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【相談対応Q&A】給食に地元で採れた食材を使ってほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第154回のテーマは「給食に地元で採れた食材を使ってほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第154回のテーマは「給食に地元で採れた食材を使ってほしい」。

学校での食育

 学校での給食は、大人になってからの同窓会などでも話題になることもあるくらい、子供にとっては学校生活の中で印象深いものです。

 2005年に食育基本法が制定されました。国民が生涯にわたって健康的に生活することで、豊かで活力のある社会が実現することを目的としています。給食を含めた学校での食育も重要とされています。そういったことと関連して食材の地産地消を進めている自治体があります。

コストとの兼ね合い

 地元の食材を使って給食を作っていくことは、食育の観点からも、地域の産業(農業、漁業、畜産など)の振興の観点からもプラスの面が多いです。ただ問題となるのが「コスト」です。給食で使う食材は、安価なものを活用していることが多いです。自治体にもよるのですが、給食の1人分の食事は200円程度の費用で作られています。これまでもさまざまな工夫の中で、安全で安価な食材を用いてきました。この1年ほどは、食材を含めて色々なものの価格が上がり、そういったことも給食に影響を与えています。

 給食における食材の地産地消は方向性としては良いのですが「コスト」が問題となります。ただ考え方を少し変えることで実現しやすくなるのではと私は思っています。それは「学校以外の予算を使う」というものです。今回の給食の地産地消に関する件では、学校の予算だけでなく、地域振興に関する予算、農業保護に関する予算などを活用していくというやり方です。

 以前、このコーナーで学校の体育館の空調やトイレの改修に学校以外の予算を使うことについて書きました。学校の体育館は、地震や台風などの災害時は避難所として使われます。放課後には生涯スポーツなどでも使われます。選挙の際は、投票所としても使われます。そういったことを踏まえると、学校以外の予算を活用して体育館の改修をしていくことは、まったく問題はないと思われます。実際、そういった取組みをしている自治体もあります。

東京都小平市の事例

 体育館の改修の例と同じように学校給食において食材の地産地消に取り組む際、学校とは違う部署から予算を少し融通することで、格段にこういった取組みがやりやすくなります。たとえば、東京都小平市は、次のような実践をしています。2005年に関係機関で「地元野菜導入推進検討会議」を立ち上げ、給食に地元の農産物を積極的に使用する仕組みの検討を行いました。2009年からは地元の農産物を購入した学校に対する補助制度を導入しました。2020年には、地元の農産物の使用量に応じて補助割合が高くなる方式を取り入れています。この補助金は小平市の「農業振興予算」から出ています。現在、小学校で30.1%、中学校で32.8%が地元の農産物の導入割合となっています。野菜を中心に年間で50品目以上を給食に供給しているそうです。

 先ほども書きましたが、こういった取組みが進んでいくことは、プラスの面が多いです。予算の組み方を少し変えることで十分実現が可能です。少しずつこういったものが進んでいくと良いと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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