学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第184回のテーマは「試練を課すような指導に違和感」。
教員が原因で不登校などの
トラブルにつながることも
文科省などが行なっている不登校に関する調査結果を見ると、子供が学校に行かれないようになった原因は、多くの場合、「無気力・不安」というものがトップとなっています。他の選択肢として「友達とのトラブル(いじめなど)」「勉強がわからない」などもあるのですが、「教師との関係がうまくいかない」というものが上位になることはあまりありません。
ただこの結果はある部分で正しく捉えているのですが、すべてを正確に捉えている訳ではないと私は考えています。こういった不登校に関する調査は、回答しているのが「学校(教員)」ということがほとんどです。教員は学校に来ていない子供に関する内容を正確に把握できないことも多いです。また、教員が回答しているので、自分にとって少し都合の悪い選択肢(先生が原因で学校に行きたくないなど)を選びにくい状況です。実際に、子供や親が回答している場合、違った結果になっていることが多いです。
不登校だけではなく、学校における子供のトラブルに関して、原因が教員にある場合も多いのではと私は思っています。「子供との関わり方」「指導方法」などに関してです。自分のやり方を変えることなく、ずっと同じやり方を通している教員もいます。それがすべての子供にとって、学びのあるもの、育ちにつながるものであれば良いのですが、そうでない場合もあります。また、教員は世間知らずだと言われることがあります。学校は一般社会から離れている面もあり、自分から積極的に関わろうとしていかなければ、社会の変化などから置いていかれてしまうこともあります。そういったことも含めて、教員は常に学ぶことが求められるのですが、学校の多忙化などもあり、自分自身の成長のためにエネルギーをかけられなくなっている教員がいるのも事実です。
今回のテーマである「試練を課すような指導に違和感がある」と親から伝えられるような状況はやり方として間違っているのでしょう。以前は、学校においても家庭においても、子供に試練を課すようなやり方もありました。たとえば、物語の「ライオンキング」では、親である王が自分の子供を崖から落とし、這い上がる中で子供は成長をしていきます。そこに学びが無いわけではありませんが、学校においてこういったやり方を多くの子供に求めるのは間違っているでしょう。強い圧力などを用いて学級を経営していく「パワハラ的学級経営」もある部分で似ているように思います。
個に応じた学びが求められる
現代の教育においては「個に応じた学び」が求められます。段差については、可能な限り小さな段差(スモールステップ)にし、成功体験をする中で、成長を促していくというやり方が望ましいでしょう。能力的に高い子供に関しては、状況を見ながら、段差を大きくして、その子供に合った学びとなるようにしていきます。失敗や苦労することから学ぶこともあります。ただ、学校において敢えてそういった体験をさせていく必要はないでしょう。
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