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【相談対応Q&A】小学校で教科担任制を導入してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第196回のテーマは「小学校で教科担任制を導入してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第196回のテーマは「小学校で教科担任制を導入してほしい」。

教科担任制の在り方

 最近、小学校における教科担任制について話題になることがあります。学校規模や地域にもよりますが、以前から音楽や家庭科などの教科ではその授業を専科の教員が担当している学校も見られました。そういった取組みをさらに広げ、深めるような形での「教科担任制」というものを進めていくことができればということです。

 2021年7月に出された中教審答申「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告)」では、小学校高学年における教科担任制を推進していく際の考え方が述べられています。取り組む教科に関しては、優先的に外国語、理科、算数、体育について専科指導の対象とすべきとされています。専門知識を有する教員が担当することで、より質の高い教育を実施することが期待できます。

 また、答申では指導形態による教科担任制の4分類を示しています。

  • 中学校並みの完全教科担任制

  • 特定教科における教科担任制

  • 学級担任間の授業交換

  • 学級担任とのTeam Teaching

 これは教科担任制がさまざまな形で取り組むことができることを示しています。学級が複数ある学年の中で、ある教員が学年全部の体育を、他の教員が理科を担当するなどというやり方です。この「学級担任間の授業交換」は、週当たりの時数が同じであれば割と簡単に取り組むことができるものです。逆に「中学校並みの完全教科担任制」は、教員の定数にも関係してくるものです。予算などとも関連してくることであり、実施の難易度が高いものになります。

 上記で紹介したように、「教科担任制」は制度上(法律など)の問題などがあります。しかし、そうではなく1つの学校の中でのマネジメントにより対応できる部分がたくさんあります。また、市区町村の単位で近隣の小学校と中学校をセットで考えることができれば、さらにバリエーションは広がります。中学校の教員が小中連携の中で、小学校高学年の授業を担当するものです。「中1ギャップ」へのケアにもなります。

柔軟に考えて取り組んでいく

 今回の教科担任制だけではありませんが、学校長が適切に柔軟に判断していくことで解決できることがたくさんあります。新型コロナウイルスの流行はそういった学校長の判断力の違いをまざまざと見せられたように感じています。地域差はありますが、未知の病気である新型コロナウイルスの流行は多くの学校が混乱状態に陥りました。そんな中、学校長の判断で、その学校の置かれた状況において取り組めることをどんどん採用し、教育の質の確保に努めていた学校がありました。

 現在の日本の社会は変化の激しいものとなっています。学校も社会の一部であり、激しい変化にさらされることがあります。そういった状況において、学校長や自治体の教育長などの判断がより重要になってきています。「前年踏襲」や「横並び」のような考え方ではその学校、子供たち、教職員の良さを引き出すことができない場合もあるのでしょう。学びの形も柔軟に考え、取り組んでいくと良いでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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