矢野経済研究所は、国内eラーニング市場の動向を調査し、BtoBおよびBtoC市場の現状と将来展望を明らかにした。2024年度の国内eラーニング市場規模は、提供事業者の売上高ベースで前年度比2.1%増の3,812億円と予測されている。
内訳は、法人向けのBtoB市場は1,232億円(前年度比7.8%増)、個人向けのBtoC市場は2,580億円(同0.4%減)と見込まれ、BtoB市場の成長がBtoC市場の縮小を補う形で全体市場はプラス成長を続ける見通しだ。
eラーニング市場は、新型コロナウイルスの感染拡大により対面教育が制限されたことで、2020年度から2021年度にかけて急成長した。しかし、2022年度以降はコロナ禍の行動制限が緩和され、社会経済活動が正常化する中で、成長率は鈍化傾向にある。
政府方針として支援が推進されているリスキリングは、2024年度に関連助成金の交付が活発化し、eラーニングの領域でもリスキリングを目的とするコンテンツやサービスが増加した。ただし、企業主導のリスキリングは各企業の事情により課題が多く、現状では確実に機能している事例はそれほど多くはないものと考えられる。しかし、今後は雇用の流動化やジョブ型雇用の増加が予見され、個人主導型のリスキリング需要が活性化することが期待される。
リスキリングでは、学習者個々のレベルに応じた学習提供が求められ、働きながら新たな知識・スキルを習得する必要がある。これに対し、AI技術を活用した学習者個々のレベルに応じたレコメンド機能やキュレーション機能の提供、時間や場所に制約がない学習が可能なeラーニングは親和性が高く、今後の需要に対応することが考えられる。
2025年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比1.0%増の3,849億円と予測される。BtoB市場は、上場企業などを対象とする人的資本の情報開示義務が後押しとなり、企業向けeラーニングの需要は高いニーズを保ちつつ推移し、当該市場の拡大に寄与する見通しだ。ただし、顧客の裾野拡大による小規模導入の増加から、顧客単価の下落や競合状況の激化により市場成長率は抑制されると予測される。
一方、BtoC市場は、英語学習や資格取得などのeラーニングサービスの伸びが期待されるが、学習塾・予備校や通信教育サービスで提供されるeラーニングは集客停滞で伸び悩みが見込まれるため、BtoC市場全体としては縮小基調で推移すると予測される。