学習者用端末が“ある”ことが当たり前になった今、タブレットを「より授業にフィットさせる」ための工夫や改善が求められている。NEXT GIGA(GIGAスクール構想 第2期)では、端末を“どう活用するか”が焦点となり、学習における操作性の向上は避けて通れないテーマだ。
こうした現場の課題を解決するアイテムとして登場したのが、オーストラリア発のPCアクセサリーブランド「STM(エスティーエム)」のトラックパッド搭載キーボードケースだ。iPadをPCのように使える環境を整え、学習のテンポを損なわない。トラックパッドモデルの特徴と教育現場にもたらす価値について、日本販売代理店であるアーキサイト 製品企画部 プロダクトマネージャーの添田絢也氏に聞いた。
なぜ今トラックパッドか、GIGAで高まる操作性ニーズ
--NEXT GIGAの動きの中で、トラックパッドモデルを投入された理由を教えてください。
大きな理由のひとつに、OSの進化があります。iPadOS 26が登場してから操作性が大きく変わり、MacBookのような使い方ができるようになってきました。STMはこれまでも、海外市場ではトラックパッド付きのキーボードケースを展開していましたが、日本のGIGAスクール市場ではトラックパッドをあえて搭載せず、キーボード機能に特化したモデルを提供してきました。
しかし、現場での活用が進むにつれて、現場の先生方や自治体の担当者から「トラックパッドが欲しい」という声が徐々に増えてきました。特に、iPadを閲覧中心ではなく、資料作成や調べ学習、アウトプットの作業にも活用する場面が広がったことで、よりPCに近い操作環境が求められるようになったのだと感じています。
iPadをPCライクに
--新しく発売されたトラックパッドモデルはどのような製品ですか。
2026年2月17日に発売した新モデル「STM Dux guard キーボード一体型ケース USB-C トラックパッドモデル(iPad A16/第10世代iPad用)日本語配列(以下、 STM Dux guard トラックパッドモデル)」は、従来モデルの基本構造を生かしつつ、日本のGIGAスクールの利用環境に合わせて最適化した製品です。
日本での製品展開にあわせて採用したゴムリング付きのペンホルダーをはじめ、ケース一体型のUSB-C有線接続、JIS規格の日本語キーボード(かな印字あり)、180度まで自由に開く無段階調整構造のスタンド、スクリーンキーボードモードへの自動切替、キーキャップが外れないSTM独自の「KeyKeep(キーキープ)」構造といった、従来モデルで評価いただいていたポイントはそのまま継承しています。そのうえで、新モデルではトラックパッドを新たに搭載し、より実用的な操作性を追求しました。

トラックパッドは、指の動きの追従性に特にこだわりました。単に動けば良いのではなく、“違和感なく使えるかどうか”という点にこだわって設計しています。実際に触っていただくと、指の動きにスムーズに反応し、細かな操作もストレスなく行えることがわかると思います。素材の質感についても、滑りすぎず、かといって引っかかりもない、心地良いバランスを追求しました。
また、本モデルは18種類のジェスチャー操作に対応しており、2本指でのスクロール、ピンチによるズーム、3本指でのアプリ切替えといった操作をトラックパッド上で行うことができます。これらのジェスチャーはMacBookと同じ感覚で使えるよう設計しているため、iPadでもPCに近い操作性を実現しています。
--教育現場では、どのような操作が活用されそうですか。
わかりやすい例として、スプレッドシートの操作があります。セルの移動や範囲選択、スクロールといった動作を、画面に触れず手元だけで連続して行えるため、学習の効率が大きく向上します。また、調べ学習をしながら資料をまとめるような場面でも、3本指のジェスチャーによるアプリの切替えや、スプリットビューで並べた画面の行き来が直感的に行えるため、作業の流れを止めずに学習を進められます。
さらに、タッチ操作やペン入力との使い分けも重要です。細かな書き込みや直感的な操作はタッチやペンで、アプリの切替えやファイルのドラッグ&ドロップはトラックパッドで行うなど、用途に応じて使い分けることで、それぞれの強みを最大限に生かすことができます。児童生徒はスマートフォンでジェスチャー操作に慣れているため、トラックパッドにも比較的スムーズに対応できると考えています。
そして、キーボードとトラックパッドの組合せは、将来的にPCを使う際の基本操作につながるという意味でも大きな意義があります。iPadを入口として、そのあとにMacBookやWindows PCへ移行した場合でも、違和感なく使えるような操作感を意識して設計しています。
安全性・耐久性・コストのバランスを追求した新モデル
--日本向けにSTM Dux guardトラックパッドモデルを開発するにあたり、重視した点やこだわったポイントを教えてください。
日本向けの開発でまず重視したのは、コストとのバランスです。海外で高い評価を得ているSTMのトラックパッドの品質は維持しつつ、“どこでコストを抑え、どこで価値を出すか”を徹底的に検討しました。
その検討の中で行った改良のひとつが、素材の見直しです。従来はPU(ポリウレタン)レザーを使用していましたが、今回はABS樹脂、いわゆるプラスチックに変更しました。これによりコストを抑えながら、耐久性や剛性といったABS樹脂ならではの強みを引き出すことができました。単なるコストダウンではなく、素材特性を生かし、アップデートしています。
素材をABS樹脂にしたことで、防水性も強化することができました。もともと本体内部に液体が入りづらい設計にはなっていましたが、今回は新たに排水構造を設け、万が一液体が侵入した場合でも、内部に溜まらず外に排出される仕組みになっています。

また、現場から寄せられた声を受け、従来モデルにあったマグネットで留まるフラップの仕様を見直しました。狭い机で作業する際に”邪魔になる”という声が寄せられていたからです。机の上のように限られたスペースでは、少しの出っ張りでも使い勝手に影響します。そこで今回はフラップをなくし、四隅をマグネットで固定する仕様に変更しました。実際の教室環境を踏まえて細部まで改善を重ねる姿勢は、STMの製品づくりの特徴でもあり、今回の日本向けモデルでもその考えを徹底しています。

こうした“現場で起こりうること”を前提にした設計や、リスクを最小限に抑える工夫は、STMが大切にしているポイントです。今回の日本向けモデルでも、一般向けの製品をそのまま流用するのではなく、日本の教室環境や運用実態に合わせて細かく調整を加えています。コスト、耐久性、使い勝手、安全性といった要素のバランスを丁寧に取りながら、実際に現場で安心して使える製品に仕上げています。
毎日使うからこそ必要な、確かな安全性と耐久性
--細かな部分にまでこだわる姿勢がSTMの魅力ですね。安全性や耐久性においては、どのように取り組まれていますか。
教育現場において安全に使えるかどうかは、もっとも重要なポイントのひとつだと考えています。GIGAスクール構想が進む中で、端末や周辺機器は毎日使われるようになりました。小さな異常でも大きなリスクにつながる可能性があるため、STMは“異常が起きないこと”はもちろん、万が一“異常が起きたときにどう制御するか”まで考慮しています。
電気的な安全性については、MOSFET(モスフェット)を搭載しています。これは異常な電流や発熱を検知した際に、電流を遮断する役割をもつもので、過電流が発生した場合でも、動作を停止し、それ以上の発熱や発火、発煙のリスクを防ぐ仕組みです。また、落下や日常的な持ち運び、頻繁な開閉といった学校で想定される使用シーンにも耐えられるよう、耐久面でも妥協していません。
--リスクを未然に防ぐための仕組みや、高い耐久性が備わっている点は心強いですね。
STMの教育市場向け製品は2024年11月より日本で展開していますが、すでに約28万9,000台以上を導入いただき、不具合の報告は現状で0.2%以下と非常に少ない数に収まっています。製造工程や品質管理の徹底により、継続的に利用しても安心して使っていただける製品です。
日本国内では、販売代理店であるアーキサイトがサポート体制を整えており、GIGAスクールで一般的な5年間の運用を見据え、交換対応や在庫確保、専用窓口の設置など、導入後のフォローも万全にしています。製品だけでなく、運用面でも安心感を提供できるよう体制を整えています。
STMのものづくりへのこだわりをEDIXで体験
--2026年5月に開催されるEDIX東京に初めて出展されると伺いました。どのような点を見てほしいですか。
まずはトラックパッドの操作性を、実際に触れて体験してほしいと思っています。追従性やジェスチャー操作の自然さは、文章ではどうしても伝えきれません。会場にはデモ機をご用意しますので、カーソルの動き、スクロールの滑らかさ、ジェスチャー操作の精度などを自由に試していただきたいです。実際に使った方からは「思っていたよりも使いやすい」という反応を多くいただいていますので、実際に触れていただき、良さを実感してほしいと思います。

また、EDIXではSTMというブランドそのものを知っていただく絶好の機会でもあります。1998年にオーストラリアで創業したSTMは、ノートPCを保護するバックパックやケースから始まったブランドです。“プロテクション(保護)”を軸にしたものづくりは、現在の教育現場で求められる価値と親和性が高いと考えています。日本国内ではまだ認知が高くありませんが、Apple公式パートナーとして多くの実績を積み重ねてきました。EDIXでは、そうした背景や思想も含めてお伝えできればと思っています。
さらに今回は、STMメンバーも来日し、ブースで直接来場者の皆さまとお話しする予定です。COOのウェイン・ファルクナーをはじめ、共同創設者でプロダクトデザインを担当するアディーナ・ジェイコブスも会場に立ちます。製品の背景やデザイン哲学を直接聞ける機会はなかなかありませんし、グローバルブランドでありながら日本の現場にしっかり向きあう姿勢を感じていただけると思います。そういった“顔が見える安心感”が、今回のEDIXで伝わると嬉しいですね。
--最後に、来場者へのメッセージをお願いします。
STMはまだ日本ではなじみの薄いブランドかもしれませんが、海外で培ってきた品質や設計思想には強い自信があります。ぜひEDIXの会場で製品に触れ、STMの“使いやすさ”と“安心感”へのこだわりを体験していただきたいです。不安や疑問があれば、現場にいるスタッフに気軽に声をかけてください。
STM Dux guard トラックパッドモデルにより、iPadは単なるタブレットから、より高度な学習を支える“PCライクな端末”へと進化しつつある。学習の生産性を高める操作性に加え、安全性や耐久性、サポート体制まで含めて設計を突き詰めている点は、NEXT GIGAで求められる視点そのものだ。日本市場の声を丁寧に反映した細かな改善からも、STMの真摯な姿勢が感じられる。GIGAスクール構想が次のステージへと進む今、EDIXの会場で実機に触れ、このモデルがもたらす学びの可能性をぜひ確かめてほしい。











