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東京大学、2学部新設構想を公表…ディープテック分野で学生ニーズに対応

 東京大学は2025年10月14日、現在計画構想中の2つの新学部について、パブリックコメントの募集を開始した。計画中の新学部は、人工知能(AI)や宇宙開発といった社会課題を解決する可能性を持つ分野での人材育成を目指す「ディープテック学部」と「コンピューティング学部…

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東京大学大学院工学系研究科・東京大学工学部
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 東京大学は2025年10月14日、現在計画構想中の2つの新学部について、パブリックコメントの募集を開始した。計画中の新学部は、人工知能(AI)や宇宙開発、量子コンピュータといった地球規模の社会課題を解決する可能性を持つ分野での人材育成を目指す「ディープテック学部」と「コンピューティング学部」。学生の多様な関心や進路志向に柔軟に対応し、教育体制そのものを再設計する取組みであり、文部科学省が進める「国際卓越研究大学制度」の第2期公募に連動する改革構想の一環とされている。

 東京大学の公表に先立ち発表された新聞報道によると、構想中の新学部は、AI、ロボティクス、宇宙などを包括する先端技術分野を扱う「ディープテック学部」と、コンピュータ科学を専門とする「コンピューティング学部」の2つ。定員は約400人で、既存の工学部などの定員を減らして対応することで、大学全体の定員は変更しない計画。授業は英語を基本とし、世界的な研究者や実務家を招いて国際的に開かれた教育を展開し、起業家教育にも力をいれる。学生が最新の科学技術や産業潮流に触れながら学びを深め、世界をリードする新興企業の創出につなげる狙いがあるという。

 この計画は、文部科学省が推進する国際卓越研究大学制度の第2期公募にあわせて進められている。同制度は、政府が拠出する大学ファンドを通じて、世界トップレベルの研究・教育拠点形成を後押しするものであり、認定を受ければ研究基盤整備や新学部設立に向けた財政的支援が得られる見通しとなる。第2期公募には東京大学をはじめ、京都大学や大阪大学、筑波大学など計8大学が申請中。冬ごろにかけて段階的に審査を行い、2025年度中には認定校を決定、助成を開始する予定となっている。

 東京大学は工学部・大学院工学系研究科においてすでにディープテック領域に特化したアントレプレナーシップ教育講座を展開しており、2025年で開講から5年目を迎える。「アントレプレナーシップ教育デザイン寄附講座」では、大学発技術の社会実装を行う、いわゆるディープテック起業に特化した東大初の講義として、経営共創基盤、KDDI、東京大学協創プラットフォーム開発、松尾研究所の4社をはじめとする企業のサポートのもと、宇宙、ロボティクス、量子コンピュータ、素材、環境エネルギー、バイオといった領域での起業を後押ししている。これらの教育基盤を踏まえ、新学部では学部段階からより実践的な人材育成を進める構想が敷かれている。

 なお、東京大学では、新学部について「学生のニーズを中心に据えた教育システムの導入」であることを掲げている。従来、学科や研究室ごとに定員が設定され、3年次に特定学科へ所属、4年次に研究室配属される形式を採用してきたが、希望する分野で学べない場合や、興味の変化に応じた進路転換が難しいという課題があった。これに対し、新たに構想されている2学部では、学生の希望に応じて学科や研究室の定員や規模を柔軟に調整し、自らの関心にあわせて専門分野を学び、希望する研究室に自由に所属できる仕組みを導入する。DX化の推進と大学が有する豊富な教育リソースを活用し、まずは学生の関心が高い「コンピュータ科学」や「テック系企業教育」の領域から運用を開始するべく、新設2学部での導入を計画している。

 東京大学では現在、この構想についてWebサイト上でパブリックコメントを募集しており、社会や学内外からの意見を今後の検討に生かす方針を示している。今後、認定の可否や設置時期、カリキュラム設計など、大学側からの正式発表が注目される。

【大学受験】東京大学、2学部新設構想を公表…ディープテック分野で学生ニーズに対応

《畑山望》

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