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【ウェビナー質疑応答まとめ】文科省 安彦広斉氏・平井聡一郎氏、国の補助金活用法について疑問に回答

 リシードが2022年3月1日に、文部科学省 安彦広斉氏、情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏を招き開催した「チャンスを逃さない!GIGA実現への国の補助金と活用法」より、質疑応答の内容をまとめる。

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【ウェビナー質疑応答まとめ】文科省 安彦広斉氏・平井聡一郎氏、国の補助金活用法について疑問に回答
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リシードが2022年3月1日に、文部科学省 初等中等教育局 修学支援・教材課長(命)デジタル教科書基盤整備検討PTリーダー(併)デジタル庁統括官付参事官の安彦広斉氏、先導的な教育ICT環境構築および支援に取り組む情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏を招き開催した「チャンスを逃さない!GIGA実現への国の補助金と活用法」より、質疑応答の内容をまとめる。

「チャンスを逃さない!GIGA実現への国の補助金と活用法」レポート記事

質疑応答まとめ



学校現場において、このような国の施策や補助金の情報を漏れなくキャッチアップするためにできることは何か。また、学校現場から教育委員会への有効な働きかけ方や、予算化してもらう際のポイントはあるか。



A:学校内の管理職はもちろん、教育委員会へ学校現場のニーズを日常的に把握してもらう仕組み作りが重要だと考える。必要なものを必要な人へアピールすることで、関連する情報が提供されやすい。

 また、通常の学校教育の予算は地方交付税措置として進めているため、市町村の議会を通す必要がある。予算化のために教育委員会が首長とコミュニケーションを取る際に学校現場のニーズを的確に伝えるとともに、地元企業をいかにして巻き込むかという視点があると良いと考える。たとえば今回のようなICTサポートの場合、大都市のITベンダー一択となるよりも、システム導入時は大手のITベンダーに入ってもらうが、そのあとの運用部分は地元企業で請け負う等、地域密着で推進する構想を描くことで予算計上の実現度が上がるうえに、地方創生という意味でも意義深いと考えている。

「授業環境高度化事業」において、補助上限額を算定する際の指導者用端末の積算単価は、1台当たり4.5万円となっている。自治体で整備する指導者用端末もこの価格以下に相当する仕様のものとすべきか。



A:今回の金額はあくまでも必要最低限の単価で設定しているため、実態や実施したい授業にあわせたスペックの機器を検討してほしいと考えている。「授業環境高度化事業」の補正予算では4.5万円の2分の1が補助されるが、その残り相当分は地方交付税措置となっている。最大で4.5万円は支払われると考え、金額で判断せずに実施したい教育にあったスペックやメーカー、OSのPCを選んでほしい。

「GIGAスクール運営支援センター」委託先となる事業者は、校内通信ネットワーク整備を委託した業者や端末納入事業者でも問題ないか。



A:問題ないが、事業者選定は重要だと考える。技術的に疑問が残るようであれば、いろいろな事業者を幅広く検討することも重要だ。

GIGAスクール運営支援センターに配置されている方を学校に派遣し授業支援を行わせることは可能か。



A:授業支援はICT支援員と業務内容が重複するため、注意が必要である。地方交付税措置内に位置付けているICT支援員の経費は、今回の補正予算の範囲外。役割分担や予算化の目的を中心に判断すると良いだろう。

ICT支援員とGIGAスクールサポーターの違いは何か。予算配分の違いや求められる役割の違い、あるいは予算化するうえで名称を分ける必要があったのかなど、文科省の意図するところを教えていただきたい。



A:GIGAスクール構想においては、国と地方の役割分担の観点等から、地方交付税措置が講じられている経費について、国庫補助は行わないことを原則として国の予算措置を行ってきている。ICT支援員については、すでに地方交付税措置が講じられているが、GIGAスクールサポーターは、GIGA端末導入時に初期対応として新たな財政需要として配置が必要と考え、国として補助金により財政支援したところである。それぞれの役割の違いについて、詳しくは、次の文科省ホームページ上の資料で確認いただきたい。

GIGAスクールサポーター、ICT支援員等の概要

今後、業務効率改善のために、公立学校でも個人のPCやスマホを構内のWi-Fiやプリンターに接続できるようになっていくのか。



A:現時点では難しいと言える。学習用とはいえ、ICT教育で利用したデータには子供の個人情報や成績等が入っている。子供の個人情報保護を最重要ポイントとしつつ、教員の業務効率や働き方改革の面から、無駄を排除したセキュリティポリシーの見直しを実施している。

クラウドサービスを利用する際、パスワード認証による単一要素認証のみの場合が多く、ブルートフォース攻撃やパスワードスプレー攻撃により、不正アクセス(アカウント侵害)を受けている教育委員会が多数あると聞いている。MEXCBTや学習eポータルもパスワード認証のみなので、これらのサービスを利用するのを不安に感じている。多要素認証を導入するのに使える補助金はあるか。



A:多要素認証の導入を含め、学校でのセキュリティ対応に必要な経費については、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018(平成30)~2022年度)」において、毎年1,805億円の地方財政措置が講じられているため、この財源を活用した整備を進めていただくことが基本となる。

通信環境や学習活動を担保するために学校側の端末をSIM利用・持ち帰り可にするのは重要かと思うが、全ネットワークをSIM化するような予算獲得は可能か。または文科省からこういった方針が出る可能性はあるか。



A:どのようなネットワークを構築するかについては、基本的に各設置者において決定するものと考えている。一方、GIGAスクール構想の実現のため、学校の実情を踏まえて安価に環境を整備するためのモデル例を提示するため、令和元年12月現在の技術的な仕様等を基に、各自治体が仕様書を作成する際の参考となるモデル例として、標準仕様書を提示している。

今後のネットワーク整備については、その後の情報通信技術の進展等を踏まえつつ、学校の学習活動等において必要となるICT環境を整備していただければと考えている。全ネットワークをSIM化することについて、すでに類似の整備を行っている自治体もあると聞いているので、そうした先行事例におけるメリット・デメリット等も参考としていただき、整備を検討いただきたい。

GIGAスクール構想の実現 標準仕様書

MEXCBTについて、いつまでにすべての学校で使えるようにすると考えているか。



A:令和3年度から全国の希望する小中高校等での活用を順次開始している。また、令和6年度から全国学力・学習状況調査における活用を目指して、試行・検証を行っているところである。

地方交付税不交付団体の場合は、やはり自治体負担ということか。



A:所得税、法人税、酒税、消費税の一定割合および地方法人税の全額とされている地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するため一定の合理的な基準によって再配分するもので、地方の固有財源である。交付税不交付団体は、豊かな地方税収等により、こうした財源保障を必要としない地方公共団体であり、一定の行政サービスを提供できる財源がすでに確保されていることになる。このようなことから、全国すべての地方公共団体において、学校におけるICT環境整備に必要な標準的な財源は確保されているということになる。

 一方、こうした地方の固有財源であることから、ICT環境整備をどの程度行うかについては、各地方公共団体の裁量であり、予算化のためには地方議会の承認が必要となるため、首長、地方議会議員など、教育委員会は幅広く、粘り強く関係各方面に理解を求める必要がある。

今回の補正予算案の補助金申請の手続きのコツを知りたい。



A:今回の補正予算の使い道は無数にあるが、その目的は「GIGAスクール推進」のためのICT教育環境の整備という1点である。これを実現するためにどうすれば良いか、どうしたいかを検討し、そのうえで必要な予算であるという説明ができれば申請は通ると考えている。
《編集部》

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