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高校生の自主性や創造性を引き出す、ハイスペックPCが実現する情報活用能力の育成

 ICTの活用により生徒のどういった能力を伸ばし、何を目指すべきなのか。高校での1人1台端末活用を推進する工学院大学附属中学校・高等学校および関西学院千里国際高等部の先行事例をみる。

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高校生の自主性や創造性を引き出す、ハイスペックPCが実現する情報活用能力の育成
  • 高校生の自主性や創造性を引き出す、ハイスペックPCが実現する情報活用能力の育成
  • 工学院大学附属中学校・高等学校の中川千穂先生
  • 工学院大学附属中学校・高等学校の授業風景
  • 関西学院千里国際高等部の西出新也先生
  • 「ハイスぺックなPCが最低条件」(関西学院千里国際高等部の生徒)

 国が進めるGIGAスクール構想が高校でも動き始め、各高校において1人1台端末の環境整備が進められている。この背景には、2022年度から高校で新学習指導要領が実施され、「情報活用能力」を学習の基盤となる資質・能力のひとつとして位置付けるとともに、情報科にて共通必履修科目「情報I」が設置されたことがある。また、それとともに2025年度(2025年1月実施)からは大学入学共通テストにおける試験科目として「情報I」が加わり、高校における情報教育の深度および重要性が増している。

 しかし、実際の教育現場ではこうした急激な環境の変化に戸惑い、1人1台端末をいかに使いこなしていくべきかを迷っている向きも多いのではないだろうか。高校教育にふさわしい1人1台端末の活用の仕方とはどういったものなのか、また、そうしたICTの活用により生徒のどういった能力を伸ばし、何を目指すべきなのか。高校での1人1台端末活用を推進する工学院大学附属中学校・高等学校および関西学院千里国際高等部の先行事例を、動画を交えてみていこう。

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 両校では生徒が1人1台端末を用いて動画等のコンテンツを制作し、思考力・判断力・表現力を養い、今後の社会で必須となる情報活用能力を育んでいる。また、そうした「やりたい意欲」を掻き立て、子供の思考を止めない学びを実現するにはハイスペックなパソコン環境が重要だと語っている。

テクノロジーを活用した発想力の育成が求められる

 高校の新学習指導要領で学習の基盤となる資質・能力として位置付けられた「情報活用能力」。情報活用能力は進路や職種に関係なく、今後すべての人に必要となる能力である。

 たとえばある課題に対してそれを解決するシステムを構築する場合、必ずしも自分がプログラムを書く必要はないだろう。ただ、前提としてシステムやプログラムに対する理解があるかどうかによって、アイデアが生まれるか否かの差が生じる。そして、その理解度が高いほど、有効かつ実現可能なアイデアがより具体的に湧いてくる。

 このようなテクノロジーの理解度や、情報活用能力が問われる場面は、今後生徒が社会に出たときに多く遭遇することになる。理系や文系、職種に関係なく、テクノロジーを活用した発想ができるようになることが期待されているのである。社会の課題や問題は常に漠然としており、それを紐解き、細分化して、何をしたら良いかという具体策に落とし込むためには、論理的に道筋を立てて考えなければならない。その点では、新学習指導要領で小学校から必修化されたプログラミングは思考力を鍛えるうえで役に立つといえるが、高校においてはさらに、テクノロジーの理解・活用を基盤とした発想力の育成が求められ、そうした能力の育成のために新学習指導要領による教育変革がなされている。今後の社会を担う次世代には、そうした幅広い発想が期待されているのである。

技術の進歩とともに自ら学び続ける姿勢が必要に

 テクノロジーの理解と活用という点でみると、現在の生徒たちは、スマホやタブレットが常に身近にあり、一見IT機器に慣れているように見える。しかし、その多くは動画やSNS等のコンテンツを消費するツールとしての利用に留まっている。画像・動画の加工はできるもののその機能は限定的だ。そうした実情も踏まえ、高校における1人1台端末の整備がなされており、その目的は、情報やテクノロジーの科学的な理解に裏打ちされた適切かつ効果的な情報活用能力の育成にある。

 一方で、テクノロジーの進化のスピードはすさまじく速い。今後の社会を担う子供たちが社会課題に対応していくには、日々進化しているテクノロジーの力をいかに活用できるかが鍵となる。進化するテクノロジーを理解し活用していくには、生徒が自ら学んでいく姿勢も求められる。「誰かに教わらないとできない」マインドでは間に合わないのである。

 誰かに教えてもらう内容は、他の誰かがすでに行った過去のやり方である。過去のやり方は、新しい情報や技術が日々更新される社会ではすぐに通用しなくなってしまう。子供たちは新しいことを自ら学ぶ姿勢や、興味をもってトライする勇気、教えてくれる人がいないときにどう学べば良いかといったマインドセット・姿勢・経験も身に付けていく必要がある。逆にいえば、こうした自学をしなくなると人の成長は止まってしまうともいえる。人生100年といわれるこれからの時代、新しいものに向かう姿勢が人生の豊かさを左右する要素にもなるのではないだろうか。

動画制作で創造性を育む
工学院大学附属中学校・高等学校

 工学院大学附属中学校・高等学校では1人1台端末を活用して、「創造性を育む教育の柱」として動画制作を6年前から実施。制作した動画は国際コンテストに出品する等、意欲的な取組みが行われている。今年度の取組みでは、高校1年生275人全員が総合探究の時間を使って動画制作のグループワークを行った。

 これらの授業を担当している中川千穂先生は、動画制作の効果について「自分が伝えたいことをはっきりさせ、どう表現しようか考えるために、自分自身と向きあうことが非常に大切。また、プロジェクトの締切りまでの計画を生徒同士で話しあって進めており、主体的に活動し、自主的に実践できるようになっている」と評価する。動画編集の過程で自分に向きあい、自らの計画を実践した生徒は「自分が将来何をしたいか、進みたい道がはっきりするので、目標に向かって努力でき、高いレベルの進学ができている」という。

工学院大学附属中学校・高等学校の中川千穂先生

 同校の取組みでは、情報技術を用いて表現力に幅を出すことで、「伝える」スキルが鍛えられている。社会では相手に物事を伝えることが非常に重要なスキルとなる。自分の考えた企画を実現するために上司へプレゼンする、同僚の協力を得るために巻き込む、反対意見の人を説得する等、常に「伝える」能力が問われることになる。これからの教育では、同校のように、社会で必須となるスキルを学校生活で養っていくことが求められるだろう。

工学院大学附属中学校・高等学校の授業風景

Adobeで表現を磨き仲間との議論で判断力を養う
関西学院千里国際高等部

 一方の関西学院千里国際高等部は、すでに10年前から1人1台端末を導入。技術科・情報科主任の西出新也先生によると、同校は2012年度からタブレットを貸与し、2018年度からはBYODを活用して1人1台端末の授業を開始した。生徒が授業を選択して自ら時間割を作る制度を導入しており、情報科では11種類の授業から2科目以上選択する。情報の授業では、Adobe Creative Cloudのライセンスを活用し、今期のコンテンツ制作の授業ではIllustratorで学校のポスター等を制作しているという。

関西学院千里国際高等部の西出新也先生

 西出先生は、同校の情報の授業について、「ただコンテンツを制作するだけでなく、生徒が社会課題に対して自ら問題意識をもち、問いを立てて、時に仲間と力をあわせて、ICTを活用しながら最適解を出していく授業構成になっている」と語る。「誰のためのデザインなのかな等も生徒同士で話しあいながら、皆で分析して仮説を立て、ICTツールを使って検証していく。そうした授業の流れの中で思考力・判断力・表現力を習得している」という。

 判断力の育成では、可能な限りさまざまな観点で物事を考え、整理・分析したデータを参考にし、時に人と協議しながら判断していく必要があるが、同校では仲間と議論しながら授業を行い、こうした経験を積んでいる。このようにさまざまな立場の人と意見を交わし、意見の違う人とも建設的な議論を重ねて、最善の判断をできるように日々経験を積むことが判断力養成に必要となる。

 さらに、両校が実践している「データの扱い方」も、これからの必須技能になる。データ関連は情報の授業で学習し、データを扱うツールの使い方や、有効なデータを集めて整理すること、データから最善の判断を導く分析、人を説得するための有効なデータの見せ方、誤った解釈を招かないように注意すべき点等を取り扱うが、両校のように実際の課題を通して作業するとスキルが身に付きやすい。両校は、こうした授業を先取りしているといえよう。

高性能なPC環境が生徒の「やりたい」表現を叶える

 そして、両校の情報活用能力を育成する学びを支えているのが、ハイスペックなPC環境である。工学院大学附属中学校・高等学校の生徒は、制作環境について「動画編集で使うAdobe Premiere Pro等をスムーズに動かせるようなスペックのPCが必要」だと指摘した。中川先生も「複雑な思いや事柄を表すために抽象的かつ画質の良い表現を動画に載せるので、高性能なPC環境が重要になる」と語る。

 また、関西学院千里国際高等部の生徒も「PCが思いどおりに動かないと、アイデアを忘れてしまったり、やりたい表現ができず妥協することもある。高性能PCならデザインを明確に表現できる」と語った。西出先生は、「アウトプットのレベルを上げる段階に来ているので、高校生にはAdobe Creative Cloudが快適に動作するハイスぺックなPCが最低条件」という。

「ハイスぺックなPCが最低条件」(関西学院千里国際高等部の生徒)

ジェネリックスキルとなる情報活用能力を育む環境整備を

 両校の事例をみても、自由に表現するための高性能なソフトやPCが整備され、優れたツールを使える環境があることが、生徒自身の「もっとやりたい」自主性や創造性をかきたて、「こうやったらどうだろう」という思考やチャレンジを後押ししていることがわかる。

 情報活用能力は今後ジェネリックスキルといわれる汎用的な力になるといえる。特にICTスキルは英語に並ぶ汎用性があり、生涯年収を左右すると言われるほど、あればあるだけ役に立つスキルになっていく。そうした能力を育成するためにも、生徒のやる気や能力に制限をかけないような高性能なPCを準備する価値はおおいにある。

 もちろん、生徒それぞれに得意不得意があるため、全員がPCを余すことなく使いこなすようになるわけではない。しかし、どんどん先に進める子供には優れたツールを使える環境を与えたほうが良いといえる。それは、水泳の学習で水泳が得意な子に対して、浅くて小さい子供用プールしか用意しなければ、決して長距離を泳げるようにはならないことと同じで、先に進める可能性がある子供にはその環境を用意することが重要となる。すぐに泳げる子供を広いプールで泳がせるように、能力や活動に制限をかけない性能のPCを準備する価値が、子供にとっても日本社会全体にとってもあるのではないだろうか。

 1人1台端末の整備は生徒自らが考え、学び、課題に対してどう行動すれば良いか経験を積むのに欠かせないものであり、それを支えるための優れたツール環境は、生徒の自主性や創造性をさらに後押しするだろう。

《羽田美里》
羽田美里

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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