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【先生の事情とホンネ】先生になったばかりの皆さんへ

 教育現場で日々奮闘されている先生へ。リシードは、現役の小学校教諭である松下隼司氏による連載「先生の事情とホンネ」を毎月掲載している。第3回のテーマは「先生になったばかりの皆さんへ」。

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【先生の事情とホンネ】先生になったばかりの皆さんへ(画像はイメージ)
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 教育現場で日々奮闘されている先生へ。リシードは、現役の小学校教諭である松下隼司氏による連載「先生の事情とホンネ」を毎月掲載している。

 文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞した経験をもち、教育書の執筆も手掛ける松下隼司教諭が、日々どのようなことを考えて子供たちと向き合っているのか。授業や教室運営の工夫を紹介するほか、未来を担う子供たちの教育に携わる「教員」という仕事の魅力も発信していく。

 第3回のテーマは「先生になったばかりの皆さんへ」。新任の先生に向けて、学校の先生という仕事の魅力を伝える。

新任の先生へ

 1学期スタートして約1か月が過ぎました。

 この春、学校の先生になられたばかりの方、本当~~~~~~~に、お疲れ様でした~~~~~~~~~~!!!

 若手に限らず、ベテランにとっても「4月は、死ぬほど忙しい」です。それは、新年度準備期間が、1週間程度しかないからです(ちなみに、アメリカの小学校は9月頃スタートで、その前に2か月ほどの夏休みがあり、しっかりと準備できる期間があります)。

 4月は、「何がわからないかが、わからない」だらけの毎日だったと思います。わからないことだけでなく、上手くいかないこと、落ち込むことも多かったかと思います。

 私は小学校教師23年目ですが、まだまだわからないことや上手くいかずに落ち込むことばかりです。でも、学校の先生になって良かったこともたくさん経験してきました。

 今回は、“学校の先生の魅力”をお伝えします。

子供たちの“優しさ”に毎日、触れられる

 私は今年度、小学4年生を担任しています。

 給食の時間に、とても驚くことがありました。校内放送を聞いた子供たちから、拍手が起こったのです。

 私の勤務校では、4年生から委員会活動が始まります。放送委員や給食委員になった子供が、給食の時間に校内放送をします。

 放送委員の子にとって、緊張とやる気いっぱいの校内放送デビューでした。きっと1~3年生までは、「4年生になったら、自分も委員会で校内放送をやりたい!」と憧れてきたのだと思います。

 そして、給食の時間。放送室で話す友達の頑張りに、教室で拍手を送る子供たちの感性に驚き、感動しました。子供たちの優しさに毎日、触れられる“教師の仕事の魅力”を改めて感じました。

 放送が終わってその子が教室に戻ってきたときにも、子供たちから自然と拍手が起こりました。また感動してウルっとしてしまいました(涙)。 

 しかも、拍手は校内放送デビューの日だけではなく、毎日でした。
「〇〇さんが話すよ。静かにしよ」
「もっと、スピーカーの音量を上げて」
「めっちゃ上手い!」
と、友達の頑張りに関心をもち、認め続けるのです。

 このクラスを担任して間もない私は正直、スピーカーから聞こえる放送の声を聞いただけでは、まだ誰の声かわかりません。でも、1年生のときから一緒に過ごしている子供たちは、誰の声かすぐにわかります。子供同士のつながりに感動し、私もこの1年間でもっともっと子供たちのことを知っていこうと思いました。

子供たちの“面白さ”に毎日、触れられる 

 子供って本当に面白いです! 大人にとっては他愛もないようなことでも、子供にしたら一大事です。

 朝、登校してきたら、ランドセルを背負ったまま私のところに来て、
「先生、家で飼ってるネコ、今日、去勢するねん…」
「先生、今日、連絡帳の確認ハンコ、『ちいかわ』にして~」
「先生、今日、休み時間、一緒にドッジボールできる?」
などと、たくさん話しに来てくれます。

 こんな楽しい会話の毎日だからこそ、子供たちが学校に来ない夏休みになると、さみしく思います。大人だけの職員室と子供のいない教室で仕事をする日が続くと、「早く、子供たちに会いたい」とふと思います。 

 休み時間、私のところに来て、
「先生、顔のほうれい線が消える薬、教えてあげよっか? お母さんが使ってるから」
と心配して話しに来てくれる子どもがいます(笑)。

 また、私は髪の毛が短いのですが、
「先生の頭、私の家の犬に手触りが似てる~」
と言って、休み時間になると、私の頭を撫でに来る子供がいます(笑)。

 給食のおかわりジャンケン(大好きな唐揚げ)で、負けたら受験に落ちたような表情で落ち込むような子供もいます(笑)。こっそり後出しをして勝っているにも関わらず(私が気付いていることも知らず)、大喜びの子供もいます(笑)。

 子供たちにイライラして厳しく叱ってしまうこともありますが、こんなに毎日、笑って、感動できる教師の仕事って良いな~と感じます。

子供たちの“成長”を感じられる 

 子供は1年間で、心身ともに大きく成長します。

 4年生だったら、1年間で100個以上の新しい漢字を読み書きできるようになったり、わり算の筆算をできるようになったり、都道府県の場所と覚えて名前を書けるようになったりします。跳び箱の台上前転や、鉄棒で逆上がりをできるようになったり、タイピングを私以上に速く打てるようになったりする子供もいます。

 6年間で、背もぐんと伸びます。先生に身長が追いつき、追い越す子供もいます。

 日々の授業や行事、係活動、委員会活動やクラブ活動を通して、大人のように論理的に考えたり、話し合ったり、堂々と人前で話したりできるようになります。

 入学当時は大きすぎるランドセルが、卒業時には小さく感じられるようになります。 

 寝ている時間を除くと、我が子よりも学校の子供たちと過ごす時間の方が長いです。我が子に接するように、学校の子供に対して厳しく接してしまうことがあります。我が子の成長と同じように、学校の子供たちの成長に感動します。

 先進諸国と比べると、日本の学校教員の労働環境は過酷です。仕事量も多いです。でも、毎年、学級に1人は「学校の先生になりたい」という夢をもつ子供がいます。教師として、毎日、反省することばかりですが、救われた気持ちになります。

 SNSやテレビや新聞は、教師の仕事に対して、ネガティブな情報が多いです。私はしんどいとき、そんな情報ばかりに関心が傾いてしまいます。でも、実際に学校で子供たちに会うと、「教師の仕事って良いな~」と強く感じることが、年々増えています。

 新任の先生で今、しんどい思いをされている方にとって、この記事が少しでも心が軽くなったり、明るくなったりしてもらえたら幸いです。

《松下隼司》

松下隼司

大阪市公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。教科書編集委員。絵本「せんせいって」「ぼく、わたしのトリセツ」、教育書「教師のしくじり大全」「むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営」などを執筆。小劇場を中心に10年間、演劇活動を行う。Voicyパーソナリティー。

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