%となり、多くの自治体で昇給が行われない実情が明らかになった。大学院での修学に伴って教員免許の種類が専修免許に更新される場合についても、自治体によって昇給の有無が異なっていたほか、同じ自治体でも「どの制度を使ったか」で昇給の有無が異なる事例も見られた。
調査結果について、School Voice Projectは「教員が自ら学びを深めようとする際の支援制度についてのさまざまな現状が浮き彫りになった」と分析。特に経済的なサポートについては、大阪府のように「休職中は無給かつ副業も原則禁止、授業料も自己負担」という制度の自治体がある一方、他自治体では在学中の給与や授業料を支給する例もあり、地域間の格差が明確に見られたとしている。
また、修学後の昇給についても、多くの自治体で「なし」と回答しており、専修免許を取得しても給与が変わらないケースが半数近くに上った。中には同じ自治体内でも「どの制度を利用したか」によって昇給の扱いが異なるなど、運用の不統一も見られた。
教育公務員特例法第21条には、教員は自らの資質向上のために「研究と修養に努める義務」が明記されているほか、文部科学省も2022年の答申内で教師が「教職生涯を通じて探究心を持ちつつ自律的かつ継続的に新しい知識・技能を学び続ける」ことを目標に掲げ、教員の主体的な学びを重視している。
しかし、現状ではその理念を支える制度的・経済的基盤が十分とはいえない。School Voice Projectは「教員が生活を犠牲にせずに学びを深められる仕組みが整ってこそ、こうした理念が真に実現されるといえる」と指摘。今後は、自治体間での好事例共有や制度の見直しを通じて、すべての教員が安心して学び続けられる環境を整備することが求められるとしている。














