文部科学省は2023年11月13日から2024年1月15日にかけて、大学院を設置する全国の大学を対象に、大学院教育改革に関する実態調査を実施した。調査の結果、大学院教育における体系的な取組が進展していることが明らかになった。学生による教員評価については、「学生による教員の授業評価を実施している」が68.4%にのぼる。
同調査は、国立、公立、私立の計661大学を対象に実施され、644大学から回答が得られた(回収率97.4%)。この調査は、2019年1月に中央教育審議会大学分科会がまとめた「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」に基づき、大学院教育改革の実態を把握し分析することを目的としている。
調査の結果、大学院教育における体系的な取組が進展していることが明らかになった。特に、「研究者として必要とされる実験・論文作成等の研究手法を身に付ける科目を設置している」82.5%や「学修課題を複数の科目等を通じて体系的に履修するコースワークを実施している」54.5%といった取組みが高い割合で実施されていることがわかった。また、「5年一貫」課程では、「研究プロジェクトの企画・マネジメント能力を養う科目を設置している」などの取組みが他の課程と比較して高い割合で実施されている。
教員の業績評価に関しては、「研究実績の観点での教員の業績評価を実施している」の割合が62.5%ともっとも高く、続いて「授業の観点での教員の業績評価を実施している」「研究指導の観点での教員の業績評価を実施している」となっている。分野別では、「理学」「工学」「農学」「保健」において、研究実績の観点での評価が高い割合で実施されている一方、「人文科学」「社会科学」では約5割が業績評価に関する取組みを行っていないことがわかった。
学生による教員評価については、「学生による教員の授業評価を実施している」が68.4%、「学生による教員の研究指導評価を実施している」が20.0%であった。特に「5年一貫」課程では、研究指導評価の実施割合が他の課程よりも高い。
研究倫理教育や博士論文の指導・審査体制の改善に関しては、「研究室以外の場で研究倫理教育を受ける機会を提供している」「学生の研究遂行能力を適切に把握するため、進捗状況発表や口頭試験を実施するなど、進捗度や理解度を確認する仕組みを整備している」といった取組が6割を超えて実施されている。
大学院修了生のキャリアパスの確保と可視化の推進では、「修了生の就職状況の詳細をインターネット等で公表している」の実施割合が58.4%ともっとも高い。また、大学院としての組織的な学生に対する就職支援では、「インターンシップへの仲介等の支援や、インターンシップを実施している」「学部生から博士課程学生まで共通の、キャリアパスに関する相談対応が可能な専門のメンターやコーディネータの配置を行っている」の実施割合が4割を超えている。
リカレント教育に関しては、「社会人入試の実施」が65.5%ともっとも高く、続いて「長期在学コースや長期履修制度の設置」「自大学のHP以外での広報活動、情報提供」「土日夜間授業の実施」となっている。
今回の調査結果は、大学院教育改革の進展状況を示すものであり、今後の大学院教育の方向性を考えるうえで重要な資料となる。調査結果を基に、各大学がさらに効果的な教育改革を進めることが期待される。