今年度の学力テストで注目を集めたのは、ICT端末を活用した学習やプログラミング、ウェブページの読解力を問う内容が出題されたことである。
小学校「算数」の第4問において、図形を作成するプログラムを取り扱う文脈で問題が出題されたほか、小学校・中学校の理科の問題ではタブレット型端末を活用した学習のようすが登場した。GIGAスクール構想によって配備された1人1台端末を活用した学習や、プログラミング教育に積極的に取り組む学校の児童・生徒にとっては、普段の学習で慣れ親しんだ場面設定といえる。しかし、ICT活用に慣れていない児童・生徒は、実際に問われている内容以上に難しく感じたかもしれない。
中学校の国語の問題では、農業と先端技術を組み合わせた「スマート農業」による「農業分野におけるSociety5.0の実現」について、資料として提示されたウェブページから適切に情報を抜き出し、自分の意見を記述する能力が問われた。解説資料を見ると、出題の趣旨として「自分の考えが伝わる文章になるように,根拠を明確にして書くことができるかどうかをみる」とある。
ここで思い出されるのが、OECD(経済協力開発機構)が実施した学習到達度調査(PISA)の2018年調査だ。PISA2018において、「読解力」とは「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」と定義されているが、日本の「読解力」の国際的な順位は前回の8位から15位に大きく後退した。
文部科学省・国立教育政策研究所はこの結果について、「読解力の問題で、日本の生徒の正答率が比較的低かった問題には、テキストから情報を探し出す問題や、テキストの質と信ぴょう性を評価する問題などがあった」「読解力の自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに、引き続き、課題がある」と分析している。これらのことから、PISA2018で浮き彫りになった読解力の課題を意識した出題であることが推察される。
「全国的な学力調査の今後の改善方策について(まとめ)」(平成29年3月)では、「全国学力・学習状況調査の調査問題については,新しい学習指導要領が求める育成を目指す資質・能力を踏まえ,それを教育委員会や学校に対して,具体的なメッセージとして示すものとなるよう検討を進める 」としている。今年度の学力テストの出題内容には、「ICT端末を活用した学習、プログラミング教育、読解力の育成に取り組むこと」がメッセージとして示されたと考えられるだろう。
アンケートにご協力ください
文部科学省が目指す新たな学びの形を色濃く反映した、今年度の全国学力テスト。その出題内容について、リシード読者の方々はどのような感想をもっただろうか。「算数について、自身の学校では授業内でプログラミングに触れていたため、簡単に回答することができた」「今後、理科の授業においてICT端末を活用した学習を増やす必要性を感じた」等、下記のアンケートより意見を聞かせていただきたい。