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政治参加意識を育む「主権者教育」94.9%の高校が実施

 文部科学省は2023年5月19日、2022年度の主権者教育(政治的教養の教育)に関する実施状況調査の結果を公表した。主権者教育は高校3年間で94.9%が実施、半数以上の高校で第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)を題材とした指導が行われた。

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2022年度第3学年の生徒に対する指導の状況
  • 2022年度第3学年の生徒に対する指導の状況
  • 2022年度第1学年の生徒に対する指導の状況
  • 2022年度第1学年の生徒に対する指導の状況、「公共」の実施状況
  • 2022年度第1学年の生徒に対する指導の状況、生徒会選挙実施上の工夫
  • 2022年度第1学年の生徒に対する指導の状況、公民科と特別活動との連携

 文部科学省は2023年5月19日、2022年度の主権者教育(政治的教養の教育)に関する実施状況調査の結果を公表した。主権者教育は高校3年間で94.9%が実施、半数以上の高校で第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)を題材とした指導が行われた。

 主権者教育は、選挙権年齢の引き下げにともなう若者の政治的リテラシーや政治参加意識を育成する教育の一環。文部科学省では、単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の1人として主体的に担うことができる力を身に付けさせることを目的とした教育とされている。

 2022年度調査は2022年12月~2023年3月実施。国公私立高等学校等1,306校と高等学校等を設置する全国の都道府県・指定都市教育委員会65団体からの有効回答を集計した。

 高校3年間の指導状況をみると、主権者教育は94.9%が「実施した(する予定)」と回答。第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)を題材とした指導は、半数を超える55.1%が「実施した」と回答している。

 高校1年生段階では「実施している」のは67.7%で、実施した教科等は「公民科(67.0%)」がもっとも多く、「特別活動(45.6%)」、「総合的な探究の時間(13.1%)」が続いた。実施した学習活動は、「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み(76.1%)」「模擬選挙等実践的な学習活動(38.2%)」「現実の政治的事象についての話し合い活動(29.3%)」等。

 具体的には、生徒会長の呼びかけのもと、校則や行事のルールの見直しに関心をもつ生徒により委員会が組織された(教師も立候補により参加)、教育委員会が県議会議員と高校生の意見交換会を開催した等。教育委員会では、各学校で1人ずつ「主権者教育推進リーダー」を任命していることや、高等学校と大学、産業界等を結び付ける役割を担うコンソーシアムを設置していること等があがった。

 実施にあたり、関係機関と連携した高校は、「選挙管理委員会と連携(29.4%)」「地方公共団体と連携(4.6%)」「関係団体・NPO等と連携(3.5%)」。一方、「連携していない」との回答は64.9%にのぼった。

 さらに主権者教育を実施するうえで、「実際の選挙の時期は関連団体の協力が得にくい」「教師の理解に差がある」等、「公共」「特別活動」共に指導体制に課題がみつかった。また、「実際の選挙とタイミングをあわせようとすると年間計画が立てにくい」「ホームルーム活動の時間だけでは時間の確保が難しい」等、指導計画の課題や、「選挙に関する教育になりがち」「現実の題材を扱うことと政治的中立性の確保の両立が難しい」等、指導内容にも課題があった。

 教育委員会は、主権者教育として18歳選挙権ばかりが強調されすぎていることが課題と認識。この他、教科等横断的に、社会を生き抜く力や、地域課題の解決のための力を身に付けさせることが「主権者教育」であるということを根付かせる必要があること、指導者が一部の教科の担当教師に偏っていること等、複数の課題をとらえているという。

 調査の詳細は文部科学省のWebサイトで確認できる。

《川端珠紀》

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