学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第224回のテーマは「担任を変えてほしい」。
教科担任制が有効
新年度が始まりました。しばらくすると学校に「担任を変えてほしい」という申し出が入ることがあります。こういった声が1つでも学校(教員)の耳に入るようであれば、潜在的にもっとたくさんいると考えた方が良いでしょう。
保護者からの「担任を変えてほしい」という申し出に対して「はい、わかりました」と学校(管理職)が答えることはもちろんできません。そういったことをしてしまうと「言った者勝ち」のようになってしまいます。学校は、限られた人員で日々の学校教育活動を行っています。
こういったテーマにおいて小学校での有効な方策は「教科担任制」でしょう。学校にとって、メリットが多いです。年度のはじめから取り組むことが望ましいですが、年度の途中から取り組むこともできます。コロナ禍以降、学校の仕組みが色々と変わっている中で、教科担任制を取り入れる学校も増えている印象です。保護者からの「担任交代」の申し出に対して、その方策の1つとして取り組むことは良いやり方でしょう。
教科担任制のメリット
教科担任制を取り入れることで、教員個人にとってのメリットは「やりやすい教科と教えることができる」「準備の時間を減らすことができる」などがあります。小学校の教員はすべての教科を教えるのが基本です。そのための学びを大学でもしています。ただ、それぞれの人には得意・不得意があります。私の場合、体育、理科、社会などは教えやすかったですが、逆に音楽、図工などは少し教えにくかったです。高学年を担任し、音楽専科が音楽を担当してくれた時はありがたかったです。また、同じ授業を複数回取り組むことができるため、準備の時間を減らすことにもつながります。
学校全体としてのメリットは「学年をチーム体制にできる」「不適切な指導を減らすことができる」などです。小学校では良くも悪くも「自分の学級が一番」と考えている教員がいます。教科担任制にすることで、学年として1つとなることが増えてきます。教員が他のクラスの子供と関わる機会も増えます。また、少し違った視点では、教員の不適切な指導を減らすことにつながると私は考えています。学級内における不適切な指導(体罰やパワハラのようなもの)は、閉鎖的な状況で起こりやすくなります。学年内で教員が入れ替わったり、子供が入れ替わったりすることで、閉鎖的な状況ではなくなります。教員の不適切な行動が起こりにくくなりますし、起こったとしてもそのことが周りへ伝わりやすくなります。
子供や親にとってのメリットは「相談できる先生が増えること」などです。小学校は1人の学級担任が学校にいるすべての時間に関わるという特徴があります。長い時間を共に過ごしているというメリットもあるのですが、デメリットもあります。その教員と合わないと感じる子供もいます。教科担任制にすることで、中学校のように1人の子供に関わる教員の数が増えます。複数の教員が日常的に関わることで、悩みなどを相談しやすい教員と出会う可能性も高まります。担任とうまくいっていないことなどを他の先生と相談するということもしやすくなります。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
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