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【クレーム対応Q&A】罰で校庭を走らされる

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第101回のテーマは「罰として校庭を走らされる」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第101回のテーマは「罰として校庭を走らされる」。

体罰と懲戒の境界が曖昧

 学校で問題になることの1つに「教師の体罰」があります。ただ教師には法律で「懲戒」が認められています。「体罰」と「懲戒」の境界が曖昧な面もあり、トラブルが発生することがあります。

 最近でも、2022年9月に愛知県東海市の小学校でこういったことに関連するトラブルが発生しています。小学校の教頭が授業中に教室で落ち着きのない児童を廊下に連れ出す際、腕を強く引っ張り、廊下に放り投げたというものです。児童に怪我等はなかったのですが、市教委が体罰と認め、謝罪をしています。

 まず、懲戒や体罰に関する法律や文科省の通達等を確認します。法的には「学校教育法施行規則26条」で次のように定められています。

 「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。(学校教育法11条)校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当っては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。」

 また、懲戒や体罰に関して文部科学省は次のような通達(「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する参考事例」平成25年3月)を出しています。

体罰(通常、体罰と判断されると考えられる行為)

身体に対する侵害を内容とするもの
 「体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。」「帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛ばして転倒させる。」「授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。」「立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につかせる。」「生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩(たた)く。」「給食の時間、ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したが聞かなかったため、持っていたボールペンを投げつけ、生徒に当てる。」「部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該生徒の頬を殴打する。」

被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの
 「放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。」「別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない。」「宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。」

認められる懲戒(通常、懲戒権の範囲内と判断されると考えられる行為)(ただし肉体的苦痛を伴わないものに限る。)学校教育法施行規則に定める退学・停学・訓告以外で認められると考えられるもの
 「放課後等に教室に残留させる。」「授業中、教室内に起立させる。」「学習課題や清掃活動を課す。」「学校当番を多く割り当てる。」「立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる。」「練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させる。」

 上記のようなことを踏まえ、実際の学校現場での対応について考えます。はじめに例に出した愛知県の教頭の体罰の件は、程度の違いはあるかもしれないですが、日本中のどこの学校でも起こり得ることなのではないかと思われます。要因は1つでなく、いくつかのことが絡まっています。経験年数の少ない教員が増えたこと、発達障害を含め落ち着きの無い子供が一定数いること、余裕の無い人員(場合によってはマイナス)で学校運営をしていること等が関係しているでしょう。

今回の例は体罰にあたる?

 今回のタイトル「罰として校庭を走らされる」というものは文科省の事例には無いものです。その状況や走る量等にもよるのですが、体罰とされてしまう可能性のあることでしょう。体育の授業において、レクリエーションで負けたチーム(人)がプラスで少し走るということは常識範囲で行うことはあります。しかし、何かの罰のような形(試合に負けた、授業態度が悪い等)で校庭を30周走らせたり、1時間走らせたりというものは体罰に当たるでしょう。

 こういったテーマに関して教師は常に意識を高く持っている必要があります。研修を積むことも必要でしょう。また、教師自身の心身の状態を良いものとすることも大切でしょう。寝不足や体調不良だとつい厳しい言葉等も出てしまいがちです。教師の働き方を考えることも含め、良い職場環境を作っていくことも大事なことだと思われます。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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