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日本学術会議が提言…入試英語の「書く」「話す」は各大学で課す

 日本学術会議言語・文学委員会文化の邂逅と言語分科会は2020年8月18日、「大学入試における英語試験のあり方についての提言」を公表した。「書く」「話す」能力の計測は共通テストの枠組みでは行うべきではないとし、各大学の2次試験で実施することを提案した。

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 日本学術会議言語・文学委員会文化の邂逅と言語分科会は2020年8月18日、「大学入試における英語試験のあり方についての提言」を公表した。「書く」「話す」能力の計測は共通テストの枠組みでは行うべきではないとし、各大学の2次試験で実施することを提案した。

 2021年度からの大学入学共通テストにおいて、英語の4技能(読む、書く、聞く、話す)を測る民間試験を活用する方針が、2019年11月1日に見送ることが公表された。これを受けて、新たに設置された「大学入試のあり方に関する検討会議」おいて検討が進められている。同分科会は、言語教育・外国語教育の問題を扱ってきたとして検討に資するため、これまで重ねてきた議論をまとめ、提言として公表した。同分科会の委員長は伊藤たかね東京大学大学院総合文化研究科教授。

 問題点として、大学入試という極めて高い公平性が求められる試験において、記述式や面接など、採点者の主観が入りやすい試験を大規模に行うことは不可能である。民間試験という形で「一斉」ではなく分散させたとしても、異なる試験・異なる回の間の公平性が保証されないことが大きな問題になる。つまり、「書く」「話す」能力の計測は共通テストの枠組みでは行うべきではないとしている。

 各大学が2次試験などと組み合わせて合否判定する材料を提示するものであることを考えれば、「書く」「話す」力を問う問題は、各大学の判断で必要に応じて2次試験で課す形にすることが望ましい。小規模であれば、採点者が顔を合わせて協議する形での公平な採点が可能になる。また各大学が、それぞれのアドミッション・ポリシーや教育理念に基づき、それぞれの大学において展開される英語教育・外国語教育のカリキュラムとの接続を考慮して、入学者が入学時までに持っているべきだと考える英語力を計測することができる。

 民間試験の導入は、高校・大学の教育現場の声が反映されていなかったことが大きな問題だったとし、当事者の意見を適切に反映する検討態勢を構築する必要がある。「大学入試のあり方に関する検討会議」には、国公私立の高校・大学を代表する諸団体から構成員が選出されているが、それら団体の代表が、各高校・大学で実際に教えている現場の意見を十分に聴取し、会議での議論に反映させたうえで検討を行う必要がある。また、英語教育の専門家のヒアリングを行い、さらに広く英語教育に携わる教員や受験生の意見を聴取する機会(パブリックコメントなど)を設ける必要もある。

 全国高等学校長協会の意見に代表するように、共通テスト英語試験の継続に対して強い要望があることに真摯に対応すべきである。現在予定されている「2技能」の形を継続するのが妥当であるのか、センター試験のような総合的試験とするのが妥当なのか、再検討が必要。バランスの良い英語力の育成の成果を測るために、4技能を別々に切り分けて計測する必要はないという点を踏まえた検討も必要だとまとめている。
《田中志実》

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