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学校再開、教師が留意したい5つのポイント

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、少しずつ元の生活へ戻りつつある。学校も長い臨時休校が終わり、再開し始めている学校が出ている。学校再開にあたり、学校(教師)の立場から子どもの育ちや学びのためにできることは何だろうか。

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学校再開にあたり教師が留意したいポイントを鈴木邦明氏に聞いた(画像はイメージです)
  • 学校再開にあたり教師が留意したいポイントを鈴木邦明氏に聞いた(画像はイメージです)
 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、少しずつ元の生活へ戻りつつある。学校も長い臨時休校が終わり、再開し始めている学校が出ている。学校再開にあたり、学校(教師)の立場から子どもの育ちや学びのためにできることは何だろうか。

 神奈川県と埼玉県で計22年、小学校教諭として教壇に立ち、クラス担任として豊富な経験があり、現在は大学で教員養成、保育者養成に携わっている鈴木邦明氏に、学校再開にあたって教師が留意したいポイントを聞いた。

授業に向けた取組みは



 こども環境学会の元会長で子どもの育つ環境を研究している仙田満氏は、緊急提言の中で「子どもは密接の中で育つもの。バランスをとることが大事」と述べています。今後の新型コロナウイルスの流行の状況や子どもの人数など、地域によって違っています。それぞれの学校の置かれた環境によって、目の前の子どもの「育ち」と「感染リスクを下げる」という難しい2つのことのバランスをとることが大事でしょう。感染予防のためにすべての子どもにマスクの着用のうえ、フェイスシールドを付けさせるような状況では、正常な学校教育活動を行うには困難を伴います。また、子ども同士の距離を取ることを重視し、教室の定員を10人にするようなやり方も持続可能なやり方ではありません。今の状況における考え方は「白か黒か?」「0か100か?」のようなはっきりと答えの分かれるものではありません。子どもの「育ち」も大事であるし、「感染予防」も大事です。この2つを両立させながら日々の学校教育活動を作り上げていく必要があります

 それぞれの教科によってさまざまなやり方があると思います。具体例として、私が専門にしている「鬼ごっこ」の例をあげたいと思います。通常の鬼ごっこは、ボディタッチなどがあります。鬼ごっこから感染リスクであるボディタッチを減らす方法を考えます。私のお勧めしたいものは「しっぽ取り」です。

 「しっぽ取り」は通常の体育やレクリエーションなどでも取り組んでいるものです。ズボンの後にスズランテープなどで作ったしっぽを付けておき、それを取り合う鬼ごっこです。しっぽ取りであれば、子どもが直接触れる機会を減らしながら、遊びの楽しさや体力向上などのねらいを達成することができます。他の授業においても、その授業のねらいを満たしながら、感染のリスクを減らすには何をしたら良いのかを考えてみると色々とできることが出てきます。

地域差・学校差が大きい中で親との関係を大切にしたい



 今回の新型コロナウイルスの流行による学校の休校、そして再開は、それぞれの自治体、学校によって状況が違っています。地域によって流行に濃淡があったことが子どもの生活に影響を与えました。

 さまざまな違いがある中で、親はSNSなどを使って情報を共有しています。それが学校にとって良く働くこともあれば、悪く働くこともあります。これまで以上に適切な情報発信が求められます。少し前に埼玉県の中学校で学年の便りに「アベノマスクを全員着用すること。忘れた人は別室に残ること」という内容が載っていたということがありました。保護者の投稿をきっかけに、国会でも話題になってしまうほどでした。

 これは、情報発信における丁寧さが欠けた事例でしょう。丁寧に情報発信をしていても保護者から「隣の学校は…、〇〇市は…」というようなことを言われる可能性があります。そういった時はきちんと説明をしていく必要があるのだと思います。現在のその学校、その学級の置かれた状態、そのうえで現在取っている方法の意味などを説明することで、多くの方は納得してくれるのではと思います。先ほども触れたように状況はそれぞれの市区町村、学校によって違います。そういったことをきちんと伝えていくことが、信頼される学校につながっていくでしょう。

 今年度は、例年よりも親との信頼関係作りが重要です。しかしながらその信頼関係を作るのが少し難しい時期でもあります。今回の休校によって、学校と親がきちんと向き合って話をする場ができていません。さまざまな情報は学校から一方向的に親に流されているケースが多かったと思います。特に小学校1年生など新しくその学校に入学した子どもの親は、学校のことをほとんど知らない場合もあります。また、ほとんどのクラスでクラス替えがあり、新しい担任は決まっているのですが、その担任と親がきちんと関わる場もなかなかできていません。

 そういった関係性の薄さに加え、休校の期間、親は通常時よりも多くのストレスを抱えています。外に出ることができず家の中で激しく動き回る子どもに困惑し、勉強を見ていても思うように子どもが理解してくれないことにさらに困惑していたはずです。こういったことを経て、普段、こういった子どもたちを30人も相手をしている先生は「素晴らしい、有り難い」となれば良いですが、そういった人ばかりではないのが現状です。宿題の量や質、オンライン学習への取組み、休校から再開に向けての情報発信についてなど、それぞれの親が不満に感じていることがあります。そういったものを秘めている人もいれば、学校に投げかけてくる(ぶつけてくる)人もいます。そういったものへの対応も含め、親との関わりでは丁寧さが求められるでしょう。

 親と関わる際は「対立」の関係にならないように注意し、初めて経験する危機を共に対応している「仲間」のような関係でいることができれば良いでしょう。実際、学校は今回の新型コロナウイルスの対応では、初めてのことばかりです。手探りで進んでいるのが実情です。それは親も同様です。両者がよく言われる「車の両輪」のように上手に関係性を保ちながら子どもと関わっていくことが大切でしょう。

教師はまず自分自身を守ることを忘れない



 現在、教師がまず守るべきものは「自分」だと私は思っています。色々とがんばってさまざまなことをしたとしても、結果として自分自身が新型コロナウイルスに感染してしまっては、関わる子どもにとって、同僚にとって、家族にとっても苦労を強いることとなってしまいます。もちろん、教師であれ、どんな職種であれ、感染のリスクがあるのですが、そういった中で自分自身をしっかりと守るということはとても大事なことなのだと思います。

 そのためには、これまでの学校現場での働き方のままではうまくいかない部分もあるのだろうと思います。これまでの学校現場は「子どものため…」という考え方で、取り組むべきことが年々増えてきていました。さまざまなメディアで「ブラック」だと取り上げられることも数多くありました。

改めて「学校のあり方」について考えたい



 今回の新型コロナウイルスの流行は、学校のあり方を根本から考えさせられるものでした。新年度になっても学校に子どもが登校できなかったのです。「学校とは?」「教師の役割とは?」「家庭学習の意味は?」「9月入学が良いのでは?」など学校、教育、子どもに関する多くのことが話題に上っていました。

 こういったタイミングで、改めて「教師の役割」「学校がすべきこと」などを考えてみると良いと思います。パンパンに膨れ上がった風船のようになってしまっている学校(教師)のあり方を変えていくチャンスでしょう。そういったことをしないまま、新たに増えた仕事(子どもの感染予防の処置など)をしていってしまっては、何かのきっかけで風船が破裂してしまいます。

 今は学校行事の精選をすることに非常に意味があります。すでに夏休みや冬休みの短縮などを発表している自治体もあります。必要感のある今だからこそ、本当に必要なものは何であり、削るものは何なのかということを職員全員で考えていく必要があるでしょう。

 ただ安易に運動会や遠足などを無くすということに私は少し反対の立場です。今回、休校の間、家庭でオンラインの学習に取り組んだ子どもは多かったです。教育委員会などが作っているホームページなどを学校が推奨して取り組んだケースもありましたが、親が自分の判断でネット上にあるアプリなどを利用して学習していているケースも多かったです。学習関連の会社なども期間限定で有料のものを無料開放しているところもありました。そういった中では、単に暗記をするようなタイプの学習はオンラインでとても効率良く学習できている傾向が強かったです。逆にオンラインでやりにくかったものが「人とのつながり」「体験すること」のようなものです。「運動会」や「遠足」は、そういったオンラインで力を付けにくい力を付けることに適したものです。

ピンチはチャンス



 私は現在、大学で「レクリエーション論」という授業を担当しています。通常は、教師を目指す学生が、教室で実際にさまざまなレクリエーションを体験しながら、レクリエーションの理論や学級経営の方法について理解を深めていく授業です。それが今回は全てオンラインになってしまいました。はじめは頭を抱えてしまいましたが、考え出していくうちにさまざまなアイデアが出てきて面白くなってきています。「非同期(同じ時間に集まっている訳ではない)」の授業でやった「オンライン・ビンゴ」は予想外の面白さでした。

 今のこういった状況だからやることのできる新しい学び方、取り組み方があるのだと思います。今は非常時ですし、特殊な状況です。今までであれば実現できなかったようなことが実現可能であることが多いです。今は子どもにとっても、教師にとっても、親にとっても「ピンチ」なのだと思います。その「ピンチ」をぜひ「チャンス」と捉え、どんどんチャレンジしていくと良いと思います。

 今回、学校再開についていくつかの視点でまとめました。先ほども触れたように今回の状況は日本の学校が初めて経験しているものです。それは子どもにとっても、親にとっても同様です。学校に関わるすべての人が、そういった状況において、より良いものは何であるのかという真剣に考え、共有していくことが大切なのだと思います。そういった1つ1つのことが新しい学校のあり方を作り上げていくのだと思います。第二波、第三波が心配をされています。日本に、世界に、穏やかな日々が戻ってくることを心から願います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
平成7年 東京学芸大学教育学部 小学校教員養成課程理科専修卒業。平成29年 放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で計22年、小学校教諭として勤務。現場教員として子どもたちの指導に従事する傍ら、幼保小連携や実践教育をテーマとする研究論文を多数発表している。こども環境学会、日本子ども学会など、多くの活動にも関わる。平成29年4月からは小田原短期大学特任講師、平成30年4月からは帝京平成大学講師として、子どもの未来を支える小学校教諭、幼稚園教諭、保育士などの育成や指導に携わる。
《鈴木邦明》

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