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どうなる?首都圏の私大入試…東洋大と千葉工大人気急伸の理由

 年内入試の増加や理系の女子枠急増、データサイエンス系学部・学科の相次ぐ開設など、2025年度の大学入試は変革期に突入する。アロー教育総合研究所が開催した「塾大連携セミナー『激変!首都圏入試 そのとき、塾・予備校はどう動く?』」では注目の2大学、東洋大学と千葉工業大学の魅力と入試のポイントについて語られた。

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左から、アロー教育総合研究所 田嶋裕氏、ルートマップマガジン 西田浩史氏、井上孟氏、教育ジャーナリスト・大学入試アナリストの石原賢一氏
  • 左から、アロー教育総合研究所 田嶋裕氏、ルートマップマガジン 西田浩史氏、井上孟氏、教育ジャーナリスト・大学入試アナリストの石原賢一氏
  • 東洋大学 入試部 部長 加藤建二氏
  • 千葉工業大学 入試広報部 部長 日下部聡氏
  • 左から、ルートマップマガジン 西田浩史氏と井上孟氏
  • 教育ジャーナリスト・大学入試アナリストの石原賢一氏

 年内入試の増加や理系の女子枠急増、データサイエンス系学部・学科の相次ぐ開設など、2025年度の大学入試は変革期に突入する。志望校選びの最終段階に差し掛かる秋、受験生はどのように動き、進学塾・予備校関係者は大学選びの変化をどのように見ているのだろうか。

 アロー教育総合研究所が2024年10月3日に塾関係者向けに東洋大学で開催した「塾大連携セミナー『激変!首都圏入試 そのとき、塾・予備校はどう動く?』」では、アロー教育総合研究所 所長の田嶋裕氏、塾向け業界紙「ルートマップマガジン」編集長 西田浩史氏と同社社長でデータサイエンティストの井上孟氏、教育ジャーナリスト・大学入試アナリストの石原賢一氏が登壇し、2024年度大学入試を振り返り、次代の大学入試についてトークセッションを行った。さらにセミナー後半では、東洋大学 入試部 部長 加藤建二氏と千葉工業大学 入試広報部 部長 日下部聡氏が登壇し、それぞれの大学の特徴と2025年度入試について語った。多くの塾関係者が集まり、注目の2大学の魅力と多様化する入試のポイントを確認する姿が見られた。

 今回のセミナーの会場となった東洋大学の2024年度入試における志願者数は全国4位。前年度と比べて志願者数がもっとも増加した大学だ。一方の千葉工業大学も、近畿大学についで全国で2位の受験者数を誇り、両大学ともに近年人気が急伸した。田嶋氏は、「首都圏の入試のみならず日本全体の入試に大きな影響を与える2つの大学」と評し、東洋大学と千葉工業大学の2大学に絞ったセミナーを開催した理由について語った。

 西田氏は「GMARCHや北関東の国公立大学に届きそうな学力があっても、年内に東洋に合格した場合、東洋に入学すると予想する塾関係者は6割以上います」と調査結果を紹介し、東洋大学と千葉工業大学の共通点として「人気がある」「勢いがある」「交通の便が良い」「国公立やGMARCHと併願しやすい」といった点をあげた。

左から、ルートマップマガジン 西田浩史氏と井上孟氏

 石原氏は「東洋大学は、保護者が知っている平成時代のイメージとは違い、うまく“キャラ変”してきました。以前は質実剛健というようなイメージでしたが、グローバル教育やスポーツなどで注目され、明るく元気なイメージが加わり、今ではそのイメージが定着しています。両大学とも新しい学部の設立も早く、フットワークの軽さを感じる大学。入試の種類が多数あり、受験者層の成績の幅も広く、受験生目線で受けやすい大学、先生方から勧めやすい点もポイント」と語った。

教育ジャーナリスト・大学入試アナリストの石原賢一氏

 千葉工業大学は、コロナ禍に共通テスト利用入試の受験料を免除したことで志願者数が急伸し、近畿大学についで全国2位となった。データサイエンス系の学部・学科が増加し、文理融合や理系学部への進路選びにも注目が集まるが、石原氏は「千葉工業大学のような、もともと理工系の大学は人気が堅調ですが、国の施策で過剰にデータサイエンス系の学部・学科が供給されている状態で、新しい理系の学部・学科の志願者数はそれほど伸びていません。ある意味ねらい目といえますが、偏差値55以下の大学の場合、新設してもなかなか生徒が集まらず厳しいのが現状」と語った。

 次に登壇した東洋大学 入試部 部長 加藤建二氏は、東洋大学の特徴と2025年度入試について説明した。東洋大学の2025年度の大きなトピックは、総合情報学部 総合情報学科に3つの専攻を設置すること、14学部すべての学びを柔軟に履修できるカリキュラムをスタートし“「総合知」教育”を始動すること。

東洋大学 入試部 部長 加藤建二氏

 総合型選抜・学校推薦型選抜の方針は「年内入試の学力(知識・技能)担保」とし、4つのポイントをあげた。

  1. 総合型選抜・学校推薦型選抜(専願)の募集人員を縮小(2025年度募集人員1,174名)

  2. 学校推薦型選抜(公募制)に併願可能な基礎学力テスト型を新規導入(2025年度募集人員578名)

  3. 英語等の資格取得者対象の総合型選抜・学校推薦型選抜を拡大

  4. 総合型選抜(公募制)の出願資格に「学習証明型」を導入

 一般入試は、「学力(知識・技能)重視の試験を継続・拡大」を方針とし、次の5つのポイントをあげた。

  1. 一般選抜はすべて3教科以上に

  2. 5科目型・4科目入試を拡大

  3. 英語重視型入試の拡大

  4. 文系学部で数学必須入試を拡大

  5. 多面的・総合的評価型入試の拡大

 加藤氏は、「年内入試で入学した学生の中には、もちろん優秀な学生もいますが、入学することがゴールになってしまっている学生も散見されます。年内入試でも学力試験を課す入試を増やしたり、一般入試では数学必須入試を拡大したり、学力の高い生徒を確保していきたいという考えです。また、一般入試では同一日程内併願の併願割引も行います。東洋大学の入試情報サイトで入試対策講座の日程や、過去問も公開していますので活用してほしいです」と語った。

 続いて登壇した千葉工業大学 入試広報部 部長 日下部聡氏は、「意外と知られていないのですが、工業大学としては歴史が古く、現存する私立の工業大学の中ではもっとも古い大学です。戦時中に設立された当時、日本の工業力が欧米諸国より低かったことから、半ば国策で創設されました。」と創立の背景を説明。ロボット工学や宇宙工学の分野に力を入れているほか、2023年7月には伊藤穣一氏(2011~2019年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長)を新学長に迎え、DX、ブロックチェーンやNFTといった最新のデジタル技術にも力を入れている。2024年4月に「情報変革科学部」「未来変革科学部」が誕生し、2025年4月より工学部に宇宙・半導体工学科(機械電子創成工学科から改組)が設立となる。日下部氏は「研究のため、論文のためではなく、まさに実践力として現場ですぐ活躍できる人材を育てたい。いち早く新しい分野に力を入れていくのが本学の特徴。日本は世界に負けない技術力をもっています。半導体分野で活躍する人材を輩出していきたい」と語った。

千葉工業大学 入試広報部 部長 日下部聡氏

 千葉工業大学の2025年度入試のおもなトピックは次の4つ。

  1. SB日程で大学入学共通テストの「情報」が利用可能

  2. サテライト試験会場に沖縄会場(那覇)が新設、全国19の試験会場

  3. 受験料負担軽減システム(学科間の併願試験料、複数学受験の加算額、共通テスト利用入学試験の受験料)

  4. 試験前日まで出願可能

 日下部氏は「受験生の利便性をあげたいという思いから学科間の併願試験料は無料、試験前日まで出願可能で、受験生ファーストの入試制度です。うまく学科併願を利用していただければと思います」と講演を締めくくった。


 少子化時代の大学の生き残り戦略が求められる中、東洋大学と千葉工業大学はじめ各大学は多種多様な入試形式を用意している。塾・予備校の指導者や保護者は、生徒ひとりひとりにあった大学選びのサポートにとどまらず、入試形式選びの情報収集とサポートも合格へのカギとなるのだろう。

《田口さとみ》

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