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卒業式「マスクなし」通知に賛否…現場から「混乱」の声【アンケート結果】

 リシードでは、読者の教員の皆様を対象に、各学校現場における卒業式や入学式の対応や、「マスクなし」を基本とする文科省からの通知への意見を問うアンケートを実施。この記事では、その結果と学校現場からの声を紹介する。

教育行政 文部科学省
卒業式「マスクなし」通知に賛否…現場から「混乱」の声【アンケート結果】
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 文部科学省は2023年2月10日、卒業式におけるマスクの取扱いに関する基本的な考え方について、各都道府県の教育委員会等に対して通知し、児童生徒と教職員は式典全体を通じてマスクなし、来賓や保護者等はマスク着用を基本として示した

 リシードでは、読者の教員の皆様を対象に、各学校現場における卒業式や入学式の対応や、「マスクなし」を基本とする文科省からの通知への意見を問うアンケートを実施。57の有効回答を得た。回答者の勤務する校種の割合は次のグラフのとおり。

卒業式では半数以上が「児童生徒や家庭の判断に委ねる」

 アンケートではまず、勤務する学校において、卒業式の児童生徒および教職員のマスク着用についてどのような対応を行ったかを尋ねた。

 もっとも多かった回答は「国歌・校歌斉唱・『呼びかけ』等のみ全員マスクを着用し、その他は児童生徒自身、および各家庭の判断に委ねる」で31.6%。「卒業式全体を通して、マスクの着用は児童生徒自身、および各家庭の判断に委ねる」も19.3%で、多くの学校が児童生徒や各家庭の判断を重視する対応を行ったことがわかった。

 2番目に多かったのが「卒業式全体を通して、全員マスクを着用する」で21.1%だった。「卒業証書授与等のみ全員マスクを外し、その他は着用する 」(5.3%)とした学校もあり、「マスクなしを基本とする」という通知が出ているものの、感染リスクを考慮した対応をとったことがわかる。

 その一方、「国歌・校歌斉唱・『呼びかけ』等のみ全員マスクを着用し、その他は着用しない」(17.5%)、「卒業式全体を通して、全員マスクを着用しない 」(3.5%)とした学校も一定数あった。

 また、卒業式における来賓・保護者のマスク着用については、下記のグラフのとおり。マスクの着用を基本とする対応を行った学校が8割近くを占め、マスクを着用しないとした学校は無かった。

入学式の対応は「未定」の学校が多い

 アンケートでは次に、新年度の入学式での対応予定について聞いた。卒業式同様、「児童生徒自身や各家庭の判断に委ねる」との回答が半数近くを占めた。

 また、「その他」(17.5%)のほとんどは、アンケート実施時点で対応を未定としているもので、文科省や教育委員会からの通知を受け判断するという回答もあった。なお、文科省は「感染リスクの高いシーンを除き、2023年4月1日以降は、学校教育の現場でマスクの着用を求めないことを基本とする」という旨の通知を出している。

「マスクなし」の通知に賛成?反対?

 最後に、「卒業式では児童生徒と教職員は式典全体を通じてマスクなし、来賓や保護者等はマスク着用を基本とする」という文科省からの通知について、賛成するかを聞いた。

賛成

 「賛成」(33.3%)、「どちらかといえば賛成」(26.3%)との回答が合わせて過半数を超え、学校としての対応では「マスクを着用する」としたものの、マスクなしの方針に賛成する声が多かった。

 これらの回答の理由としては、「もうコロナのリスクもだいぶ落ち着き、強制するまでの制限はいらないと思うから」「厳粛な式典であり、体調不良者のみマスクを着用していれば問題ない」等、マスク着用の必要が無いと考える声のほか、「ずっとマスクの生活だったので、最後の晴れ舞台はいい顔を見せてあげたい」との声もあがった。

 また、「各自の判断が基本だが、その『各自の判断』が出来ない人が教師・生徒児童・保護者に大勢いる。とにかく社会生活を営む上で、マスクなしが自然であることをしっかり伝えることが大事」「現場の判断に委ねるのではなく、はっきりしてくれるとやりやすい」等、はっきりとした方針を示すことを求める意見もあった。

反対

 一方、「反対」(14.0%)、「どちらかといえば反対」(19.3%)との回答も合わせて全体の3分の1ほどを占めた。「感染が拡大するおそれがあるから」「卒業式の時は特に密になりやすいので保護者も生徒もマスクした方がいい」「校内では、陽性者やインフルエンザが出ているというのにマスクなしを半強制的に呼びかけるのは疑問」等、依然として感染拡大を懸念する理由が多かった。

 また、「今年度の卒業生は休校から始まりずっとマスクを着用していて今更取りたいと思う生徒は限りなく少ない」という声もあった。マスクを着用することが当たり前の生活を過ごしてきたため、たとえ感染のリスクが低いと考えていても、マスクを外すことに心理的なハードルがある児童生徒も多いだろう。

その他の意見

 賛成、反対に関わらず多く見られた意見が「個人の判断に委ねてほしい」というものだ。学校以外の場では、2023年3月13日以降「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」となっている。卒業式について、文科省から改めて通知が発されたことにより「コロナ前へと戻していく上でノーマスクは大切なことであるが、個人の判断に委ねたい」「今までも基本的には本人の判断にゆだねていて今更なぜ?」「日常生活との乖離が目立ち、混乱の一因となっている」等、学校現場での混乱を指摘する声もあった。

4月以降は学校でもマスク着用を求めない

 文部科学省は前述のとおり、2023年4月以降はマスクの着用を求めず、入学式や運動会等の行事においても、保護者の入場制限等の規模縮小の必要はない、との方針を示している。ただし、登下校時に混雑した電車やバスを利用する場合には着用を推奨する、話し合い活動においては大声での会話は控える等、感染対策の緩和は一歩ずつ進められている。

 アンケートでの回答にも見られたように、今やマスクを着用するかどうかは個人の裁量によるところが大きい。学校現場においては、マスク着用の有無によって子供同士の差別・偏見等のトラブルが起きないよう、注意深く見守ることが求められている。

《編集部》

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