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【クレーム対応Q&A】ウズラ卵を給食から除いてほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第169回のテーマは「喉に詰まる危険なウズラ卵を給食に出さないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第169回のテーマは「喉に詰まる危険なウズラ卵を給食に出さないでほしい」。

安全な食べ方を伝えることが大事

 福岡県の小学校1年生の子供が給食で出たウズラ卵を喉に詰まらせて窒息し、死亡したという事故が起こりました。子供が亡くなるということはとても悲しいことです。そういったことを受けて、教育委員会から学校に向けて適切な指導を求める通知が出されています。それと共に親からも「喉に詰まる危険なウズラ卵を出さないでほしい」という連絡が入る可能性もあります。

 私は給食からウズラ卵を無くしていくということには反対の立場です。喉に詰まって子供が亡くなったということは事実なので、そういったことに敏感に反応することは理解できますし、悲しいことだと私も思います。ただ、ウズラ卵は世の中では一般的な食べ物です。給食から排除をしても、家庭や飲食店では普通に食べるものです。そうであれば、ウズラ卵をきちんと食べる方法を伝えていくことが学校の役割の1つなのではと思います。

 「丸呑みをするのではなく、きちんと噛むこと」「早食いをしないようにすること」などを子供に伝えていくことが大事でしょう。ウズラ卵以外にも、鶏団子、ミニトマト、白玉などが給食に出てきます。それらは給食以外でも一般的な食べ物です。そういったものを安全に食べることができるようにするのが学校の役割の1つなのだと思います。

 しばらく前に、早く食べようとした子供がパンを丸めて食べ、その後に牛乳を飲んだことによって、喉に詰まり亡くなったという事故がありました。パンが原因で亡くなったのですが、だからと言ってパンを排除するという考えは違っているでしょう。実際、その後もパンは給食で出されています。子供の年齢に応じて、場合によっては危険となるものでも適切に関わる方法を学んでいくことが大事なのだと思います。

 似たようなことで公園や校庭の遊具のことが気になります。私が子供のころには公園や校庭にあって遊具で今は無いものがいくつもあります。ブランコ、シーソー、回転遊具などです。どこかで事故が発生すると、そういったことが関係し、そういった遊具が危険だとされ、撤去されていきました。設置者(自治体が多い)は、事故などがあれば、責任を取ることになるので、少しでも怪我の可能性があれば、排除する方向へ動きます。そういったことを経て、あまり遊具のない公園や校庭になっていったのが現状です。

小さな危険を排除することで大きな危機を迎えてしまう恐れ

 危険なものを排除していくことで、子供は危険なものへの対処法を学ぶことなく成長していくこととなります。遊具に関することでは、そういった遊具との関わりで、身のこなしが巧みになっていきます。関わりが少ないことにより、極端な場合、交通事故にあってしまうかもしれません。小さな危険を排除することで大きな危機を迎えてしまうというケースです。

 今回のテーマである「ウズラ卵」も同様です。少し危険だからといってどんどん排除していった場合、ひとまずは安全なのかもしれません。ただそれは「その時だけの安全」であり、「問題の先送り」のようなものです。現在の学校は色々な意味で忙しいです。給食の時間も短い傾向にあります。そういった中で今回の事故が発生しています。単に「ウズラ卵を取り除く」という解決方法ではなく、もっと広い視野でこの問題を見つけていくべきだと私は思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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