教育業界ニュース

薬学部教育、入学定員の抑制方針を提言…文科省

 文部科学省は2022年8月23日、薬学系人材養成の在り方に関する検討会による「6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ」を公表した。薬学部における質の確保に向け、入学定員について抑制方針をとり、速やかに制度化を進める必要があると提言している。

教育行政 文部科学省
薬学系人材養成の在り方に関する検討会 とりまとめ
  • 薬学系人材養成の在り方に関する検討会 とりまとめ

 文部科学省は2022年8月23日、薬学系人材養成の在り方に関する検討会による「6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ」を公表した。6年制課程の薬学部における質の確保に向け、入学定員について抑制方針をとり、速やかに制度化を進める必要があると提言している。

 2021年6月に厚生労働省の「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」において、将来的な薬剤師の供給過剰等が懸念される中、適正な定員規模を含む薬学部での教育の質の確保について懸念が示された現状を踏まえ、改革の進捗状況を分析し、今後の薬学部教育の改善・充実に向けた方策について検討。「薬学部教育の質の保証専門小委員会」でヒアリングを含む審議を重ね、現状と課題を整理し、今後の改善・充実方策について提言した。

 とりまとめによると、2006年度に制度化された6年制の薬学教育課程は、制度化の前後である2003年度から2008年度にかけて28学部が増加し、近年も2018年度に1学部(公立)、2020年度に2学部(私立)、2021年度に2学部(公立1、私立1)が新設。薬学教育課程の入学定員は、2008年度に最大の1万2,170人となり、その後、若干減少している。

 2021年度の入学定員は1万1,797人。内訳は、国立606人(5.1%)、公立485人(4.1%)、私立1万706人(90.8%)。私立大学の入学者確保は依然として厳しい状況にあり、入学定員充足率、志願倍率、入学志願者数は減少傾向が続き、入学定員充足率が80%以下となる私立大学は約3割に達している。

 薬学部入学定員のあり方については「従来の考え方を見直す必要がある」と指摘。6年制課程の薬学にかかる学部・学科の新設および収容定員増はこれまで、大学の判断で自由に申請が可能とされ、学校教育法および大学設置基準等の法令に適合していれば原則として認可されてきたが、「その原則をあらため、抑制方針をとることとし、速やかに制度化を進める必要がある」と明言している。

 入学定員充足率が低いことに加えて、標準修業年限内の卒業率・国家試験合格率が全国平均を大幅に下回る大学も存在しており、教育の質の維持・確保に課題があるとも説明。「国は、実質競争倍率や入学定員充足率、標準修業年限内の卒業率・国家試験合格率、退学等の割合が一定水準を下回り、教育の質に課題があると考えられる大学に対して、カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容等を踏まえたアドミッション・ポリシーの見直しとそれに基づく適切な入学者選抜の実施および入学定員の適正化を強く要請すべきである」としている。

 また、私学助成について、定員未充足の大学に対する減額率の引き上げや不交付の厳格化等のメリハリある財政支援等により、より一層の入学定員の適正化を求めていく必要性も指摘している。

 今後の薬学部教育の改善・充実の方向性についてはその他、教職員の能力向上のため、大学が目指す教育を提供するために望ましい教員像を定義し、対象者の役職に応じた適切かつ最適なファカルティ・ディベロップメント(FD)およびスタッフ・ディベロップメント(SD)を組織的かつ体系的に実施。学修者本位の教育の視点から、学修成果・教育成果を適切に把握・可視化する必要性等も提言している。


医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物
¥1,320
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《奥山直美》

この記事はいかがでしたか?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top