大日本印刷(DNP)は2023年9月1日、書体の主観的な読みやすさと個人の読み書き特性の関係を調べた結果、同社開発の「じぶんフォント」の有効性を確認したと発表した。比較した7書体のうち、読み書き困難の症状がある人の約49%が「じぶんフォント」をもっとも読みやすいと回答している。
「じぶんフォント」は、DNP、東京工業大学、ファシリティジャポン、リアルタイプの4者が、2022年に個々人にとって読みやすい書体がそれぞれ存在するという仮説に基づき開発したプロトタイプ(試作モデル)の書体。
今回の調査は2022年9月26日~11月18日の期間、 「じぶんフォント」公式Webサイトで無記名調査したもの。書体の主観的な読みやすさに関する一対比較として、「じぶんフォント」3種、「丸ゴシック体」1種、「明朝体」1種、「角ゴシック体」2種の計7種類の書体のうち、2書体の比較を全組み合わせで行い、主観的な読みやすさの順位を算出。あわせて読み書き特性に関する質問表調査を行った。有効回答数は5,180件。
「読み書きが苦手かつ視覚症状がある」グループ(回答数408件)では、「読み書き困難がない」グループと比べて、「明朝体」を読みやすいと感じる人は少なく、「じぶんフォント どっしりまるご」と「じぶんフォント すっきりまるご」を読みやすいと感じる人が多かった。
「じぶんフォント(3種類)」を読みやすいと回答した人は、「読み書きが苦手かつ視覚症状がある」グループの49%(回答数200件/408件)で、「読み書き困難のないグループ」より約12ポイント高いことが明らかとなった。これらの結果は統計的にも有意であることがわかっているという。
また、読み書き困難の有無に関わらず全体の約25%が、7書体の中で「じぶんフォント はっきりまるご」をもっとも読みやすいと回答。約35%で1位となった丸ゴシック体につぐ2位となった。また、3種類の「じぶんフォント」をあわせると、約40%の人がもっとも読みやすい書体と評価しており、多くの人にとっても読みやすい書体といえるとしている。
これらの結果から、読み書き困難の視覚的な症状がある人には、丸みがあって抑揚が少ない(太さが一定の)書体、文字の底辺がどっしりしていて、重心がわかりやすい書体が読みやすい可能性が示唆されたという。調査結果の詳細は、「じぶんフォント」の公式サイトに掲載している。
DNPは今後、調査結果がより実生活に近い環境で文章を読む場面でも確認できるか実証実験を実施予定。DNPのWebサイトのほか、DNPグループで障がい者雇用に取り組むDNPビジネスパートナーズやNTTドコモのWebサイトに「じぶんフォント」を実装して、その有効性を検証するとしている。