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MS、多様性に応える教育機関向け新OSとSurface発表、幼~小中の授業サポート

 2021年11月9日、日本マイクロソフトは幼稚園から小学校・中学校向けの「Windows 11 SE」と、その搭載デバイス「Surface Laptop SE」を発表。11月25日に開催されたオンライン記者説明会のようすをレポートする。

ICT機器 授業
日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏
  • 日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏
  • 日本マクロソフトが提供する教育ソリューション
  • モダンワーク&セキュリティビジネス本部 本部長の山崎善寛氏
  • 「Microsoft 365 A1 for Devices」では端末単位でライセンスを提供
  • 児童・生徒のウェルビーイングに結びつける新機能
  • 音読の練習をAIがサポートするリーディングプログレス機能
  • Surfaceビジネス本部 本部長 石田圭志氏
  • 届いたばかりの「Surface Laptop SE」
 2021年11月9日、日本マイクロソフトはおもに幼稚園から小学校・中学校における授業をサポートするためにWindows 11の新たなエディションである「Windows 11 SE」と、その搭載デバイス「Surface Laptop SE」を発表した。11月25日に開催されたオンライン記者説明会のようすをレポートする。

 当日は、日本マイクロソフトの業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏、モダンワーク&セキュリティビジネス本部 本部長の山崎善寛氏、Surfaceビジネス本部 本部長 石田圭志氏が登壇した。

児童・生徒の選択肢を増やし、ウェルビーイングにもつなげる



 まず中井氏から「マイクロソフトの教育における今後の取組み」が説明された。GIGAスクールで全国の小中学校に端末の整備が進んだ現在、マイクロソフトでは全国の自治体の先生への活用支援や生徒にフォーカスした新しい学習の確立に取り組み、先生方の働き方・教え方、生徒の学び方へのアプローチを改革し続けている。

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏
 続けてマイクロソフトのソリューションを活用した事例が紹介された。教務・校務にいつでもどこからでもアクセスできるクラウド環境を構築したことで、先生たちの働き方が変わったという埼玉県鴻巣市では、同時に生徒のICTの活用も進んだという。大阪府堺市では校務のデジタル活用とともに、外国籍を持つ生徒の言葉の壁を取り除く試みも進んでいた。

 山梨県立甲府西高校ではICTの活用で生徒たちの学びが大きく変わり、探究からの深い学びに結び付いている。鹿児島県では小中高と学年が上がるにつれてIDを引き継げる県域教育用ドメインが導入され、12年間の共通アカウントの配布が実施された。将来的には学習ログの取得から生徒の個性に合わせた学びの実現に向かうという。中井氏は「それぞれの課題をGIGAスクール構想で入ったICTデバイスが解決していくことが日本中で起こっている」と話した。

 また「学びの機会にさまざまなチャレンジが出てきた。これからもっと生徒たちと先生たちがつながっていくプラットフォームをマイクロソフトが提供できないか。それがグローバルの開発の原動力にもなっている」と中井氏が話すように、今回の新製品・サービスが全世界的に拡張したさまざまな多様性に富んだニーズを満たすものであることが示された。

日本マクロソフトが提供する教育ソリューション
 新しいWindows 11 SEとSurface Laptop SEが担うのは、こうした多様化した教育ニーズにあわせて進化するプラットフォーム。新しい端末では選択肢が広がり、特にアクセシビリティの機能、サイバー攻撃からの保護、費用対効果に重点を置く。クラウドを使った学習環境の変化に対応。負荷のないシンプルな端末の設定と管理、常時接続が得られない環境を想定したオフラインでのOffice利用、プログラミング教育や協働学習、セキュリティの強化も進める。そして、より多くの児童・生徒がICTを使うため、誰一人取り残さずに、生徒の多様性に配慮し、インクルーシブな教育の実現や学習だけではない児童・生徒の感情の可視化の仕組み等から、児童・生徒の幸福度の向上いわゆるウェルビーイングにアプローチするとした。

学びの機会を最大化する新たなMicrosoft 365とWindows 11



 続いて山崎氏による「学びの機会を最大化、Microsoft 365とWindows 11新製品戦略」にて、学習者と教職員が触れる統合プラットフォームのWindows 11と、Microsoft 365のクラウドサービスであるTeamsの進化が披露された。

「Microsoft 365 A1 for Devices」では端末単位でライセンスを提供

Microsoft 365 A1 for Devices



 日本では端末ごとに4,128円でライセンスが提供される。これまでもGIGAスクール構想で特別なパッケージ「GIGA Promo」を提供してきた同社だが、さまざまなフィードバックを含めてグローバルで新しく提供するものだ。「クラウドのサブスクリプションではありますが、6年間、端末単位でライセンスを提供します。GIGAスクール構想でもやはり公費負担や自治体負担でクラウドサービスを導入する場合に、一括前払いという要望が強くありました」と山崎氏は説明した。

 Microsoft 365 A1 for Devicesは、クラウドからWindowsだけではないさまざまな端末の運用管理ができるIntune for Education、Office 365 Education、Minecraft Education Editionがライセンスに含まれている。特に山崎氏が今回ニーズに応えて注力したというマインクラフトは今後、プログラミング授業の活性化につながると期待が高まる。

モダンワーク&セキュリティビジネス本部 本部長の山崎善寛氏

 教育機関向けのラインアップは拡充した。教育機関が無償で使いたい場合は、Office 365 A1があり、より上位のMicrosoft 365 A3、A5というライセンスも引き続き提供される。特にMicrosoft 365 A3、A5は、教職員を含めて包括契約した場合、生徒に無償で一部の機能を提供するといった特別な仕組みが用意されているので、教育機関それぞれの要望に合わせた利用が検討できる。

Teamsの新機能



 児童・生徒のウェルビーイングに結び付ける新機能が備わった。子供たちの感情をキャッチするTeamsアプリ「リフレクト」という機能は、Teams for Educationを使っていれば無償で使うことができる。生徒自身の今日の気分をかわいいキャラクターで入力することが可能。「先生が生徒の変化を感じ取って、ずっと気分が良かったにもかかわらず、急に不安を示している生徒を見つけたり、逆にずっと嫌なことがあったと毎日示しているのに、良いことがあったと示したら、生徒に声掛けをするというきっかけづくりを手助けするツールです」と山崎氏は子供たちのウェルビーイングに結び付くことを説明した。なお、このツールの実際の活用例は12月17日にセミナーが予定されているという。

児童・生徒のウェルビーイングに結び付ける新機能
 もう1つは「リーディングプログレス」という音読の練習をAIがサポートする機能。読み間違えを検知し、生徒がどれくらい正しく読めているかをスコアリングする。音読のサポートは時間がかかるため、AIのサポートで生徒が自発的に練習できることは望ましい。こちらは足立学園等の英語教育で実際の活用が始まっているという。

音読の練習をAIがサポートするリーディングプログレス機能
 「Windows 11 SE」は教育機関向けに特別にリリース。Windows 11をベースに特に小学校や中学校の生徒、教職員が簡単に管理できるOSとなっている。最大のポイントは「クラウドファーストのOS」。「これまでのGIGAスクール構想でもクラウドベースの運用管理をしてきたが、それをさらに一歩進めて、クラウドがある前提で快適に使っていただける環境で機能のブラッシュアップをしている」と山崎氏が話すように、低スペックのPCでも快適にアプリケーションが動作するという。
 なお当OSは端末に紐づいたプリインストールのみの提供となっている。そのため、このOSを単体でダウンロードしてのインストールはできない。この理由を「さまざまなパートナーのデバイスとOSを組み合わせて最適な状態で提供することが今回のOSでは非常に重要視されているため、プリインストールのみの提供にさせていただいています」と山崎氏は説明した。またライセンスは別途購入が必要だが、いくつかのアプリケーションをプリインストールして、実際に学校現場でのインストールの負荷を下げることも可能だ。

 Windows 11 SEのターゲットは幼稚園から小学校・中学校。「高校から大学に進むにつれて、よりハイスペックなものが求められる傾向にあります。実際に企業で使われているプラットフォームを高校から大学のうちに学んで使いこなすといったことも非常に重要なので、あらゆる学年や進路に合わせて最適なデバイスとOSの提供を実現したい」と山崎氏はこの新たなOSの位置づけを見通した。

手頃な価格の入門機「Surface Laptop SE」



 最後に新たな端末である「Surface Laptop SE」を石田氏が紹介した。「マイクロソフトではこれまでもSurface GoやSurface Proを中心に多くの教育機関のソリューションに携わってきたが今回、さらに多くの児童・生徒の学びの機会の提供を拡大する思いがあります」と石田氏は開発の背景を語った。

Surfaceビジネス本部 本部長 石田圭志氏
 27,800円からの手頃な価格のデバイスは、日本だけではなく世界中のユーザーからのフィードバックを受けたもので、オンライン学習への最適化や予算も含めた幅広い選択肢、管理やセキュリティのコストや手間の軽減を実現する。

 「Surface Laptop SE」にはWindows 11 SEがプリインストールされ、オンライン学習に必要なカメラ、マイク、スピーカーが備わっている。また修理のしやすさも考慮された設計で、バッテリーの駆動時間は最大16時間と、クラスでの利用からそのまま自宅への持帰りによる学習場面を想定。届いたばかりの実機の紹介では、プラスチック製の筐体は非常にコンパクトで使い心地の良さを印象づけた。

 この「Surface Laptop SE」は教育機関向けに11月30日より出荷開始で、ラインアップは2種類の構成となっている。これまでのSurfaceファミリーのSurface Go、Surface Proのラインアップに入門機が加わった形で、石田氏は「あらゆる教育機関にはいろいろな活用シナリオがあると思います。シナリオにあった最適な端末やサービスを選んでいただければと考えています」と話した。今後は、教育機関向けに「Surface Laptop SE」の情報提供を強化していく予定だという。

届いたばかりの「Surface Laptop SE」

コンパクトで持ちやすい筐体
 現在、小学校・中学校での1人1台端末の整備が進んで活用フェーズに入ったが、多くの教育機関では思うように生かされていないケースもあると聞く。また教室の机での設置や持ち運びでは、落下や破損の恐れも数多く発生する。今回発表された「Surface Laptop SE」はおよそ1.1kgと軽く、サイズもひとまわり小さい印象で、小学校以降だけではなく、幼稚園等へのエントリー機や手軽に持ち運んで機動的に活用するマシンとしては最適だと感じた。

「Surface Laptop SE」は27,800円からの手頃な価格

Windows11 SEはOEMのハードウェアパートナーと共に提供される

 教育ニーズの多様性からウェルビーイングにまで視野を拡大したマイクロソフトのOSやクラウドサービスは、今後も子供たちと先生たちを支えるだろう。グローバルな教育市場における豊富な経験が、さらに日本で生きることを期待したい。
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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