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茨城大、遠隔授業で学生の理解度向上…9割以上の教員「今後も活用」

 茨城大学は2020年8月7日、遠隔授業に関するアンケートの結果を公表した。遠隔授業による学修は学生の76.1%が肯定。授業の理解度や満足度は前年度の対面授業より向上した。教員は、遠隔授業向けに6割が授業方法を見直し、9割以上が「今後も活用したい」と評価した。

事例 ICT活用
遠隔授業において十分な学修ができたか(学部別、学生アンケート)
  • 遠隔授業において十分な学修ができたか(学部別、学生アンケート)
  • 授業の内容を理解できたか(学生アンケート)
  • 授業に全体として満足したか(学生アンケート)
  • 全体を通して、1回の授業についてどの程度予習・復習をしたか(学生アンケート)
  • 授業で用いた手法(教員向けアンケート)
  • 学生との双方向はどのように確保したか
  • 教材については通常時と比べどのように対応したか
  • 遠隔授業の実施にあたり大学からの支援は十分だったか
 茨城大学は2020年8月7日、遠隔授業に関するアンケートの結果を公表した。遠隔授業による学修は学生の76.1%が肯定。授業の理解度や満足度は前年度の対面授業より向上した。教員は、遠隔授業向けに6割が授業方法を見直し、9割以上が「今後も活用したい」と評価した。

 茨城大学では、新型コロナウイルス感染症対策として、4月30日~8月12日の前学期は原則として全授業をオンラインによる遠隔授業としている。今回、6月19日に第1クォーターの授業が終了したことに伴い、学生と教員を対象にそれぞれアンケート調査を実施した。

 学生アンケートの回答者は、2020年度第1クォーターの授業を受講した全学部の学生。回答数は6,301。調査期間は6月4日~26日。教員向けアンケートの回答者は、学部生向けの授業を担当している教員(非常勤教員を含む)647人。有効回答数は337。調査期間は7月1日~10日。

 学生アンケートでは、「遠隔授業において十分な学修ができたか」という質問に対し、76.1%が「そう思う」「概ねそう思う」と肯定的に回答。「どちらともいえない」も含めると、全体の9割を超えた。

 授業の理解度・満足度については、対面授業で実施した2019年度の第1クォーターの結果より、いずれも平均値が上昇。1回の授業における予習・復習の時間(授業以外の学修)は、2019年度58分に対し、2020年度は69分と、1.2倍に増えた。

 自由記述からは、「質問しやすくなった/しにくくなった」「教員を近く感じた/遠く感じた」「集中できてよかった/だらけてしまう」と意見が二分。遠隔授業に向いている学生と向かない学生に分かれている傾向が見て取れる結果となった。また、「早く大学へ行きたい」「友人に会いたい」など、切実な思いも吐露されている。

 一方、教員向けアンケート結果によると、授業手法は多くの教員が「音声ライブ配信」と回答。茨城大学では、Microsoft社と法人契約し、同社提供のTeamsを利用して遠隔授業を実施。Teamsではカメラを用いたライブ動画・双方向の授業も可能だが、実際には多くの教員が音声のライブ配信による授業を行っていた。

 学生との双方向性の確保については、「音声でリアルタイムでのやりとり」が最多、ついで「会議チャット(会議内のチャットで全員に見える)でのやりとり」が多かった。茨城大学ではインターネットや学内サーバへの負荷を抑制するため、通信料が大きくなるライブ動画での双方のやりとりを極力控えることを推奨しており、多くの教員や学生が趣旨を理解し、適切に対応していたことがわかる結果となった。

 レジュメやスライドなど教材の対応では、約6割の教員が「遠隔授業向けに大部分を作り直した」と回答。遠隔授業の実施に向けた大学の支援については、「十分だった」「概ね十分だった」をあわせて6割が評価した一方、「あまり十分ではなかった」「十分ではなかった」という回答も14%あった。理由は、「自宅の回線を使用する、必要な機材を購入するなどの自己負担が大きい」など、在宅などでの授業にあたって必要な機材・環境整備に経済的支援がなかったことへの不満が多かった。

 「今後も遠隔授業で得た技術や使用したツールを活用したいと思うか」という質問には、「積極的に活用したい」44%、「必要に応じて活用してもよい」48%と、活用を望む声が9割を超えた。自由記述では、遠隔授業の実施をきっかけとして「自らの授業スタイルを見直したい」「これからもオンライン授業を組み込んでいきたい」という意見があった一方、遠隔授業の表面的な効果のみが評価され、大学教育におけるオンラインへの依存度が今後増していくことを警鐘する意見も少なからずあったという。
《奥山直美》

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