学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第220回のテーマは「友達に嫌なことをされても「やめて」と言えない」。
不登校原因の約25%が「友達関係」
子供同士の人間関係がうまくいかないことは、子供にとって大きな負担となります。文科省の調査では、不登校になった子供の理由(複数回答)では「友達関係」というものが約25%を占めています。学校としては配慮し、きちんと対応していきたいテーマの1つです。
この問題を考える際、「個人」の問題と「集団」の問題があります。「個人」とは、その子供の性格やキャラクターに関係するものです。「集団」とは、そのクラスの雰囲気などに関係するものです。両者が関連、重複することもあるのですが、分けて考えると少しわかりやすくなります。
「集団(学級)」の問題
まず、「集団(学級)」の問題についてです。学級の雰囲気は、いくつかの要素によって作り上げられます。どんな子供達がいるのか、教員はどんな人なのかなどです。特に小学校の場合、学級担任が授業をする機会も多く、担任の影響が大きく出ることとなります。
そういった学級の集団において「やめてと言いにくい」という状況は良い状況とは言えません。集団の中で自由に自分の思いを発することができていない状況と言えるでしょう。たとえば、クラスの中に強い者がいて、そのことによって自分の思いを表出しにくいということなどです。この場合の「強い者」は、子供の場合はいじめっ子のようなものにあたります。
ただ、この強い者は子供だけではなく、教師であることもあります。教師が厳しい指導などによって学級を運営していっている場合などがそれにあたります。そういったクラスは一見きちんとしているのですが、きちんとしている要因が教師の厳しさ(怖さ)なので、その部分が無くなってしまうときちんとした状態はすぐに崩壊してしまいます。
「個人」の問題
次に、「個人」の問題についてです。その子供の性格やキャラクターに関係しているものです。たとえば、「人見知り」などの性格の人がいたとします。人見知りであったとしても、その人が生活するうえで問題が無ければ良いのだと思います。これは人見知りだけでなく、他のものにも言えることです。ただ、その性格などが、日常生活を送っていくうえで何らかの支障を生じさせてしまうようであれば、変えていった方が良いのだと思います。
そういった子供への対応として「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」があります。SSTとは、対人関係で困りごとなどを抱える子供が対人関係を円滑にするために取り組むトレーニングです。詳しく紹介している書籍やホームページがあるので、詳細はそちらに譲ります。
遊びの中で自分の思いを表出できるよう育成
今回紹介したいものは、簡単に取り組むことができるレクリエーションです。遊びの中で自分の思いを表出できる子供(学級集団)を育成していくことをねらったものです。私が特に勧めているものが「氷鬼(こおりおに)」です。「氷鬼」は「助ける」「助けられる」という関係が生じる稀有な遊びです。鬼に捕まった子供は仲間に対して「助けて」と伝え、周りの子供はタッチする形で助けていきます。この「助けて」と伝えることや助けてもらった後に「ありがとう」と伝えることなどが人に思いを伝える練習(疑似体験)のような感じになります。
取り組む際にはコツがあります。遊びの前に氷鬼には「助ける」「助けられる」がある稀有な遊びであること、捕まったら積極的に「助けて」と伝えるようにすること、周りの人は積極的に助けていくようにすることなどを伝えます。伝えることで、より「思いを伝える」という部分を子供が意識できるようになります。遊びの中でそういったことを繰り返す中で、冒頭の「やめて」という言葉を伝えていきやすくなっていく可能性もあるのだと思っています。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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