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【クレーム対応Q&A】嫌いなものを食べさせないで

 保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第5回は「嫌いなものを無理に食べさせないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第5回は「嫌いなものを無理に食べさせないでほしい」。

幼稚園と保育園で給食に対する体験が違う


 学校において給食に関するトラブルは起こりやすいタイプのものです。特に小学校への入学時に起こりやすいです。幼保小連携に関する研究では、1年生の子どもが、卒園してきたところが幼稚園なのか、保育園なのかということで、少し給食に対する意識に差があるという研究成果があります。幼稚園・保育園で給食に対する体験が違うということが原因とされています。

 保育園は、基本的に毎日の昼食は給食です。その点、幼稚園の場合、昼食がお弁当のところもあります。お弁当の良さは色々とあるのですが、給食への慣れという面では不安材料にもなります。そういった給食への不安などがきっかけで、学校へ行きたくないということにつながることもあります。小学校1年生は、給食だけでなく、子どもが学校に不安を抱くことになる要素がいくつもあります。小学校1年生の担任として子どもと接する際、給食に関して幼稚園・保育園の違いなどを意識するようにすることも大事かもしれません。

最優先で「アレルギー」に配慮


 給食に関することで、最優先で配慮することとしては「アレルギー」です。これは、命に関わる場合もあるので、最優先の事柄です。アレルギーについては、年度のはじめに保護者に対し、給食におけるアレルギーについての調査を行います。栄養士などと連携しながらミスなく取り組むことが求められます。

 そういったことと関連しながら扱いが難しいものが「好き嫌い」と「アレルギー」の違いに関するものです。担任が「アレルギーでないから大丈夫、しっかりと食べなさい」と強く言ってしまうことがあります。そのことがきっかけで保護者から連絡があることがあります。学校給食のねらいには、栄養などを摂取するとともに、楽しく食べるということがあります。今の給食では、「楽しく食べる」という部分を以前よりも重視されています

無理せず、配膳などで工夫する


 今の先生方が子どもだった頃は「自分に盛られた分は残さずに食べる」ということが厳しく求められる時代だったと思います。私が小学校の教員に採用された25年前はまだそういった雰囲気がありました。給食が食べ終わらない子どもは、その子どもだけ食べ終わるまで昼休みに入っても食べさせるようなことが時折ありました。

 教師に限らず誰しも、どうしても自分が経験してきたことに関する意識が残っているものです。自分が教師の立場になった時も「自分に盛られた分は残さずに食べる」ということを子どもに強く求めてしまうことがあります。そのこと自体は間違ったことではないです。ただ、そのことによって、子どもや保護者が教師に対して不信感を抱いたり、場合によっては不登校になってしまったりするようでは、また違った問題です。

 具体的な対応策としては「無理をしない」ということです。食生活の改善は、学校の指導(給食など)だけで、大きな変化が望めるものではありません。家庭で保護者が偏食を認めているような状況では、学校だけが強い対応をしても、それが良い形でまとまるものでもありません。家庭できちんとできていないからこそ、学校で指導をしなければという考え方もあります。ただそういった考え方でうまくやれているような場合は、保護者からクレームのようなことはあまりないはずです。日々の給食においては、嫌いな食べ物に関しては、配膳の際にも少なめに盛り、食べ始める前にも減らすことを認めるなどの方法が妥当なやり方でしょう。偏食をなくすことは大事ですが、それだけが大事なことではありません。他のことをすべて犠牲(学校に来なくなってしまうなど)にしてまで、取り組むことではないと私は思います。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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