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オンラインでも感じる学生の反応、出席率向上…レスポンで参加型講義

 コロナ禍によって、全国の大学では前期の講義がオンラインに移行。昭和女子大学グローバルビジネス学部会計ファイナンス学科の非常勤講師、粟国正樹氏(青山綜合会計事務所の代表取締役社長)に「respon -レスポン-」の活用について聞いた。

事例 活用例
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昭和女子大学で教鞭をとる青山綜合会計事務所の代表取締役社長、粟国正樹氏
  • 昭和女子大学で教鞭をとる青山綜合会計事務所の代表取締役社長、粟国正樹氏
  • 昭和女子大学で教鞭をとる青山綜合会計事務所の代表取締役社長、粟国正樹氏
  • 会社の会議室エリアで、常設のスクリーンと、ノートパソコン、iPadを用いて講義を行う粟国氏
  • 9桁の番号を入力してミニテストに40分で回答
  • (左)学生のアプリ画面と(右上)テストの問題と正解、(右下) LIVE画面(提出状況)
 コロナウイルス感染拡大によって、全国の多くの大学では2020年度前期の講義がオンラインに移行し、講師と学生の双方向な講義がオンライン上でいかに可能になるかがさらに模索されている。

 そうした中で、2018年4月より昭和女子大学 グローバルビジネス学部 会計ファイナンス学科の非常勤講師を務める、青山綜合会計事務所の代表取締役社長、粟国正樹(あぐにまさき)氏は、リアルタイムアンケート機能をもつ「respon」(以下、レスポン)を活用したオンラインでの参加型講義を実施している。「レスポン」は、ゲーム開発のノウハウと、教育支援システムの開発ノウハウを融合して生まれたコミュニケーションサービスで、教育現場での活用が広がっている。

 そこで粟国氏に、オンラインでの講義における意図やさまざまな工夫、学生の反応などを聞いた。

ビジネス経験を生かした実践的な講義で興味喚起



--会計ファイナンス学科で講義を担当されるようになった経緯をお聞かせください。

 いくつかの大学で講師をしている知人から、昭和女子大学で新しく会計ファイナンス学科を作るので講師を探しているという話があり、2018年度からお引き受けすることになりました。

 担当しているのは「会計ファイナンスキャリア形成論」で、受講しているのはすべて1年生です。この学科では、会計やファイナンスが世の中のさまざまな仕事に活用できることを学び、可能ならば将来に役立つ会計や金融などの資格を取得することを目的としています。私は、公認会計士の資格をもっていますが、会計やファイナンスがどのように社会で役立つかをお話することで、学生の皆さんが資格を取りたくなるような講義を目指しています。

 大学生のうちに、インターンなども含めてさまざまなことを学んだうえで社会に出るのと、まったく意識せずに社会に出るのとでは、社会人としてのスタート地点が違ってくると思います。受講している学生には、社会に出たときに少しでもアドバンテージを与えたい

 また、会計やファイナンスは、とっつきにくいイメージがある。面白いと感じてもらい、モチベーションを上げ、興味をもって取り組んでもらえるような講義をしたいと考えているのです。

昭和女子大学で教鞭をとる青山綜合会計事務所の代表取締役社長、粟国正樹氏
昭和女子大学で教鞭をとる青山綜合会計事務所の代表取締役社長、粟国正樹氏

--会計ファイナンス学科のカリキュラムを拝見しましたが、かなりの本気度を感じました。

 そうなのです。学科長は、もともと銀行で勤務されていたのですが、そういうビジネス経験がある方が中心となり、いわゆる学問だけというよりは実践的な学科を作ったと感じています。

--今年の前期はコロナ禍によって講義がオンラインに移行したそうですが、どのように講義されていましたか。

インタクラティブな講義を目指しレスポンを活用



 講義では大学全体でZoomを利用していました。学生は大学の方針でデータ量への配慮から顔は出さず、基本的に音声をミュートにした状態で受講する形式です。またインタクラティブな講義をするためにリアルタイムアンケートサービスの「レスポン」を使用しました。

 学生には、「パワーポイントを共有しながら講義をするので、できればタブレットかPCで見てください。レスポンを使うためスマホも併用するとより良いです」と話しておきました。3分の2の人がPCとスマホを併用して授業に参加し、あとはスマホでZoomとレスポンを切り替えながらの参加だったようです。私は、会社の会議室エリアで、常設のスクリーンと、ノートパソコン、iPadを用いて講義を行いました。

 基本的に、対面での講義とオンラインでの講義のやり方は、ほとんど変わりませんし、オンライン授業として何か特別なことをしたわけではありません。対面では常にパワーポイントを大型モニターに投影して学生に見せていますが、オンラインではそれが学生各自のモニター上になるだけで、コンテンツは同じです。

会社の会議室エリアで、常設のスクリーンと、ノートパソコン、iPadを用いて講義を行う粟国氏
会社の会議室エリアで、常設のスクリーンと、ノートパソコン、iPadを用いて講義を行う粟国氏

--レスポンを講義に導入した理由と活用方法を教えてください。

 3年前からレスポンを利用していますが、それはできるだけ紙での採点を省きたい、集計もエクセルに落として行いたいと考えたことがきっかけでした。空いている時間に、パソコンを開けば作業ができるような形にしたかったのです。

 また、会計という科目はとっつきにくいものでもあるので、できるだけ学生の集中力がもつようにしたかった。1年生は講義が詰まっていることもあって、当初の金曜の5限目では、疲れて寝てしまう学生もいました(笑)。

 昨年と今年は金曜の1限目に授業が設定されていましたが、朝イチなのでそれはそれでまた眠さの残る時間で(笑)。結局、普段からインタラクティブに講義を進めないとならないし、オンラインではさらに問いかけをして“レスポンス”を受けるようにしないと学生の集中力は保てないのです。

 特に今年はオンラインということもあり問いの回数を増やすよう意識し、毎回レスポンを使って、さまざまなことを学生に聞いてきました。毎回およそ10問近くは使っていますね。細かくリアクションを聞きながら進行できて、10分に1回程度は聞いているので、飽きさせないことにもつながっていると思います。

 また講義中にミニテストの回も設けました。学生はスマホでレスポンにアクセスして、9桁の受付番号を入力してミニテストに40分で回答していきます。1つの番号には10問あって、それを5つ設定しました。そこに記述式を1問加えて計51問になっています。

9桁の番号を入力してミニテストに40分で回答
9桁の番号を入力してミニテストに40分で回答

 ミニテストでは講義で話したこと、レスポンで一度聞いたことをもう一度聞いたり、少し角度を変えて聞いたり、あるいはレスポンでは聞いていないけれども講義で話したことを確かめるようにしました。すべて選択式の問題です。講義中に話を聞いていればできる内容ですし、前のテキストは随時アップしていましたので、それを見ながらであれば解けるテストです。

 たとえば、私自身の経験や講義の目的を話したうえで、「どういう理由で会計士の勉強をはじめたと言ったか」とか、「本講義の目的として説明していないものはどれか」という問いを出しました。もちろん「決算書とは」や「簿記に関する本を1番最初に書いたのは誰ですか」などの簿記的な問いも出しました。

(左)学生のアプリ画面と(右上)テストの問題と正解、(右下) LIVE画面(提出状況)
(左)学生のアプリ画面と(右上)テストの問題と正解、(右下) LIVE画面(提出状況)


相互評価によるアクティブラーニング型授業を実現



--シラバスには「プレゼンテーションと講評」とありましたが、オンラインでどのように行ったのでしょうか。

 これまでの講義を踏まえて、将来、会計・ファイナンスの学問や知識を使って実現したいビジネスキャリアについてグループでプレゼンテーションしてもらっています。今回は61人の学生がいますので、1組だけは5人で、あとは4人1組で15グループに分けました。

 1人1枚、つまりグループで4ないし5枚の資料を作成し、オンラインで共有しながら、プレゼンテーションをひとりひとりに行ってもらいます。レスポンでは、リアルタイムに各学生のプレゼンを全員が4段階で評価し、送ってもらうようにしました。プレゼンをずっと聞いていないと評価できない仕組みです。

--ほかに講義で利用されているレスポンの機能はありますか。

 アンケート結果をリアルタイムにグラフ化して表示できる「LIVE画面」を利用しています。今年は特に、入学式に会っただけで学生がお互いのことをあまり知らないため、たとえば、親御さんの職業はなんですかといったアンケートをとって円グラフにしたり、週に何回、何冊の本を読みますかといったものをその場で見せたりしました。

 学生は画面に向かってひとりで受講していますが、同じ講義を受けている仲間が何を思ったのか、その中で自分が多数派なのか少数派なのかなど、リアルタイムで回答のグラフが動くので、講義に参加している実感が得られたのではないかと思います。

レスポンの回答率を参加の指標として評価



--レスポンでの回答はどのように評価に反映されたのでしょうか。

 講義中にレスポンで回答を求めた回数およそ70問程度を分母に、何回きちんと回答したかを分子にし、それを参加の指標にして全体の評価の25%にしました。そしてミニテストが25%、さらにプレゼンテーションが50%という構成になっています。レスポンでの回答率を評価に含めたことで、学生が答える頻度も高くなり、非常に効果的だったと思います。

--オンラインと、従来の教室での講義で、学生の意識や授業態度に違いはありましたか。

 評価軸を変えた部分はありません。ただ、オンライン講義の出席率が非常に高かったです。従来の教室の講義では、休む学生がいて差がつきますが、オンラインでは家にいてデバイスを立ち上げればよいためか、レスポンでの回答数も非常に多く、ほとんどがA評価になってあまり差がつきませんでした。そこは少し評価軸を変えたほうが良かったかもしれません。

 プレゼンテーションの評価は、プレゼンの上手下手で評価するレベルではなく、やったかやらないか、期限どおり提出したかどうかで点数に差がつくところですが、今回は、全員がやってきて、ほとんどの学生が条件を満たしていました。オンラインでは、従来よりも総じて出席率が高まった傾向にあるといえますね。

--シラバスには、講義のキーワードとして「前向き、前のめり、前倒し」とありました。これはご自身のモットーなのでしょうか。

 弊社の新入社員研修でも言っていることなのですが、仕事をするうえで気を付けていることは何かと考えたときに、私の弱点は常に「ギリギリ」ということなのです。そのことで私自身が何十年も苦しんできたので、とにかく「前倒し」でやらないとダメだということを私の授業を受講している学生には伝えたいと考えました。

 あとは、とにかくめげずにやろうということをずっと考えてきましたので、それが「前向き」ですね。さらに、たとえば「この仕事、誰かやってくれない」と言った際に「はいっ」という「前のめり」な姿勢の人の評価は高くなりますよね。それで、「前向き、前のめり、前倒し」のこの3つを“3(さん)前”としてキーワードにあげました。

学生にもレスポンは好評価



--レスポンに対する学生の反響はいかがでしょうか。

 大学では、各講義を学生に評価してもらっています。評価には自由記述の欄がありますが、レスポンに関する記載が多くありました。「レスポンは面白かった」「寝なくてすんだ」「毎回全部回答しようとした」など。レスポンについて書いていた学生が61人中30人もいて、ポジティブな意見ばかりでした。

--レスポンに対する粟国先生の感想を教えてください。

オンラインでも学生の反応を感じられるメリット



 集計が楽なところが大きなメリットですね。また、自由記述も全部デジタルで見ることができますし、キーワード検索もできる。学生が楽しんでやっているようすが見られますので、そこは大きなプラスポイントだと思っています。

 講師としては、回答結果のグラフがリアルタイムに変化していくと、オンラインのモニター越しでも学生の存在を感じることができます。やはり表情が見えない中で反応があるというのは、話している側からすると重要な要素です。レスポンでの回答があるだけでも気分が違うので、一方的に喋るよりもときどき反応を見たくなりますね。

--ありがとうございました。

 粟国先生の話からは、オンラインに移行するから慌てて何かを変えるということよりも、コロナ禍以前の講義から常に学生のことを見つめ、また多忙なご自身の効率化も見据えながら課題を見出し、それを解決するためのツールとしてレスポンを選択・活用していたことが伺えた。

 オンラインの講義のなかで先生が実現させた参加型講義は、学生の参加と集中を促すことにつながった。さらに、プレゼンテーションではレスポンの特長を生かし、相互評価によるアクティブラーニング型授業を実現した。こうしたさまざまな工夫は、一方的になりがちな講義形態の変革を望む教員たちの参考になるのではないだろうか。

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《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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