コナミデジタルエンタテインメントは2022年9月15日、コンピュータエンタテインメント協会(CESA)が主催するゲームの総合展示会「東京ゲームショウ2022」で「桃太郎電鉄」特別ステージを開催。人気テレビゲームシリーズ「桃太郎電鉄」を教育向けにアレンジした「桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~(以下、桃太郎電鉄 教育版)」を制作していることを発表した。この記事では、特別ステージのようすを紹介する。
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「桃太郎電鉄」特別ステージには、「桃太郎電鉄 教育版」のアドバイザーを務める立命館小学校教諭・正頭英和先生、エッセイストの犬山紙子氏、シニアプロデューサーの岡村憲明氏、MCとしてお笑いコンビのパックンマックンが登壇した。
「桃太郎電鉄」といえば、プレーヤーが鉄道会社の社長となり日本全国を巡って物件を買い集め、資産額日本一を目指すボードゲーム形式の人気テレビゲームシリーズで、「桃鉄」の愛称で親しまれている。そのゲーム性から、「日本の地理、各地の名産品を『桃鉄』で覚えた」という人も多いだろう。「桃太郎電鉄 教育版」は、Nintendo Switch用のシリーズ最新作「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」に学習機能を追加し、教育の現場での活用を想定したものだ。2023年配信開始予定で、多くの教育機関が導入できるよう、無償で提供される。おもな特徴はこちらの速報記事を参照してほしい。
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「教育×ゲーム」の可能性に期待
ステージではまず、教育とゲームの関係について意見が交わされた。犬山氏は、自身が子供のころには親に隠れて「桃太郎電鉄」を遊んでいたことを回想しつつ、「学生時代に詰め込むように暗記したことより、『桃鉄』で楽しみながら覚えたことのほうが、今でも記憶に残っている。ゲームを活用した教育は身になると思う」と、ゲームと教育の親和性に期待を寄せた。
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正頭先生は、「学校においては、じゃんけんや運動会もひとつのゲームだが、デジタルのゲームとなると壁がある。今の子供たちは生まれたときからスマホがある世代で、コンピュータゲームとリアルのゲームの境界線があいまいなので、自然に(教育現場での活用にも)入っていけるはず。それができないのは、大人のマインドの問題なのではないかと思う」と述べた。
また正頭先生は、「GIGAスクール構想によって、全国の学校では1人1台端末が整備されつつあり、日本の教育が変わっていく転換期を迎えていることは間違いない。『桃太郎電鉄 教育版』はその変化をブーストしてくれるのではないか」と期待を寄せた。
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試験導入校の反応に好感触
次に、「桃太郎電鉄 教育版」を授業で試験導入した小学校のようすがVTRで紹介された。
授業を受けた児童からは、「プレーしているときは楽しかったし、その県の特産品等を覚えることができた」「ゲームを通じて知らない駅を知ることができた」という声があがり、「楽しみながら学ぶ」という本作の最大の利点を感じているようだった。また指導した先生も、「校外学習に行ったり人と接したりする機会が少なくなっている中、ゲームを使うことで子供たちの興味・関心が出てきた」と好意的な感想をもったようだ。岡村氏によれば、不登校だった児童がこの授業には出席した、という事例があったという。ゲームならではの魅力が発揮されたといえる。
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本作品のエデュテイメント(※)プロデューサーを務める正頭先生は、授業を受けた児童から「いつの間にか学んでいた」という声があがったことを紹介。「狙いどおり」と手ごたえを感じているようだった。
※「エデュケーション」と「エンターテインメント」を組み合わせた造語。娯楽でありながら教育に役立つ、「楽しみながら学ぶ」ことができるコンテンツのこと。
周辺製品も展開予定
ステージでは、ショウワノートに制作を依頼したというノート「桃鉄の白地図」が紹介された。一般販売や配布等の展開は現在未定とのことだが、「桃太郎電鉄 教育版」で学んだことを反映できるノートとして、学びに活用できるものになるだろう。
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さらに正頭先生は、紙で遊べる「桃太郎電鉄 教育版」を制作中であることを発表。ブラウザ版で遊ぶ前にまずは紙版で遊んでもらうことを想定しているという。
「マインクラフト」やeスポーツをはじめ、かつては教育と相反する存在だったデジタルゲームを教育に活用しようという動きが活発になっている。教育機関へ無償提供される「桃太郎電鉄 教育版」が、教育の新たな時代を切り拓いていくことに期待したい。