2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト「数学I・A、数学II・B・C」の問題について、テスト作成ツール「Dr.okke」を提供するokkeによる塾向け講評を紹介する。
数学I・A
講評
全体の構成は、文科省が公開している「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」に沿っており、整数問題が削られた全4問で、すべて必答問題でした。新課程になり追加されたテーマは全て出題されていた点は特筆すべきでしょう。
問題形式としては昨年までの共通テストを踏襲し、日常の事象(噴水、くじ、...etc)を題材とした問題や会話文を含む問題が出題されましたが、会話文は若干短めで、その点では解きやすくなっていたように思います。(年々削られている気がします...)
例年どおり、それぞれの大問の最初のほうでは得点しやすい設問もありつつも、ところどころで誘導が見えにくく、引っかかるポイントもありました。
講評まとめ・難易度は?
共通テスト2025の数学I・Aは、これまでの共通テストの数学I・Aと同様に、公式に当てはめておしまいではなく、知識を土台として思考力を問う傾向にありました。
リード文も短めで、うまく誘導に乗ることで計算を省ける問題なども用意されていたため、共通テストの経験を積んでいる人であれば十分高得点が望めるセットだと感じましたが、昨年に比べて、
・大問2で、[2] の三角比の問題が重ためであったこと
・大問3の図形の分野で、冒頭から空間図形が出題されたこと
・大問4の確率の分野では、問題の設定の把握や期待値の計算につまづいてしまうと、大問ごと失点してしまう可能性があったこと
といった変化があったことを踏まえると、昨年と比較した難易度としては昨年並み~やや難化と感じました。
また、新課程で登場したテーマが全て出題されていた点も特徴的でした。共通テスト形式での演習の重要性は高まっていると言えるでしょう。
数学II・B・C
講評
数学I・Aと同様に、こちらも全体の構成は文科省が公開している「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」のままでした。
問題形式としては昨年までの共通テストを踏襲し、日常の事象(水草の増え方など)や会話文の混じった問題も出題されたものの、数学1Aと同様、文章の量はそこまで多くなかったように感じました。
講評まとめ・難易度は?
共通テスト2025の数学II・B・Cは、これまでよりも大問の数は増えていますが、その分、1つ1つの大問の中身は典型的なものが多くなっており、昨年と比較して、
・大問3(昨年は大問2)の微積分が若干軽めであったこと
・大問4の数列が軽めになっていたこと(昨年は漸化式の考察が難しかったが、今年は計算がメインであった)
・大問5(昨年は大問3)の統計が、解きやすいテーマであったこと
を踏まえると、普段の演習量が点数に反映されるような取り組みやすいセットで、昨年と比較した難易度はやや易化だと思います。
とはいえ時間も厳しいことには変わりなく、常用対数表や正規分布表など、細かい表から値を正確に読み取らないといけなかったり、ベクトル分野では重たい計算が要求されたりと、引っかかるポイントも用意されていて、一筋縄ではいかない試験でした。
共通テスト数学の対策法
「共通テスト型の問題」と言われつつも、上で紹介してきた通り、表面的な設定や誘導を理解してしまえば、あとは普段の問題集などで出てくる問題に帰着するものが多いので、まずはしっかりと各単元のテーマを定着させることが最優先となります(共通テスト型の演習ばかりやっていても、なかなか点は上がらないでしょう)。
その土台があるうえで、共通テストの形式に慣れていく演習期間を十分にとることも必要となっています。共通テスト開始時に比べると、会話分や長いリード文は減ってきているとはいえ、「設定が言いたいことを正しく理解し、問題が指示している誘導に乗る」という思考の流れや、その誘導にうまく乗ることで計算を省略していく流れは、引き続き求められていますし、これらは共通テストに特有なものであるため、一定程度の慣れが必要です。
そのため、特に現役生については、各単元の定着をいかに早く終わらせ、共通テスト形式の演習の時間を確保するかが1つの重要なポイントとなります。新課程となり、出題範囲が増えてしまっている状況ですので、この重要性はますます高まっています。
また、共通テストが求める思考力を身に付けるには、「この問題はこの公式」というように、学校のテストを一夜漬けの暗記で乗り切るような学習ではなく、普段から、公式の証明や、「なぜこの問題はこの公式で解けるのか」「他に解き方は無いか」といったことを妥協せず考えていく学習を積み重ねることが重要で、そうするとスムーズに共通テストの誘導にも慣れていけます。
このような思考力は一朝一夕では身に付かず、地道にやっていくしかないのですが、共通テストは小手先のテクニックでは太刀打ちできない試験となっており、抜け道はありません。とはいえ、単なる暗記ではなく考える勉強をしていると、さまざまな発見があって、学ぶこと自体が面白くなってくるはずですので、そのような学びを目指すのが理想でしょう。
Dr.okkeのWebサイトでは、2025年度共通テスト「数学」の講評のほか、設問ごとの詳しい分析が掲載されている。