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【相談対応Q&A】教員を評価する機会がほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第124回のテーマは「児童生徒・保護者が教員を評価する機会がほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第124回のテーマは「児童生徒・保護者が教員を評価する機会がほしい」。

至らなかった点を把握することは大事

 「評価」という言葉が学校でも一般的になってきています。新年度の学校教育活動を計画していくにあたって、子供、保護者、教職員、地域の人たちからの「評価(振り返り)」は大事です。良かった点、至らなかった点を整理し、次の機会で良いものとしていくことにつながります

 うまくいかなかった点を把握することはとても大事だと私は考えています。私が小学校の担任をしていたころ、可能な限り多くの場面で、保護者がコメントを記すことができるような仕組みを作るようにしていました。授業参観の際、配った資料の下部に切り取ってコメントを記すことができる用紙を付けていました。今ならで、スマホなどを用いて、オンラインでアクセスできるやり方が良いでしょう。そうやってできる限り情報(特にネガティブな)を集めることは、改善につながっていきます。

 学校における評価の具体的なものとしては、行事の終わりに保護者などにアンケートを取るものやその1年間の学校教育活動を振り返って評価してもらう「まとめの評価」などがあります。大学の授業では、授業毎に授業評価アンケートというものが実施されることが一般的です。すべての授業で、いくつかの項目に関して、学生が匿名で評価をします。自由記述欄もあり、もっともだと感じる意見を書いてくれることが多く、とても参考になります。

事前に「評価の基準」が示されている必要がある

 小中高などにおいてもクラスや担任、授業担当者についてアンケートをしている学校があります。基本的には良いことなのですが、いくつかの点で難しさもあります。中高の場合、授業担当者の数が多くなります。そういったものへの評価は手続きが煩雑になりがちです。また、保護者がそれぞれの教科の担当を評価するということは少し関係に距離があることもあり難しい面もあります。

 もう1つ考える必要があることが、「評価」をするには、事前にきちんとした「評価の基準」などが示されている必要があるということです。「目標」と言い換えても良いかもしれません。大学の場合、それぞれの授業でシラバスというものを示し、その中で、達成目標、取り組みの手順、評価のあり方などが書かれています。学生はそういったものをもとに最後に評価をします。

 小学校のクラスをイメージした場合、クラスのこと(担任のこと)を評価する際、きちんとした評価の基準がなく、なんとなくの人気アンケートのような感じになってしまう可能性があります。評価のアンケートをすることは良いことなので、子供や保護者にとってもわかりやすい評価の基準を事前に示しておくことが必要となります。たとえば、学習に関しては、「学習事項の理解ができている」、生活に関しては「子供が楽しく学校へ通っている」「学校は安全な環境である」などです。

 選挙におけるマニフェストのようなものです。学校全体として、学級(担任)として、そういったものを年度はじめに示すことが必要なのでしょう。私の知る範囲では、学校内では「学級経営案」などの形で、そういったものをまとめています。ただ、それらは子供や保護者に向けてのものではありません。子供や保護者に対してそういったものを示すことはしていないことが多いと思います。そういったこともあり、何となくの人気投票のような感じの評価となってしまうのだと思います。そういった点を意識して、年度のはじめ、および年度の終わりを過ごすことができれば、学校教育活動の質を一段レベルアップができるのではと思います。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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