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【クレーム対応Q&A】優秀な子供ばかり褒める

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第146回のテーマは「優秀な子供ばかり褒める」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第146回のテーマは「優秀な子供ばかり褒める」。

課題の多い子供の良い部分を
褒める

 教育では「叱る」ことよりも「褒める」ことをたくさん行ったほうが良いと多くの教育書などに書かれています。私の経験からもそれは正しいことだと思います。担任が叱ることの多いクラスは雰囲気が淀んだ感じになっていきます。

 基本的には褒めた方が良いのですが、注意する必要もあります。教師が褒める時は、当たり前ですが、子供に良い部分があるから褒めます。それなので、教師が何も考えずにただ褒めていると、ある一定の子供を何度も褒めることになります。褒める際は、良い行動をしている子供をモデルとして示すという意味合いもあります。そういった状況において、あまり褒められない子供が不満、不安を抱くことがあります。「あの子(たち)ばかり、褒められて、ずるい」という感情です。

 教師は意識して褒めにくい子供の良い部分を探し、褒めていくことが望ましいです。特に学級担任はそうすることが大事になります。これは意識しないとなかなかできないことです。課題の多い子供は、叱るような問題点(課題)を見つけることは簡単なのですが、褒める点となるとなかなか見つけられないです。そういった子供の良い点を見つけ、褒めることができるかということは、教師としての力量を試されているのかも知れません。

教師と子供との信頼関係の構築が重要

 私が小学校の教員をしていたころ、特に30歳代から40歳代のころは、課題の多い子供を担任することが多かったです。その際、意識をしていたことが、新しいクラスが始まったら、課題の多い子供と信頼関係を結ぶことです。課題が多いうえ、周りへの影響力のある子供と担任として適切に関わることが学級経営に大きな影響を与えます。新しいクラスがスタートしたら、全体を褒めることもしましたが、特にそれまで課題が多く叱られることが多かった子供を意識して褒めるようにしていました。

 学級担任とクラスの子供という関係でなければ、違う対応をする場合もあります。学校内で何らかの不適切な行動をしている自分のクラスではない子供を遭遇した時、注意することはあります。そういった際、教師と子供の間には信頼関係などはないことが多いです。単発の指導(叱る)であれば、関係性を意識せずとも大丈夫です。しかし、学級担任とクラスの子供の関係の場合、不適切な時に叱るということだけでなく、中長期的な関わりを意識した対応が必要となります。

 新しいクラスでは教師と子供の信頼関係はできていません。そういった状況で、改善のために指導(叱る)をしても、それがその子供のためであっても伝わらないことが多いです。子供への指導がきちんとできるのは信頼関係ができているという前提が必要になります。それなので、教師と子供との信頼関係の構築は重要になります。

 褒めることだけではないのですが、教師の行動は、意図的、計画的に行うことが大切です。褒める際も、偏りが出てしまう傾向があることを意識し、褒めるようにします。そういったバランス感覚が学級経営、子供との関わりをうまくいかせるポイントなのでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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