学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第186回のテーマは「学級崩壊して落ち着いて授業が受けられない」。
教員の欠員がカバーできない状況に
教員の欠員に関することがニュースになっています。教員採用試験の倍率低下なども関連しています。学校現場で本来必要な人数が確保できなくなると、さまざまな部分で不具合が生じ、学校教育活動の質の低下につながります。欠員1名であれば、小学校の場合、専科や少人数担当の方に学級担任になってもらうことで対応することが多いです。他にも教務主任や教頭・副校長が学級担任をするような状況も起こり得ます。
教員の欠員は「非正規の欠員」であることが多いです。法律により、学校には一定数の非正規の教員が必要な仕組みとなっています。これまではそういった仕組みが成り立っていました。この数年、そういった仕組みが成り立ちにくい状況となっています。教採の倍率が低くなるということは、不合格者の人数も少なくなります。これまでは不合格者が非正規の教員として働くことが多かったです。その仕組みがうまく回らないような状況となっています。
私の知り合いが管理職をしている学校では、欠員が3人だった時期があったそうです。さまざまな部分での余裕がなくなり、それがそれぞれの学級にも大きく影響を与えます。「学級崩壊をしている」「クラスが落ち着かないので何とかしてほしい」などの保護者からの訴えが学校に届くようになります。
学校は余裕がなくなっている
そういった状況においては「学校ができること」と「学校ができないこと」を分けて考えていく必要があると私は考えています。たとえば、正規教職員の給与を上げることなどについては学校長の裁量でできる部分ではありません。国会や地方議会において審議、決議が必要なものだからです。
ただし、学校(学校長)の裁量で決められる部分があることも事実です。新型コロナウイルスの流行において、日本中の学校が大きな影響を受けた中、学校長の判断により、一定レベルの学びの質を確保している学校がありました。そのように学校が現状を把握したうえで、今の学校で取り組むべき内容を改めて考えてみると良いのだと思います。慣習としてやっていることをやめていくということを考えていく必要もあるのでは思います。たとえば、教員の欠員が2人も3人もいる状況では、研究授業などをやめたら良いと思います。授業の質を上げるための研究授業はとても大事なことです。ただその学校が教員の欠員も多く、日々の学びの質、生活の質を保つことに精一杯の状況においては、良い授業以前に、日々にすべきことに取り組む時間を確保した方が良いのではないかということです。教員の欠員が複数おり、色々な部分で無理をしている状況において、さらに負荷のかかる研究授業をしていかなくても良いのではないかということです。
次の日の授業準備の時間を確保し、疲れている心や体をいたわる時間を作るために、少しでも早く退勤ができる状況を作る方が学校においては意味のあることだと私は考えます。学校では「子供のため」という言葉がよく使われます。研究授業をすることは、授業の質の向上につながり、子供のためになると考えられています。他にもたくさんの「子供のため」になることがあり、そういったことをしていくことで学校は余裕がなくなっています。私が考える「子供のため」になるもっとも重要なことは「教師が穏やかでいること・朗らかでいること」です。教師が精神的に余裕のある状況は子供への関わりに大きな影響を与えます。教師が穏やかに過ごし、そういった中で子供が伸びやかに育っていくような状況が増えていくことになればと思います。
本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。
質問をする