学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第105回のテーマは「子供を叱るのではなく、ダメな理由を説明してほしい」。
「優しさ」と「厳しさ」の
バランスが大切
子供と教師の関係はとても複雑なものです。「優しさ」だけではダメですし、逆に「厳しさ」だけでもダメです。「優しさ」と「厳しさ」のバランスが大切になるのだと思います。どちらかに極端に振れてしまうと、結果として子供の健やかな育ちにはつながらなくなってしまうのだと思います。
「叱る」の意味を辞書で調べると「目下の者の言動のよくない点等を指摘して、強くとがめる。(小学館 デジタル大辞泉)」と書かれています。「上から下へ」というニュアンスがあります。また、「とがめる」とは「過ちや罪・欠点等を取り上げて責める。非難する。(小学館 デジタル大辞泉)」ことです。まとめると「叱る」とは「教師が児童・生徒に対し、言動のよくない点等を指摘して、強く過ちや罪・欠点等を取り上げて責め、非難する。」となります。
そういったことが必要な場合もあるのですが、あまり健やかな育ちにはつながらないことが多い印象です。私は「叱る」という行為はヒステリックなイメージと重なります。教師が興奮しながら、大声や甲高い声で子供を捲し立てるような感じです。
そういった状況では、教師は自分の思っていることをどんどん伝えていくのですが、それは一方的であることが多いです。教師の思いを伝えていくことのみになってしまいがちです。「子供がより良くなってほしい」という思いを伝えている場合がほとんどなのですが、一方的に伝えるだけでは育ちにつながらないことが多くなります。教師が自分の思いだけで空回りしているような印象です。
また、教師が感情的に叱るような状況では、教師側にも原因となるものがある場合もあります。たとえば、体調が悪い場合です。私は仕事等が立て込み、寝不足の時はつい感情的になりやすかったです。「大丈夫」「叱る」の境界線が正常の時よりも下がっている感じです。それがわかっていたので、寝不足の時等は「寝不足だから、ちょっとしたことで感情的になるな」と心の中で何度も唱えていました。
その他にも、教師の準備不足が原因でうまくいかない場合も同様です。十分な準備ができていれば、さまざまな活動はスムーズにいくことが多いです。逆に十分に準備ができていないとうまくいかないことが増えます。そういった時、自分の準備不足をごまかすような感じで感情的に子供に接してしまうこともあります。
子供の考えも聞く
子供の育ちにためには、教師は感情的にならない方が良いと私は思っています。子供に何らかの問題があった際は、感情的になることなく、冷静に「何が問題だったのか」「今後どうしていくべきだったのか」等を伝えるべきでしょう。そのうえで、子供の考え等も聞きながら自分の考えを伝えていくことが必要でしょう。
そういった際に有効な言葉が「あなたはどう思う?」です。「何らかの問題が発生したこと」について、「今後の自分の行動」について等、子供に聞いてみるのです。教師が自分の思いを一方的に伝えている時、子供はあまり深くは考えていないことが多いです。子供は「うるさいなあ、早く終わらないかなあ」等と考えながらも一応黙って聞いています。あまり学びや育ちは無い状態です。そうではなく、子供に話す機会、考える機会を与えていくことで、育ち、学びの機会としていくことを目指そうというやり方です。「叱る」場面だけでなく、さまざまな場面で「あなたはどう思う?」という投げ掛けは子供が考える機会を作ります。そういったことの積み重ねが子供のより良い学び、育ちに繋がっていくのだと思います。
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