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【EDIX2022】GIGAスクール構想は始まったばかり、関係者全員の協力と理解が不可欠…文科省 水間玲氏

 「EDIX(エディックス)東京」会期2日目となる5月12日、文部科学省 初等中等教育局就学支援・教材課 GIGAスクール推進チームリーダー(情報教育振興室長)の水間玲氏登壇のセミナー「GIGAスクール構想による教育の質の向上」が実施された。

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【EDIX2022】GIGAスクール構想は始まったばかり、関係者全員の協力と理解が不可欠…文科省 水間玲氏
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  • 文部科学省 初等中等教育局就学支援・教材課 GIGAスクール推進チームリーダー(情報教育振興室長)の水間玲氏
 教育分野としては日本最大の展示会「EDIX(エディックス)東京」が2022年5月11日、東京ビッグサイト 西展示棟で開幕した。

 会期2日目となる5月12日、文部科学省 初等中等教育局就学支援・教材課 GIGAスクール推進チームリーダー(情報教育振興室長)の水間玲氏登壇のセミナー「GIGAスクール構想による教育の質の向上」が実施され、現段階で見えてきた課題と今後の文科省としての方針が語られた。

端末と学校のネットワーク整備状況は…



 冒頭、水間氏より、2018年のPISAの学習調達度調査結果を引き合いに、直近の日本の小・中学生のICT利活用の状況についての話があった。調査時点では学校や家庭での学習へのICT機器の利用状況が低い反面、娯楽での使用率が高かったことに触れ、GIGAスクール構想がなぜ必要なのかについて言及。GIGAスクール構想の進捗について語られた。

 端末については、2018年からの5か年計画によりGIGAスクール構想の大きな柱といえる1人1台の端末整備が進められている。当初、整備状況の地域差が顕著であったものの、「児童・生徒たちの状況は変わりつつある。内閣府の昨年度の調査によると、学校での学習への活用も6割。着実に前進していることがわかった」(水間氏)。

 その他の利活用実態についても、「臨時休業などの利活用」として、2021年9月段階で全小中学校の95.2%が持ち帰り準備が済んだという。同年7月時点の調査結果では65%程度だったので、夏季休業期間を挟み急速に普及が進んだといえるだろう。

 なお、ICT端末を持ち帰り児童・生徒が自宅で使用するにあたっては自宅の通信環境が整っている必要があるが、2021年9月段階で通信環境の整っていなかった家庭に対し、7割は学校からのルーター貸し出しで対処済みであるという。現状、低所得世帯の家庭学習を支えるための通信費の支援については、既存の補助制度を活用して進めており、今後は補助金額も上乗せする予定だという。

 GIGAスクール構想推進にあたり、学校のネットワーク環境整備も重要なポイントだ。1年前の状況としては98%が通信環境整備は済んでおり、残された2%の多くも昨年度内に整えたと想定。しかしながらネットワークの質については課題が残る状況のようだ。実測値1人当たり2Mbpsという通信速度を目安に置いているが、生徒・児童が同時接続をした際にその速度確保が困難になるケースが多く、文科省でも引き続き改善促進の必要性があると認識しているという。

 なお、接続スピードが遅くなる原因は学校や自治体の環境によってもさまざまである。水間氏は「改善するためには学校や自治体の関係者のみで解決するのではなく、専門家とともに事前調査(アセスメント)をする必要性がある」と指摘。専門家のもとで原因を的確に特定するべきとした。

文部科学省 初等中等教育局就学支援・教材課 GIGAスクール推進チームリーダー(情報教育振興室長) 水間玲氏

GIGAスクール構想のさらなる推進のために



 各自治体が環境整備を推進するためには、資金面の補助が不可欠である。そこで文部科学省としても「今後は学校でのICT運用を組織的に補助する必要性がある。それに加え、今後は複数の自治体が共有・運用する必要性もあると考えている。事業の肝は、自治体同士で広く連携しながら自治体力同士の対応の差を埋める、広域連携の仕組み。そのため広域的な運用支援を検討していく」と水間氏は述べた。

 端末の持ち帰りが進むと、ソフト面としてはデジタル教科書の普及促進も必要となってくる。そこで文部科学省は現在、実証事業を実施中で、紙とデジタルの役割分担についても検証しているという。また、コンテンツそのもののみならず、アカウントやセキュリティなどの環境整備の必要性もあると指摘。児童・生徒が同時接続した際に負荷がかかることで使用がうまくできるかどうかなどの、学校の通信環境と同様の課題があるといい、「そのためのネットワーク関係の整備と同時に、学習者側から見た環境向上を目指す」とした。

 なお、デジタル教科書については中央審議会に「デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ」を設置済み。会議のもようはオンラインでも視聴可能だという。

 また水間氏は、新学習指導要領とGIGAスクール構想の関係性について、「新学習指導要領では受け身の対応ではなく、変化を前向きに受け止め、豊かなものにしていく必要性を説いている。これのベースとしてICTが重要な働きをする」と述べ、そのための支援として、文部科学省もさまざまな施策を打っているとした。

 たとえば、GIGA StuDX推進チームの設置。2020年(令和2年)12月より同チームを文部科学省内に設け、文科省全国の教育委員会と共同しながら活動中だという。活動例の1つとして文科省のWebサイト内に「StuDX Style」というページを設置。ICTの活用事例をはじめとしたさまざまな事例を集めている。また、GIGAスクール構想推進に係る情報や、活用事例、対応事例等について、情報を求めるすべての学校設置者や学校はもとより、教師ひとりひとり、保護者や地域の人々など、広くタイムリーに情報提供を図るためメールマガジンも定期的に配信しているという。

 教務におけるICTの利活用が着々と進む一方で、今後は校務のDX化も推進する必要性があると水間氏。「今後段階的に進むことが考えられるが、これからの校務の在り方の方向性を示すため、専門会議を設置し、今年度の取りまとめを目指している」と述べた。

 最後に水間氏は、令和の日本型学校教育の構築を目指して、個別最適な学び、協働的な学び、校務効率化、教育データの利活用による効果的な学びの支援がこのGIGAスクール構想の目指すところであるとしたうえで、「(GIGAスクール構想は)まだ始まったばかり。壮大なプロジェクトの推進には、関係者全員の協力と理解が不可欠。皆様とともに引き続き努力していきたい」とし、締めくくった。
《鶴田雅美》

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