学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第103回のテーマは「連絡アプリで伝えたのに担任が把握していなかった」。
欠席等の連絡がオンラインに
家庭から学校に対しての欠席等の連絡がオンラインでできる学校が増えてきています。保護者にとっても、学校(教員)にとっても、便利になったという意見が多数あります。ただそういった便利なツールにおいても気を付ける点がいくつかあります。
学校における欠席等の連絡は以前は「連絡帳」や「電話」等で行うことが一般的でした。小学校の場合、親は欠席について書かれた連絡帳を同じ登校班の子供に預け、預かった子供(班長等)が欠席する子供の学級担任まで連絡帳を届けるというシステムです。帰りには朝の逆向きで連絡帳が学級担任から家庭まで戻っていきます。また、電話連絡がおもな方法の学校の場合、冬等の欠席が多い時期、朝の時間に管理職や事務職員が何十本もの欠席連絡の電話を受け、対応していました。
上で書いたような「連絡帳」「電話」というやり方が、コロナをきっかけに変わりつつあります。コロナが流行している状態では「連絡帳の受け渡し」は新規感染のリスクを伴います。また、GIGAスクール構想でタブレット/PCが配布され、学校の仕組みがオンライン対応になったものが増えました。そういった流れの中で、欠席等の連絡をオンラインで行う形に移行していった学校が多数ありました。
オンライン化によるメリット・デメリット
欠席連絡がオンラインできるようになったことにより、学校としては「朝に掛かる電話の数が激減した」「欠席情報の共有が容易になった」等のメリットがあります。また、保護者としては「連絡が容易になった」等があります。良い面が多いこの仕組みなのですが、落とし穴がない訳ではありません。いくら良い仕組みを作ったとしてもそれを運用するのは人間です。人間がミスをしてしまえば、良い仕組みであっても何らかの不具合が生じます。
2022年9月に静岡県牧之原市の幼稚園で起こった登園バスでの死亡事故はその典型です。幼稚園や保育園等は、小中学校以上にオンラインでの連絡システム等が整っていることが多いです。欠席の連絡だけでなく、そういったことと関連したものも増えています。登園バスが位置情報サービスを活用し、到着時刻を知らせるもの等がそれに当たります。
死亡事故のあった幼稚園でもオンラインでの出欠連絡システムおよび園バスの位置情報サービス等が導入されていたとのことです。そういった最新のシステムが導入されていたとしても人のミスによって事故は起こり得ます。今回の事故では、バスの運転担当の人がバスに乗っていた子供が全員降りたと一括入力していたこと、家庭からの連絡で出席となっていたのに担任がきちんと確認をしなかったこと等のミスが重なりました。
今回のオンラインでの欠席連絡だけでなく、一般論として、便利な仕組みが導入されると少し余裕ができることで、その結果、油断が生じてしまうことがあります。人はミスをしてしまうものだという前提で仕組み作りをしていくと良いでしょう。
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