厚生労働省は2021年6月16日、「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」をオンラインで開催し、将来的に薬剤師が過剰になることが予想されるとして、薬学部・薬科大学の適正な定員規模のあり方や仕組み等を早急に検討すべきとする提言案を公表した。 「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」は、2006年に薬学教育6年制課程が開始されて以降、薬剤師に求められる役割が変化していることを踏まえ、薬剤師の需給や資質向上、今後のあり方について検討するため、2020年7月より開催。第10回となる6月16日の検討会において、提言案を取りまとめた。 提言案によると、薬学部・薬科大学は6年制が始まる前後に新設が相次ぎ、入学定員数は4年制当時の2002年8,200人から、2020年は1万1,602人と約1.4倍に増加。現在も大学が新設されている状況にある。一方、毎年入学定員を充足していない大学、入試の実質競争倍率が1.0~1.1倍程度と低い大学が存在し、入学後の進級率・卒業留年率も大学によって大きな差があること等から、学生の質の低下が指摘されている。 入学定員については、人口減少により大学進学者数の減少が予測される中、現状の入学定員を維持した場合には「入学定員を充足していない大学や入試の実質競争倍率が相当低い大学がさらに増加する可能性がある」「入学者の学力のさらなる低下により、卒業・国家試験合格が困難な学生がさらに増える可能性がある」等の課題があるとした。 「(薬剤師の)需給推計の精査を引き続き行うことが必要」としたうえで、「入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模のあり方や仕組み等を早急に検討すべき」と提言。検討にあたっては、薬剤師の偏在を解消するための方策をあわせて検討することが重要とし、個々の大学だけで検討することは困難であるため、薬剤師会や病院薬剤師会、国公私立大学、国・自治体等の関係者間でも検討すべきとしている。 薬剤師国家試験の合格者数抑制による対応については、「国家試験に合格できない学生をさらに増やすことになり、薬剤師を養成する教育機関としての役割を考えると、国家試験合格者数の抑制のみでの対応は望ましい方向とは言えない」として、慎重に考える必要があるとの見解を示している。