文部科学省の松本洋平大臣は2025年11月25日の会見で、高校教育改革を支える新たな基金を創設し、改革を先導するパイロットケースを創出する方針を示した。補正予算案には文部科学省分として過去最大規模となる約1兆6,000億円を計上し、基金の創設のほか、大学等の成長分野への転換支援、学校施設の対災害性の強化、若手研究者の支援など多岐にわたる項目を計上した。
会見では冒頭、物価高への対応と危機管理投資・成長投資を柱とする補正予算案が持ち回り閣議で決定されたことが報告された。文科省が計上した約1兆6,000億円には、高校教育改革基金、大学の成長分野への転換支援、国立大学や大学病院の教育研究力の維持向上、学校施設の対災害性強化、若手研究者やクリエイター育成など、人への投資と科学技術の基盤整備が幅広く含まれる。
中でも高校教育改革基金は、いわゆる高校無償化と連動し、公立高校の改革を先導する「パイロットケース」を全国で創出する考えが示された。また、取組みの一環として、学習意欲の高い生徒が家庭の経済状況によって学習機会が制限されないよう、地域と連携した学力向上や学習支援の仕組みを支援することも明らかにした。
さらに松本大臣は、高校改革の方向性を示す「高校教育改革に関するグランドデザイン2040(仮称)」の骨子を決定し、会見同日に公表したと伝えた。骨子では、AIの発展や人口減少など社会構造の大きな変化を踏まえ、AIに代替されない能力や個性の伸長、経済社会を支える人材育成、多様な学習ニーズに対応した教育機会アクセスの確保という3つの視点を重視したと説明。2040年を見据え、高校から大学院まで一貫した人材育成システムを構築する姿勢を示した。
グランドデザインの今後の進め方として、文科省は来週に都道府県向け説明会を開催し、来月中旬には産業界・自治体・教育関係団体との意見交換を実施する予定。年度内の策定に向け、各方面からの意見を反映しつつ、高校改革基金をはじめとする予算措置を速やかに現場へ届ける準備を進めるとした。松本大臣は「公立高校の底上げと改革の加速により、多様な学びへのアクセス格差を解消する」と述べ、改革に向けた強い意欲を示した。
そのほか、性教育に関する指導のあり方について、「どこまで扱うか」を国が一定程度示すことで慎重な指導を促す、学習指導要領のいわゆる「はどめ規定」の撤廃を求める署名が約4万2,000筆提出されたことを受け、大臣が見解を示した。松本大臣は、子供が性に関する正しい理解を身に付け適切に行動できるようにするための多くの声を真摯に受け止めるとした一方で、性に関する指導は発達段階の差や保護者の理解を踏まえた慎重な対応が必要だと説明。そのうえで、中学校保健体育での学習内容や「命の安全教育」、性暴力防止教育の普及状況に触れ、現在進んでいる学習指導要領改定の議論を踏まえながら、子供たちが適切な知識と態度を身に付けられるよう引き続き検討を進める考えを示した。







