埼玉県教育局は2020年10月15日、埼玉県内(さいたま市立は除く)の公立小中学校などにおける「学校再開後の学習への取組状況等の調査結果」を公表した。ICTの活用やコロナ禍による授業への影響といった課題が見えてきたという。 調査は、学校再開後(分散登校期間は除く)から夏季休業までの期間における各学校の取組みについて調査し、学習状況や教育指導の状況について把握して、データに基づいてコロナ禍における学校教育の課題や、県・市町村・学校が取り組むべき内容を整理することが目的。埼玉県内(さいたま市立を除く)の全公立小学校702校、中学校355校、義務教育学校1校を対象に実施した。調査実施期間は2020年8月。 ICTの活用について、すべての学校が臨時休業期間以降どこかのタイミングでICTを活用していた。臨時休業中にICTを活用していた学校のうち、通常登校後も継続して活用した学校は小学校48.1%、中学校48.6%と半分程度であった。ICT機器の活用は、Society5.0を子どもたちが生きていくための資質・能力を育む教育を実施するうえ不可欠であること、新型コロナウイルスの感染者が出れば、当該学校(学級)は登校して学習を継続することが困難になることからも、「通常登校下でもICTの活用を継続し、不測の事態に備えるとともに、新たな学びの創造に取り組むことが必要である」としている。 「ICT活用能力の高い教員はいるものの、教員の活用能力の差が大きい」を選んだのは、小学校71.3%、中学校78.4%と多い。また、ネットワークやハード環境、ICT関係の研修の不足も多くの学校から指摘されている。このことから、「市町村や学校単位でICT活用を組織的に進める取組みが不足している可能性がある」「特定の教員だけでなく組織的・教科横断的に、ICTの活用に取り組むことが必要である」という課題が明らかになった。 小学校6年生・中学校3年生の今年度(2020年度)4月からの臨時休業期間と分散登校期間においてできなくなった授業時数は、小学校・中学校とも「160~219時間程度」が約7割。できなくなった授業時数を確保するための方法は、「長期休業日の短縮」が小学校・中学校とも100%。ついで、「学校行事やその準備にかかる時間の見直し」小学校93.2%・中学校95.5%が多かった。 「臨時休業で欠けた時数」や「学校再開後に補った時数」は、各市町村・各学校によって大きく異なる。欠けた時数と補った時数の差を計算すると、欠けた時数以上に時数を確保した学校が2割程度。一方、欠けた時数が確保した時数を約2週間分(約60時間分)超える学校も2割程度であった。授業時数の多寡のみで学校の取組状況を評価することは妥当でないとしながらも、子どもたちの学習理解が不十分と考えられる場合は授業時数を積極的に確保するなどにより、十分な学習理解に導く必要がある。 小学校6年生・中学校3年生の教育課程について、現段階で全校が年度内に教育課程を終える予定であると回答している。進度は小学校よりも中学校のほうが早く、ほとんどの中学校は3月上旬までにはすべての教育課程を終える見込みであった。 新学習指導要領で新たに盛り込まれた「対話的な学び」については、多くの学校でマスクやフェイスシールド、アクリル板などの使用、ICTの活用など、さまざまな工夫をして行っていた。しかし、3割弱の学校では新型コロナウイルス感染拡大を懸念し対話的な活動を行わないようにしていることがわかった。「対話的な学び」はさまざまな形での対話を通じて思考を広げ深めていくことが期待されており、対話的な学びを実施したとしても、適切な感染予防対策を行うことで新型コロナウイルス感染症のリスクを低減することは可能であるとまとめている。 埼玉県教育局は、調査結果から見えてきた課題と各市町村・学校が取り組むべき内容を整理し、通知する。特に課題が見られた市町村には、状況を確認して個別に改善点を指導・助言していくという。また、研究機関とも連携・協力し、今回の調査から把握した各学校の取組状況を、今年度および来年度の埼玉県学力・学習状況調査の結果とクロス分析する。新型コロナウイルス対応に伴う埼玉県学校教育への影響をデータに基づいて分析し、児童生徒の学習保障に向けた効果的な取組みを把握し、今後の施策に生かすとしている。