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【相談対応Q&A】子供が集団行動になじめない

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第157回のテーマは「教師に反抗して以来、冷たい態度をとられる」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第158回のテーマは「子供が集団行動になじめない」。

集団になじめない子供は一定数いる

 学校・学級という集団に「なじめない」と感じている子供は一定数います。「不登校」「登校しぶり」という形で外側の行動に表れているものはもちろん、外側には表れないまま内面でくすぶっている場合もあるでしょう。そういった子供に対して、学校(教師)はどのように関わっていったら良いのかということが今回のテーマです。

 私は「集団になじめない子供」がいても良いのではと思っています。一般的に教師は学校組織や学校での取組みに対して肯定的な考え方を持っています。教師になっている人は、自分が子供のころ、学校という組織の中で良い思いをしたことがある場合が多いです。私自身のことを振り返ってもやはりそういった面があります。もちろん、自分自身が大変な思い、辛い思いをしており、そういったものを増やさないようにという思いで教師になっている人もいます。ただ、そういったケースは少数でしょう。

 現在教師をしている人の多くは、子供時代に自分自身が集団の中でそれなりにうまくやっており、そういったことに肯定的な考えを持っています。「子供は集団の中で育っていく」「子供は友達との関わりの中で育っていく」などの考えです。自分自身が良好な人間関係を築き、そういった中で育っていったことをベースとした考え方です。それ自体は決して間違ったものではありません。これまで書いてきたように教師が学校組織や学校での取組みに肯定的な思いがあったとしても、それをすべての子供に当てはめようとするのはまた違うのではと私は思います。

昔ほど集団行動が重要ではなくなってきている

 日本の学校は昭和期の要素が色濃く残っています。部分的には明治期の仕組みがそのまま残っているようなものまであります。高度経済成長期においては、集団行動が重要視される面もありました。イメージとしては、工場での労働者を育成する感じです。流れてくる製品を与えられた時間に正確に仕上げ、次へと送ります。そういった場では「協調性」などが大切とされました。集団になじむことも大切なことでした。

 現在、昭和期に取り組まれていた仕事のいくつもが違うものに置き換わっています。高性能ロボットやAIの出現により、仕事の概念に大きな変化が生じています。現在ある仕事のうち、一定数が数十年後には存在しなくなるとも言われています。そういった社会においては「集団になじむ」ことだけでなく、他にも重視されるようなことがあるはずです。昨今のICTの技術の進歩は仕事のスタイルを大きく変えています。そういった状況においては、集団になじめなくとも、その人の力を発揮し、社会の中で役立つことができる仕事も以前より増えています。私自身の仕事を振り返ると、大学での講義は対面でやるものが多いのですが、それ以外の執筆などの仕事はそのほとんどがオンラインで仕事が完結しています。

 集団になじめない子供がいた時、教師はその子供に適切な場所を教えていくということも大切なことなのだと思います。自分が関わる子供が、自分の教えている学校(学級)以外の場所で学ぶ選択をすることは、教員として「敗北」ではありません。その子供に適切な場で学ぶことがその子供にとっては何よりなことです。現在はフリースクールや通信制学校などさまざまな選択肢があります。その子供の幸せは何なのかということを考えれば、自ずと答えは見えてくるのではと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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