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【クレーム対応Q&A】給食費などを現金で徴収しないで

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第151回のテーマは「給食費や会費などを現金で徴収しないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第151回のテーマは「給食費や会費などを現金で徴収しないでほしい」。

「お金」が教員の多忙化の原因の1つに

 日本の教員の仕事は多岐に渡っています。教えるという仕事以外にも学校に関わるさまざまな仕事に取り組むことが求められます。そういったことが教員の多忙化につながっている要因の1つとされています。多忙化の原因の1つとなっているが「お金」についてです。

 日本の学校では、さまざまな機会に家庭からお金を集めます。本来、義務教育は無償となっているのですが、それは教科書代や教師の人件費などについてです。それ以外の給食費、図工の材料費、ドリルや副読本の代金、修学旅行や遠足の費用などは基本的には家庭が負担をすることとなっています。

 問題となるのが、徴収や管理の方法です。親にとっても、教員にとっても、もっとも手間がかかるものが「現金」による徴収です。私も小学校の教員をしていたころ、何度も「集金袋」を集めることをしていました。集金袋を集める日は、朝から少し緊張していました。適切に集めないとトラブルになるからです。私は集金がある日には必ず、子供が登校する前に教室で待機をしていました。教室に入って来た子供から、まず集金袋を鞄から出し、自分で中に入っている金額が合っているのかを確認させてから、私に手渡すようにさせていました。このように丁寧に対応していないと、色々なトラブルが発生します。中身を確認しないまま、受け取ってしまうと、中に入っている金額が違っている時の対応が難しくなります。多くの親は金額を間違えずに入れてくるのですが、時折間違えていることもあります。子供が確認した時に違っていたのであれば、親が入れ間違えたのか、鞄の中で集金袋から出てしまったのかの2つになります。中身を確認しないまま教師が受け取ったり、鞄に入れたまま子供が外遊びに行ってしまったりすると、教師や他の子供に問題がある(盗んだ)のではという可能性も出てきてしまいます。1クラス30人くらいの子供に対して、ミスなく集金を集めることは本当に神経を使うことだったのを覚えています。

 また、担任を含めた学校が家庭から集金をすることを避けた方が良い理由が他にもあります。私は担任をしている時、集金の提出ができていない家庭に催促の電話を掛けたことがあります。そういったことが続くと、親は学校からの電話には出てくれなくなり、授業参観などに参加してくれなくなってしまいました。集金以外のことで色々と話をしたいこともあるのですが、なかなか親とコンタクトを取ることができず、子供の学びにマイナスの影響を与えてしまうことになっていました。

 文科省は、2023年9月8日に学校や教師が担う業務について提言を発表しました。その提言では、学校や教師が担う業務を3つに分けています。「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」の3つです。今回テーマにしている学校徴収金の徴収・管理は「基本的には学校以外が担うべき業務」と位置付けています。「その業務の内容に応じて、地方公共団体や教育委員会、保護者、地域学校協働活動推進員や地域ボランティア等が担うべき」と書かれています。給食費や教材費は、銀行振り込みでの引き落としとなっている学校も多いです。学校に関わるお金の徴収・管理は文科省が示しているように学校外が担当する形にしていくのが望ましい形でしょう。

 私の知り合いが管理職をしている小学校では、文科省の提言を学校ホームページの目立つ所に出しているそうです。保護者や地域の人に現状を知ってもらうところがスタートなのでしょう。急にすべては変わりませんが、保護者や地域の人に学校の現状や文科省のスタンスを知ってもらうことはとても重要です。そのうえで学校が持続可能な形になるよう変えていくことが必要なのだと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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